秋の空と冷たい手のひら


蝉の声が、すっかり大人しくなった午後。
ひんやりとした風に、サクラは秋の気配を感じていた。
草むしりの任務では蚊の多さに閉口したが、それももう暫くの辛抱かもしれない。
前を歩くサスケとナルトは、先ほどから無言のままだ。

 

「空が、高いね」

サクラが天を仰ぎながら言うと、傍らにいたカカシも、同じように空を見上げた。
澄み切った青が、目に眩しい。
それまで愛読書を読みつつ歩いていたカカシは、瞬きを繰り返した。

「気持ちのいい空だねぇ」

のんびりとした声で言うと、カカシはサクラへと視線を移す。
今日のサクラの装いは、赤のノースリーブだ。

 

「ちょっと寒くない?」
「・・・・うん」

言われて初めて、サクラは肌寒い空気が気になった。
サクラは丁度、目に付く位置にあったカカシの手を握ってみる。
残念なことに、それはサクラの掌と同じくらいの温度だ。
眉をひそめたサクラはすぐに手を放し、次に、口笛を吹いて前方を歩くナルトに近寄る。

「ん、何?」
「手、見せてよ」

素直に差し出されたナルトの手を、サクラはおもむろに掴む。
ナルトの手は、カカシのものとは全く違った。
小さくて柔らかくて、温かい。
何となく笑顔になったサクラは、繋いだ手はそのままに歩き始める。

 

物寂しい秋の雰囲気。
指先の冷たさと心細さは、これで解消された。
相手がナルトならば、こうして歩いても緊張することはない。

 

 

 

「サクラちゃん、知ってる?」

ナルトの手に、僅かに力が加わる。
気候に反比例して温かな、ナルトの掌。
その熱は、冷えていたサクラの手にも徐々に浸透していく。

「手が冷たい人は、心は温かくていい人なんだってさ」

首を傾けてサクラを見ると、ナルトはにこりと笑って言った。
穏やかな微笑は、空の青さに負けない透明さだったから。
自然と口をついて出ていた。

「じゃあ、ナルトは例外なのね」

 

道端のコスモスが、つぼみを膨らませて秋の到来を待っている。
豊穣の秋は、もうすぐそこまでやって来ていた。


あとがき??
うちの7班男子のいい人の度合いは、1位:サスケ、2位:カカシ、3位:ナルトの順です。
ええ、ナルチョは一番良い子じゃないの?と思いつつ、原作とうちではナルトの性格が大幅に違うのです。(笑)
嫌われたくない人、又は弱い立場の人に対してはうちのナルトは優しいです。
でも、その他は別にどうでも良かったりする、はっきりした子なのです。
ちなみに、優先順位の一番はイルカ先生とサクラちゃん、二番はカカシ先生とサスケ。

単刀直入に説明すると「俺は本当はワルなんだ。サクラちゃん、そんな気安く俺に触ると危ないよー」と告白したナルトに「ナルトは良い子よ」と真顔で答えたサクラ。
ナルトが毒を吐くとナルトらしい。
サクラがナルトを「良い子」だと信じているうちは、彼も「良い子」でいられるのです。


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