王様と私 1


ある日曜日、サクラは朝から壺磨きに精を出し、サスケは『週刊忍術』という雑誌を読んでいた。
サクラは毎日毎日欠かさず壺を磨いている。
サクラが中に入っていたその壺は薄茶色の焼き物で、見るからに安価なものだ。
サスケも古道具屋の店主に二束三文で押しつけられなければ、絶対に手に取らなかったことだろう。

 

「それ、割れたらお前はどうなるんだ」
雑誌から目を離したサスケは、自分に背を向けるサクラに向かって何気なく訊ねた。
振り向いたサクラは、サスケににっこりと笑いかける。

「消えちゃうのよ。綺麗さっぱり、跡形もなく」
何でもないことのように言うと、サクラは再び壺を磨き始める。
「だから、落とさないように注意してね」

数分後、ようやく壺を所定の場所に戻したサクラは満足そうに頷く。
「さて。次はお風呂ね」

 

 

「おかしいなぁ・・・・」

カカシはサスケの家のチャイムを何度も鳴らす。
だが、中の人間は一向に姿を見せなかった。
家にいることは先ほど電話して確認済みだ。

辛抱強く扉の前に立つカカシがようやく住人の顔を見れたのは、5分後のことだった。

「ごめんなさいー」
サクラは一生懸命に謝りながらスリッパを用意する。
よく見ると髪は濡れ、服も裾部分が湿っていた。
「何やってたの」
「サスケくんと一緒にお風呂入ってたの」
「・・・・・」
天真爛漫な笑みを返され、カカシは思わず無言になる。

「お前――!!誤解を招く言い方はやめろ!!!」
どたどたと足を踏みならして廊下を歩いてきたサスケは、同じように水に濡れていた。
その腕には、妙に小綺麗になった飼い犬を抱えている。
「この馬鹿犬が風呂を嫌がって暴れるから、いつも二人がかりで洗ってるんだ!」

風呂場で犬と格闘していたために、カカシが鳴らしたチャイム音に気付けなかった二人だった。

 

 

 

「前の持ち主が壺を捜してる?」
「みたい」
部屋の隅までサスケを引きずってくると、カカシはようやく本題に入る。

「お前の買ったあの壺、盗難届が出てたんだよ。前の持ち主の家に泥棒が入って、そいつが盗品を道具屋に売ったらしい。それで、お前の家に壺があるのをどこからか聞いたみたいで、壺を取り戻したかってるんだ」
そこまで言うと、カカシはサクラの様子を窺った。
二人の会話は全く聞こえていないようで、サクラは夢中でTV画面を見詰めている。
楽しそうに笑うサクラは、深刻な話とはまるで無縁だ。

「・・・俺だって金を出してあれを買ったんだ」
「分かるけどさ。前の持ち主がその代金を払うって言っても、手放す気ない?」
「ない」
サスケは迷いのない声音で即答する。
その理由を訊ねてみたいと思ったカカシだが、サスケの性格を考えると、素直な答えが返ってくるとは思えない。
サスケの頭の上に手を置くと、カカシは笑いながら言った。
「分かったよ」

 

「あれ、どっか行くの?」
ソファーでくつろいでいたサクラは、身支度を整えるサスケに首を傾げる。
カカシはすでに玄関口にいるが、どうやらサスケを待っているようだ。
「急用だ」
サスケは家中の窓という窓を閉め始める。
そして、廊下を歩いて全部の部屋の鍵をチェックしていた。

「そんな厳重にしなくても平気よ」
「近頃は物騒なんだ。いいな、誰が来ても絶対に扉を開けるなよ。外にも出るな」
「え!?」
目を丸くしたサクラに、サスケは厳しい眼差しで繰り返す。
「分かったな」
「う、うん。いってらっしゃい」
サクラが頷くのを確認して、サスケは踵を返す。
ただならぬ雰囲気を感じつつ、サクラは怪訝な表情でサスケの後ろ姿を見送った。

 

 

「とにかくさ、壺が戻らないなら最後に一目でもいいから見たいって言ってるんだ」
「・・・・」
壺の元持ち主がいるという建物。
廊下を歩くサスケは不機嫌そうに口を引き結んでいる。
鞄には、サクラに内緒で持ち出した例の壺が入っていた。
壺を見せることが諦める条件だというのだから、サスケは従わざる得ない。

「俺も付いていくし、先方は壷を諦めるって言ってるんだから心配することないよ」
カカシはサスケの肩を叩きながら言ったが、サスケの不安を完全にぬぐい去ることは出来なかった。


あとがき??
まぁ、続きはほぼ予想できるかと。
ラブラブ注意報。覚悟(?)しておいてください。
サスサク苦手なくせに、何故に自分を苦しめる駄文を書くのか不思議な今日この頃。


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