ママが泣いた日 2


「ただいまーー」

 

凶報が突然なら、吉報もまた突然だった。

笑顔で片手を上げるパパに、玄関口に来た私とママはあんぐりと口を開ける。
何度も何度も夢に見た光景。
幻聴付きの幻、はたまた、昼間から幽霊が出たのかと思ったけれど、パパの足はしっかりとある。

「いやー、雪山で倒れてたところを、運良く炭焼き小屋のじーさんに拾われてさ。でもそのじーさんが足が悪い上に生まれつき声が出ない人で、麓の村まで連絡できなかったんだよ」
「・・・はぁ」
「俺の方は肺炎おこしかけたせいで二週間も寝込んじゃって。でも、怪我はたいしたことなかったんだ」
「・・・へぇ」
「里に戻って来るなり、みんな化けものでも見たみたいに驚くから、何か笑っちゃった」
靴を脱ぎながら矢継ぎ早に話していたパパは、呆然と立ちつくす私達ににっこりと笑いかけた。

「心配かけて、ごめんな」
パパはママの頭にぽんと手を置く。

おそらく、その笑顔が合図だった。

 

ママが、今までずっとにこにこしていたママが、堰を切ったように大声をあげて泣き出した。
私も同じ気持ちだったのだけれど、驚きの方が大きくて、快と共に目を丸くしてパパに泣きつくママを見守る。
こんなにも号泣する大人というものを、私は今まで見たことがなかった。
子供のように泣きじゃくるママを、パパは必死になだめようとしている。

パパが帰ってきた、という感激。
それは、思いがけないママの姿を目の当たりにしたせいで、ワンテンポ遅れてやってきた。

ママに続いて、私も大きな声で泣き始める。
負けじと快も声を張り上げる。
うちの玄関は、一瞬にして家族対抗の号泣大会のようになってしまった。
何事かと、近所の人が家の前に集まるのは時間の問題だ。

「何か、生きてたのに、通夜の会場に来たみたいだなぁ・・・」

とぼけたようなパパの声にも、私達の涙はまだまだ収まらなかった。

 

 

 

「いただきまーす!」
「どうぞ」
スプーン片手に言う私に、ナルトは苦笑いをして応えた。

快晴の日曜、パパとママは久しぶりのデートをして、私と快はナルトとお出かけ。
何もかも、元通りの日常。
そして、私はこの前レストランで食べ損ねた料理を残らず注文していた。
快はお子さまセットに付いてきた玩具の自動車で、夢中になって遊んでいる。

 

「ナルトって、ママのこと何でも分かるのね」
「ずっと見てるからね」
朗らかに笑うナルトに、私は不思議になる。
「それなら、何でナルトがママと結婚しなかったの」

あまり深い意味のない、素朴な疑問。
でも、ナルトはしごく真面目な顔で私を見詰めた。

「俺じゃ、サクラちゃんを幸せにできないからかな。サクラちゃん、先生といるとき本当に嬉しそうに笑うだろ」
「・・・うん」
「どんなに想っていても、先生より長く一緒にいても、俺の隣ではそんな顔してくれなかったんだ」
寂しげな呟きと共に、ナルトは口元に薄い微笑を浮かべた。
いつもと全く違った、ナルトの心細い笑みに、胸がどきりと高鳴る。

 

「こ、小桜は、小桜はナルトといるときが、一番楽しいよ!」
思わずスプーンを握り締めながら熱弁すると、隣りに座る快まで「僕も、僕も」と繰り返す。
あんたは口を挟まないでよ、と思ったけれど、ナルトが嬉しそうに笑ったから、何も言わなかった。


あとがき??
不死身のカカシ先生。私はハッピーエンド好きーです。(笑)
しかし、カカシファミリーシリーズはあんまりハッピーすぎて毎回死にそうな気持ちで書いてます。照れる。
小桜ちゃん、今回は7、8歳かな?
たぶん、今回省いたカカシバージョンも書きます。

カカサクメインだけどページが余った(?)ので、余分なナルトv小桜を入れてみたり。
やっぱり年の差カップルはいいなぁvv
二人は将来結婚しますが、最後まで小桜の片思いっぽいです。
私が、サクラのことを好きなナルトが好きなので。

このシリーズにはサスケは登場しないですね。
サクラのピンチを救うのはナルト、という考えがあるからだろうか。
サスケのピンチを救うのはサクラ、なのですが。
あれ、違う?

こんなに長く続くと思わなかったシリーズなのでばらばらに置いてあるのですが、まとめた方がいいかしら・・・・。


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