Reserve 2


「そうだよ。何か、先生に脅迫されてたのかもしれないし。今ならまだ・・・」

シカマルに焚き付けられたナルトはぶつぶつと独り言を呟きながらカカシ宅へ向かった。
サクラの妊娠にショックを受けたナルトは、頭がかなり混乱していた。
サクラの顔を見れば、結婚が本意なものかそうでないか、すぐに分かる。

だけれど、二人の結婚から半年以上経った今でも、ナルトのサクラへの想いは変わっていなかった。
おそらく、サクラを大切に思う気持ちはナルトの中で一生変わることはない。
シカマルの言葉を信じた方が、ナルトにとってずっと楽なことだった。

 

 

団地へと続く階段を上りかけたとき、ナルトは薄紅色の後ろ姿に気付いた。
「サクラちゃん」
声を掛けると、サクラはすぐに振り返る。
「ナルト。どうしたのこんな時間に」
「サクラちゃんこそ」

二人は階段の上と下で会話をする。
サクラは何か買い物袋を抱えていたが、夜の9時を過ぎた今は、主婦のお使いの時間ではない。

「あのね、この・・・」
サクラは何か言葉を発しようとした瞬間に、足下の僅かな段差を踏み外した。
つんのめったサクラは、買い物袋を手にしたまま、危うくバランスを崩しそうになる。

「サクラちゃん!!」

その光景に、ナルトは心臓が止まりそうになった。
手を広げて駆け寄ったナルトは、サクラを抱えたまま踊り場で座り込む。
二人の目の前で、サクラの足から離れたサンダルが、彼女の変わりに音を立てて段を転がっていった。
驚いた表情のまま固まっていたサクラは、ナルトの腕の中でつばを飲み込む。

 

「ビ、ビックリした・・・」
「ビックリしたのはこっちだよ!!」
怒鳴り声をあげるナルトに、サクラは目を見開いた。
「買い物袋なんて放り出せば良かっただろ。サクラちゃんまで一緒に落ちるところだったんだぞ!」
「・・・ごめんなさい」
サクラは気落ちした表情で俯く。
ナルトの言うとおり、落下しそうになった袋を手放せばサクラまで危うくなることはなかった。
サクラの瞳は泣きそうなくらい潤んでいる。

「・・・・何が入ってるのさ」
気まずい空気に、ナルトは顔を背けながら訊ねる。
「六角亭のチョコレートケーキ、カカシ先生の大好物なの。買うのすっかり忘れてて。先生、明日帰ってくるから、食べてもらいたくて」
「・・・・」
申し訳なさそうに言うサクラに、ナルトは再び無言になる。

 

 

分かっていた。
サクラが、カカシを何よりも大事に思っているのは。
認めたくなくて、目を背けていただけで。
ナルトがどんなに想っていても、サクラが振り向いてくれることはない。

それならば、見守るしかない。
サクラと、その子供の幸せを。
サクラが泣く事がないように。

 

「気を付けてね。サクラちゃん一人の身体じゃないんだから」

先ほどと違うナルトの穏やかな声音に、サクラは顔を上げる。
返事をしようとした瞬間に、その口を封じられた。
瞬く間の、刹那の出来事。

「ナルト?」
唇を離したナルトに、サクラは不思議そうな顔で問い掛ける。
「予約」
「予約?」
「お腹の子供が女の子だったら、俺がお嫁さんにもらおうと思って」
ナルトはサクラににっこりと笑いかけた。

「あとね、ファーストキスはサクラちゃんとしたかったの」
「・・・あんた、サスケくんとしてるじゃない」
「あんなの数に入れてないよ」
とたんに口を尖らせたナルトに、サクラは微笑を浮かべた。

 

ナルトは買い物袋を片手に立ち上がる。
「行こう」
差し出される手に、サクラは素直に掴まる。

想いは変わらないけれど、サクラとのキスで何か心のつかえが取れたような気がする。
サクラが自分を信頼してくれているこの距離を、大事にしたいとナルトは思った。


あとがき??
え、ドキドキしなかった?すみません。


駄文に戻る