First Love
「小桜、大きくなったらパパのお嫁さんになる」
可愛らしい娘の結婚宣言に、カカシは顔を綻ばせる。
「そーか、そーか。嬉しいなぁ」
両脇に手を添えたカカシに高く抱え上げられ、小桜は笑い声を立てた。優しくて強くて格好いい父親は小桜の自慢だ。
こうして父と戯れている時間は、友達と遊んでいるときよりも楽しく感じる。
父の了承を得たとばかりに満面の笑みを浮かべる小桜だったが、カカシの一言でその幸せはもろくも崩れた。
「パパも小桜のこと大好きだけど、結婚はできないんだ」
「ええ!」
思いがけぬカカシの返答に、小桜は顔色を変える。
「何で?」
真剣な小桜の眼差しに、カカシの表情も真面目なものになる。
「俺はサクラのものだから、小桜とは結婚できないんだよ」「子供相手に何を真面目に答えてるのよ」
「あたっ」
リビングにやってきたサクラはカカシの後頭部をぺしりとはたく。
小桜の足を地に付けると、カカシは痛そうに頭を押さえた。
「だって、本当のことだし。俺、サクラ以外の女の子は目に入らないから」
「・・・馬鹿ねぇ」
口では悪態をつきながら、サクラは嬉しそうに笑みを浮かべている。
仲の良い二人の様子を、小桜は目に涙をためて見ていた。
小桜、3歳。
初めて経験した失恋だった。
「まぁ、初恋は実らないものなんだよ」
分かったような口をきくナルトに、小桜は首を傾げて彼を見上げる。
「ナルトもそうだったの?」
「んー。そうだね」
ナルトは苦笑して小桜を見遣る。
ナルトの失恋の証がすぐ目の前にいるのだが、口には出さない。頻繁にカカシ宅を訪れるナルトは、小桜にとって両親同様に何でも話せる間柄だ。
たまに、こうして誰にも出来ない相談ごとをしたりもする。
公園のブランコに座って話す小桜の話を、柵に腰掛けたナルトは面倒くさがらずに耳を傾けていた。「こんな可愛い子を振るなんて、パパ絶対に後悔するんだから」
小桜は物憂げな様子でため息をつく。
ナルトは素直に相槌をうちながら小桜に顔を向けた。
「そうだね」薄紅色の髪に、緑の瞳、そしてちょっぴり広いおでこ。
小桜の容姿は幼いときのサクラそのままで、小桜が自分を「可愛い」と言うのに、ナルトも思わず頷いてしまう。
大人顔負けの口振りと賢さも、サクラ譲りだろうか。
何気なくその顔を見詰めていると、小桜は急に振り返った。
「ナルトは、恋人いないの?」
「え」
突然の問い掛けに、ナルトは意表を突かれる。
「いないよね。いたらうちに何度も遊びに来たりしないもの」
小桜の推測は当たっているだけに、ナルトは返す言葉がない。
気落ちした表情になるナルトに、小桜はにっこりと笑いかけた。「可哀相だから、私がナルトの恋人になってあげる」
「・・・可哀相」
子供に同情されたナルトは、がっくりと肩を落とす。
ナルトとて、女性にもてないわけではない。
サクラへの想いを引きずり故意に特定の恋人を作らなかったのだが、小桜にそのあたりの事情は分からない。「小桜、大きくなったらナルトのお嫁さんになる」
小桜は無邪気な笑顔を浮かべて繰り返した。
あとがき??
小桜がナルトの嫁になると言い出したのは、ナルトが自分のこと可愛いって認めてくれたからですよ。
現時点でナルト20歳、小桜3歳。二人が結婚するのは12年後。
これの前にナルサクで『Reserve』という話があります。小桜が生まれる前の話。
思わずシリーズ化しそうな勢いなのですが、どうでしょう。(笑)鳥星さんのサイトの可愛い小桜ちゃんイラストを見て、即行書きました。
しかし、私には「にょ」口調は無理でした。(^_^;)
ナルトの「だってばよ」すら使いこなせていないというのに・・・。ナルトと小桜ちゃん、まだ恋愛にはほど遠いけど(子供相手にそんなのされたら困る)、これから小桜はちょっと大変かもしれないです。
サクラはナルトの永遠のマドンナなので。
・・・やだ。これじゃあ、小桜が紫の上でナルトが光源氏だわ。
サクラは藤壺でカカシが帝か。