狐の怪 弐


「何かあったんですか」
サスケの叫びにも目を覚まさなかった二人をたたき起こすと、直後に扉の外から声をかけられる。
住職だ。
現場は未だ混乱していたが、無碍に追い払うわけにもいかず、カカシは扉を開いた。
「済みません。お騒がせして」

何と言ってごまかそうとカカシが必死に考えていた時、カカシの肩越しに部屋を見た住職の顔が、瞬時に強張った。
「狐憑きじゃ!!」
住職は怯え混じりの悲鳴をあげる。
慌てふためいた住職は念仏らしきものを懸命に唱え始めた。

「え、何ですか、狐憑きって」
突然のことに驚いたカカシが目を丸くして訊ねる。
「あなた達にも、見えるでしょう、あれが!」
住職は震える手である一点を指し示した。
その先には、サクラがきょとんとした顔で布団の上に座り込んでいる。

先ほどはあまりに驚きが大きかったのでカカシもサスケも気付かなかったが、よく見るとサクラの頭上に何か動物の耳らしきものがついている。
皆の視線が自分に集中していることを悟ると、サクラは一声
「コン」
と甲高く鳴いた。

 

「だからー、その時箱の中から出てきたのが、この置物なんだってばよ」
カカシに殴られて起きたために、腫れた左頬をさすりながらナルトは事情を説明する。
枕もとに置いてあった箱をナルトが開ける。
中には狐の形をした小さい陶器があった。

「これが出てきたら、サクラちゃんの様子が急におかしくなって」
ナルトは自分の背後にべったりとくっついているサクラに目を向ける。
「で、こうなったんだってば」
「全然分からん」
カカシは青筋を立てて不機嫌な声を出す。
「大体、何でサクラを部屋に連れ込んでるんだ」
「だって、サクラちゃんが離れてくれないし、カカシ先生の部屋の扉ノックしたら、「煩い」って怒鳴り返されたから」
「・・・そうだっけ」

逸れ始めた会話を修正するようにして、住職が口を開いた。
「これは狐憑きという現象です。私も見たのは初めてですが、先代の住職が悪さをする狐の悪霊を封印した話は聞いたことがあります。多分、その箱の封印を解いてしまったために、彼女は取り憑かれてしまったのでしょう」
住職がサクラに視線を向けると、彼女は長い話し合いに飽きたのか、ナルトの膝を枕にうつらうつらとしている。

サクラはまるで人語を理解していないようで、こちらが何を話し掛けてもまるで反応しない。
一言も発さず、ただナルトに対してにこにこと微笑んでいる。
一見して身体に悪い影響を与えてはいないようだ。

カカシは不安げな表情で訊いた。
「治るんですか」
「新たな封印札を作るのに三日ほど掛かりますが、それが出来れば再び封印できます」
三日というのは、その札に念をこめるのに必要な日数らしい。
合掌しながら言う住職に、サクラを除く7班の面々はホッと息をつく。
「でも、おかしいですね。先代の話によると、封印した狐は二匹。陶器も二つあるはずなのですが」
住職の言葉にナルトも首を傾げる。
「それ一つしかなかったよ」

 

取り合えずサクラの事は見通しがついたが、まだ問題が解決したわけではない。
そもそも7班は任務のために、この地に赴いたのだ。
だが、今のサクラは任務を遂行できる状態ではない。
よって、そのサクラが何故か懐いていて、離れようとしないナルトも行動ができない。
任務はサクラが元に戻るまで、カカシとサスケを中心に行うということになった。

「もしかして依頼の狐の幽霊の話は、この狐憑きと関係があるんじゃないか」
それまで黙って皆の話に耳を傾けていたサスケが、初めて発言した。
その意見に、カカシは神妙な顔で頷く。
「・・・そうかもしれないな」
「え、幽霊って狐の霊だったの」
素っ頓狂な声を出すナルトに、サスケは呆れたように言った。
「お前、相変わらず人の話聞いてないな」

 

住職の話によると、ここ数日寺の周りで目撃されている霊は狐の霊だ。
月夜の晩に金色の髪の男性の姿で現れ、「私の妻を知りませんでしょうか」と問い掛ける。
その言葉に、「知らない」と答えると、身体を狐に変化させ、すっと消えてしまうという。

妻女を探す狐の幽霊。
無くなった狐の陶器。
そして、狐憑きのサクラ。

全て狐が関係している。

もしやお前が事件を呼び寄せてるんじゃないだろうなぁ、とカカシはサクラの頭をなでて嬉しそうにしているナルトを眺めながら思った。


あとがき??
まだラブラブにならなかった・・・。済みません、済みません。(平謝り)
次回は絶対チューさせますんで。
ラブラブとはいえないけど、サクラちゃんずっとナルトにべったりなんですよ。羨ましい。
狐の耳つけたサクラちゃん・・・。
想像するだけで、ラブリ〜〜vv(馬鹿)

それにしても、ただラブラブナルサク書こうと思っただけなのに、なんでこんなに長くなってるんだー!!
お、終るのかなぁ。(ドキドキ)
厳密に言うと、サクラであってサクラじゃないし。だから「一応ナルサク??」なのだ。


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