beautiful name
サスケがサクラの手作り弁当を食べるようになって1ヶ月ほどたったある日のこと。
事件は起こった。「サスケくんに彼女が出来た!?」
「・・・そうなのよ」
サクラはいのが店番をする花屋へ赴き、現状を説明した。
「毎日、毎日、任務のあとにトレーニングする演習場と別方向に行くから、どこに行くか聞いたら「お前には関係ない」って冷たく言われて・・・」
そのあたりまでは、いつものことだ。
だが、サクラはへこたれなかった。サクラはサスケのあとを、気配を消してつけてみた。
サスケが向かった先は、とあるペットショップ。
何か動物を飼い始めたのかと、サクラがこっそり店内を覗くと、店の看板娘と談笑するサスケの姿があった。
その日以降もサクラはサスケの行き先を追ったが、そのたびにサスケはそのペットショップに入っていった。
これで確定的だ。
近頃サクラに何か隠しているようだったサスケは、あの店の娘と交際していたのだとサクラは決め付ける。
「それなら、私のお弁当食べるなんて、思わせぶりなことしなければいいのに。酷いでしょ!」
サクラはハンカチで涙を拭きながらいのに訴える。
「あんまりむかついたから、今日のお弁当は納豆入りおむすびにしてやったわ」
納豆はサスケの最も苦手とする食べ物だ。
せいせいした、と胸をはるサクラを、いのは不思議そうな顔で見遣る。
「でも、サスケくんそれ食べたんだ」
「うん。すごーーく嫌そうな顔してたけど、全部食べてたよ」
「あのさ、あんたのこと嫌いだったり、他に彼女がいたりしたら、サスケくんあんたの弁当食べないと思うよ」
「・・・・・」言われてみれば、その通りだ。
思案顔になるサクラに、いのは一言忠告をした。「もっと、サスケくんのこと信じてあげれば」
「信じるも何も、サスケくん私に優しい言葉の一つも言ってくれないし・・・・・」
いのの店を出たサクラは、ぶつぶつと呟きながら歩く。
前ほどとげとげしい態度を取ることもなくなり、弁当も食べてくれるようになった。
それはサスケなりの誠意だろうが、サクラは時々たまらなく不安になるのだ。「・・・ん」
人通りの多い路地。
サクラは視界の隅を横切ったサスケの存在にかろうじて気付く。
時計を見れば、サスケが丁度ペットショップに向かうあたりの時間だ。
サスケの手には例のペットショップで購入したと思われる手提げ袋を持っている。
いそいそと歩くサスケはサクラに気付かないほど急いでいる様子だ。「どこ、行くのかしら・・・・」
サクラはいつもペットショップまでしかサスケのあとをつけなかった。
だが、今のサスケは自分の家とは逆方向の道を、あきらかに目的があって歩いている。
サクラは電信柱の陰からそっとサスケの後ろ姿を窺った。
最終的にたどり着いたのは、ペットショップからそれほど離れていない木ノ葉公園。
サスケは顔見知りらしい老人に声をかけ、彼の飼い猫にペットショップで購入したエサを与えていた。仔猫を抱えて嬉しげに微笑むサスケに、サクラは呆然とする。
サスケの毎日の日課が分かってしまった。
ペットショップに向かうのは、あの仔猫のエサを手に入れるため。
看板娘とは、単なる店員と客という間柄なのだろう。
だが、早とちりしたサクラは、それ以上サスケのあとをつけ回そうと思いもしなかった。ただ仔猫に会いに行くのなら、何故自分に秘密にしようとしたのかがサクラには分からない。
サクラが動物好きなのは、サスケも知っているはずだ。
「・・・こんにちは」
「こんにちは」
サスケがいなくなったのを見計らって近づくと、老人は気持ちよく挨拶を返してくれた。
「あの、今の彼はいつもこの猫に会いに来るんですか」
「ええ。川に落ちて溺れてる猫を、彼が助けてくれたんですよ。それから毎日様子を見に来てくれて」
サクラの足元で、仔猫がミャアと声をあげる。「サスケくんのお知り合いですか?」
「春野サクラです」
訊ねる老人に、サクラは頭を下げて答える。
一瞬、眼を見張った老人は、すぐに顔を綻ばせた。「彼の恋人ですか」
「ち、違います!!!ただ、同じ班の仲間で」
手を横に振りながらサクラは慌てて老人の言葉を否定した。
「・・・・そうだったら、いいなと思いますけど」
付け加えられた言葉に、老人は全ての事情を察したようだ。
老人は口元に笑みを湛えてサクラを見詰めた。
「あなたの想いは通じていると思いますよ」
「さくら」
立ち上がった彼は、付近をうろつく飼い猫に声をかける。
名前に反応した仔猫はすぐに老人のもとへと走ってきた。
「え、さくら?」
驚きの声をあげるサクラに、老人は穏やかに微笑む。
「この猫の名前は、サスケくんがつけたんですよ」
老人の言葉に、サクラは一層目を丸くする。「命を助けてもらったので、名づけ親になって欲しいと頼んだんです。サスケくんは悩んでいる様子でしたから、私は「あなたの大切な人の名前を一つあげて下さい」と言ったんです」
老人はにこにこと笑いながら言葉を繋げた。
「そうしたら、サスケくんはすぐにこの名前を言いましたよ」
おそらくそれが、サスケがサクラとさくらを会わせなかった理由。
素直でないサスケは、老人の口から名前を付けた経緯をばらされるのを恐れていたのだろう。サクラの心の中で、明日の弁当はサスケの好きなおかかのおむすびに決まった。
あとがき??
やっぱりサスケの登場場面が少ないサスサクは書きやすいです。
次の日、サクラが老人&猫さくらと一緒に公園でサスケを待っていたら、彼はとっても驚くでしょうね。(笑)
タイトルはゴダイゴから。名曲ですv
私、どうもサスケとサクラでラブラブvって想像できなくて。
原作でラブラブになったら、私もバリバリ書きますよ。(いつになるか・・・)5万打記念と全く関係のない内容ですが、一応、原作に近いサスサクを目指した(つもり)ということで。
日頃のご愛顧を感謝して。