弟君 1


はたけ家のすぐ近くには、公園とも呼べないような、小さな広場がある。
遊具は砂場しかないのだが、昼間には幼い子供を連れた主婦達が集まる憩いの場だ。
家路を急いでいたカカシは、その砂場の近くにぽつんと立つ娘を見付けた。
見たところ、周りに友達らしい子供はいない。

 

「小桜」
カカシが声をかけると、小桜は弾かれたように振り向く。
「何してるんだ。こんなところで」
「パパ!」
駆け出した小桜は、両手を広げたカカシの腕の中に飛び込んでくる。
自分にしがみつく小桜の体を、カカシは軽々と抱え上げた。

「おかえりなさいー」
「ただいま。お土産たくさん買ってきたからな」
嬉しそうに微笑む小桜に、カカシも顔を綻ばせる。
国外に出る任務を請け負ったせいで、娘の顔を見るのは久しぶりだ。
家族の写真は大事に持っているが、実際にこうして触れるのとは全然違う。

そして、木ノ葉隠れの里に帰ったカカシの心を占めているのは、小桜以上に、まだ生まれたばかりで数えるほどしか会っていない第二子のこと。

 

「快もおっきくなったろうなぁ・・・」

心ここにあらずといった顔で呟いたカカシに、小桜の表情がにわかに曇った。
「ほら、小桜も弟に会いに帰るだろ」
「・・・・行かない」
口を尖らせた小桜は、腕を叩いてカカシに下におろすように促す。
足を地につけた小桜はあからさまに不機嫌な様子だった。
その態度の豹変の理由が分からず、カカシは首を傾ける

「もしかして、家に帰りたくなくてここにいるのか?」
カカシの問いが図星だったのか、小桜はぷいと顔をそむける。
あとはカカシが呼び止める声も聞かず、小桜は広場の外へと走り去ってしまった。

 

 

「嫉妬してるんだよ」

茶を一口すすると、ナルトはちらりと快の眠る揺りかごを見ながら言う。
今日のように頻繁にはたけ家を訪れ、小桜の一番の遊び相手であるナルトは小桜の変化にもいち早く気づいていた。

近頃、小桜が癇癪を起こす原因。
一人目の子供は喜びも相俟って親は何かと目を掛けるが、次の子供が生まれればそうはいかない。
最近はサクラも下の子供にかかりきりで小桜の面倒まではなかなか見られなかった。
父親が不在中ということもあり、放っておかれる時間が多くなったことが小桜の不満の種なのだと、ナルトは指摘している。

「姉弟なんだし、仲良くしてもらわないと困るなぁ」
「でも、あの子、快に近づこうとしないし」
カカシとサクラは困惑気味に顔を見合わせた。
腕を組んだナルトも真顔で考え込んでいる。

「・・・やっぱり、早めに何とかしないと駄目だよ」
真剣な表情で告げるナルトに、カカシは小さく頷いた。
「ちょっと荒療治でいくか」

 

 

 

晴天の日曜日。
いつもは友達の家に行って夕方まで帰ってこない小桜だが、その日は家を出る前にカカシにつかまった。

 

「小桜、パパはママと買い物に出かけるけど、お前一人で留守番できるよな」
「え!!?」
「ここに快のもの全部入っているから。ママはもう先に外に出てるんだ」
「え、ええ!?」
大きな手提げかばんをひとつ渡され、小桜はとっさにサクラの姿を探す。
だがカカシの言うとおり、定位置である快のそばにサクラはいない。

「ちなみにナルトは家にいないから電話しても無駄だぞ。じゃあ、頑張れな」
矢継ぎ早に話すと、カカシは小桜の反論を聞くこともなく玄関の扉の向こうへと消える。
取り残された小桜は、手提げかばんを片手にただ唖然とするしかない。

こうして小桜のはじめてのお留守番は、快というとんでもないお荷物付きでスタートすることになった。


あとがき??
つ、続く・・・。時間切れ。(泣)
今絶望的に時間がないのです。社員さんが辞めてしまって、仕事が倍に。(泣)
駄文書く気力も薄まっている。こういうときに閉鎖したくなるんだろうなぁと思います。

タイトルはそのまま、おとうとくん。
ちなみに小桜がサクラ似なのに対し、快くんはカカシ先生似。(定番?)


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