不死身のビーナス


「今度の日曜にね、ネズミーランドで20周年記念イベントがあるのよ。パレードが園内を練り歩くんですって!」
「・・・それで?」
「11時にネズミ公園の噴水前で集合ねv」
「・・・・何の話だ」
「お弁当、作って持っていくわ。ずっと待ってるから!」
「・・・・・・おい」
「じゃあね!!」

会話の途中、所々挟まるサスケの声を全く無視し、サクラは手を振ってその場から駆け去った。
呼び止める間もなく遠ざかっていく後ろ姿に、サスケはため息をつく。
サクラが人の話を聞かないのは、前からのことだ。
サスケがいくら「うざい」「邪魔だ」と言ったところで、翌日にはサクラはけろりとした顔で寄ってくる。
だから、サスケはこのときのことをあまり気にしてはいなかった。

 

 

 

任務のない休日、サスケは演習場を利用して様々な術の特訓をしている。
たまにカカシが付き合うこともあるが、大抵は一人だ。
サスケはその日も演習場に向かうつもりで家を出た。

前日までの長雨の影響か、道々は人で溢れている。
快晴の空に、すれ違う人々の顔は皆、明るい。
そんな中、向こうから来る親子連れを視界に入れたサスケは、はっとして歩みを止めた。

ネズミーランドのマスコットキャラ、鼠のミッチーがプリントされた風船を持つ少女。
風船には、『20周年記念!』の文字があり、おそらく、彼らはネズミーランドの帰りなのだろう。
とっさに時計を見ると、時刻は午後の3時。
今の今まで忘れていたが、サクラは11時に公園に待っていると言った。

 

立ち止まり思案していたサスケは、ふいに、強張っていた顔を緩ませる。
自分は、サクラの誘いにOKの返事はしていない。
それに、待ち合わせの時間から4時間も経過しているのだ。
いくらサクラでも、待っているはずがない。

「サスケ!!」
再び歩き出そうとしたサスケは、ぶしつけな呼びかけに片眉をあげて振り返る。
サスケに向かって指をさして大きく口を開けているのは、ナルトだ。
驚いた表情でサスケを凝視していたナルトは、段々とその表情を険しいものにしていった。

「お前、こんなところで何してんだ!」
「?」
「サクラちゃん、ネズミ公園でお前のこと待ってたぞ。もう1時間くらい前のことだけど」
サスケに歩み寄ると、ナルトはとげとげしい声で言った。

 

 

 

16時のネズミ公園、噴水前。
ベンチでいちゃつくカップルや、犬の散歩をする少年はいるが、ピンクの髪の少女は見当たらない。

サスケは大きく息を吐いて、噴水の縁に腰掛けた。
サクラがまだ待っているはずがないし、自分が責任を感じることもない。
分かっているのに、足は自然とこの場所へと向いていた。

 

「サスケくん」

すぐ隣りで聞こえた声に、サスケはゆっくりと顔をあげる。
そこにいたのは予想通り、明るい笑顔を浮かべたサクラ。
「ごめんね。ちょっとあそこに行っていたの」
言いながら、サクラは公園の隅にある公衆トイレを指し示す。
無邪気に笑うサクラを見ているうちに、サスケは急に怒りが込み上げてきた。

「お前、俺は行くなんて、一言も言っていないだろ!」
「・・・・でもサスケくん、ちゃんと来たじゃない」
サクラはサスケが怒る理由が分からず、きょとんとした顔でサスケを見る。
言葉に詰まったサスケに、サクラはにっこりと微笑んだ。
「パレードは終わっちゃったけど、夜には花火があるんだって」

にこにこ顔で自分の手を取って歩き出したサクラに、サスケはただただ唖然とする。

待たせた時間は、合計5時間。
どんな理由であれ、自分だったら、怒り狂って相手の顔など見ないだろう。
そもそも、1時間が経過した時点で帰っているのが普通だ。

 

「・・・めげない奴」
片手を額に置いて呟いたサスケに、サクラは笑って言った。
「取り柄ですから」

嬉しそうな微笑を前に、サスケは深々と嘆息する。
繋がれた手を振り払う気持ちには、どうしてか、ならなかった。


あとがき??
王道のようなサクサス。たまにはね。
この調子で押して押して押しまくって、頑張ってサスケくんをゲットしてください。(笑)
アニメで死の森をやってる間は、サスサク強化月間!!!(たぶん、もう二度とやらない)
次からは両想い設定でGOーー!!


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