花と蜜蜂
アカデミーの中庭にあるベンチで、サスケが横になっていた。
頭の後ろで手を組んで、枕代わりにしている。
たまたま通りかかったサクラは、その姿を視界に入れるなり一歩も踏み出せなくなる。暫らく観察していたが、目を瞑ったサスケは全く身動きをしない。
そして、周囲には人通りは全く無い。
ごくりと唾を飲込んだサクラは、サスケのいる方角へ歩き始めた。
上から覗き込むと、あまりに無防備な寝顔にサクラは胸を締め付けられるような気がした。
普段は端麗な面立ちと冷静な言動のせいで大人びて見えるサスケも、今はきちんと年相応の少年の顔だ。
サクラは思わず口元を綻ばせてその寝顔を見詰める。「サスケくん、こんなところで寝たら風邪ひくよ・・・・」
小さく呼びかけてみるが、安らかな寝息は途絶えない。
屈みこむと、サクラは吸い寄せられるようにサスケの頬に唇を当てる。
その柔らかな頬の感触に、サクラはすぐに顔を離した。
自らの行動に動転して、顔は真っ赤だ。「ご、ごめんなさい」
サクラは消え入りそうな声で言うと、慌てふためきながらその場から走り去る。中庭には再び静寂が戻った。
「・・・狸寝入り」
ベンチの真横にある大樹から、サスケに向かって声がかけられる。
「起きてるんだろ」
頭上の声に反応したのか、サスケはぱちりと目を開けた。
目線の先に、サスケは眉を寄せて自分を見詰めるカカシの姿を発見する。
半身を起こしたサスケは、木の枝に座るカカシを仰ぎ見た。「サクラのことを好きでも無駄だぞ」
「何で?」
問い掛けるカカシに、サスケは答えることなく、にいっと笑う。
人を小馬鹿にしたような、嫌な笑み。そのまま、サスケはカカシに背を向けて歩き出した。
「・・・嫌な奴」
あれは、サクラが自分に夢中なのを十分承知しての、余裕の笑みだ。
他の男には見向きもしないサクラ。
さながら、綺麗な花に惹かれる蜜蜂のように、サクラは一直線にサスケを見詰めている。「こっちの花だって綺麗に咲いてるのにね」
カカシはぶつぶつと独り言を繰り返す。
「そりゃ、12の少年と比べたらちょっと萎れかけてるけどさ・・・」
木の幹に寄りかかり日課の昼寝を続けようとしたカカシだったが、先ほど見た嫌な光景が頭をよぎり、なかなか寝付くことができなかった。
あとがき??
『のだめ カンタービレ』で千秋先輩へのチューに成功するのだめを見て書きたくなりました。
え、サスケが千秋先輩でサクラがのだめだとしたら、カカシ先生がミルヒ先生!?
そりゃないよー。(笑)サスケ優位のカカサクサスって、珍しいかも。
このタイトル前も使ったけれど、これしか思いつかなかったですよ。