6.8kgの余裕


すれ違う少女達は、ほぼ100%の確率で振り返る。
その視線は、まず秀麗なサスケの顔にいき、次に、彼と腕を組んで歩くサクラへと移る。
羨望の眼差しにサクラがどこか誇らしげな気持ちでいられたのは、最初だけだった。

今は彼女達に見向きもしないサスケだが、いつ気が変わるか分からない。
中には、サクラの目から見ても魅力的な外見の女の子が沢山いるのだ。

 

 

「サスケくんさ、ちょっと太ってみる気、ない?」
「・・・はぁ?」
サクラの突拍子もない発言には慣れているサスケも、今回ばかりは素っ頓狂な声で応える。

「髪が薄くなるんでもいいや。あんな感じに」
サクラが指差した方角には、頭が禿げ始めた三十代前半と思われる男性が歩いている。
つい、髪が抜け落ちた自分を想像してしまったサスケは、怒りに顔を赤くした。
「お前、俺にあんなハゲチャビンになれっていうのか!!!何考えてるんだ!!」

ハゲチャビンと言われた通りすがりの男は、びくりと体を震わせて振り返る。
だが、会話が白熱している二人は、泣きそうな顔をしている彼を気にも留めなかった。

 

「だって、心配なんだもん。サスケくんどこに行っても注目の的だし、女の子にもてもてだし。もうちょっと見てくれが悪くなれば大丈夫かと思って・・・」
一体、何が大丈夫なのか。
怒鳴りたいところをぐっと堪え、サスケは小さく深呼吸する。
そうすると、高ぶった気持ちは少しだけ落ち着いた。

「お前は、俺が、チビでデブでハゲでも、全然かまわないっていうのか」
「別にそういう人が好みってわけじゃないんだけど・・・」
サクラは両手を胸の前で合わせ、上目遣いでサスケを見る。
「サスケくんなら別にいいかなぁって思って」

 

 

えへへっと笑うサクラを前に、サスケは額に手を置く。
少しの間を空け、大きく息を吸い込んだサスケは、サクラに対してびしりと指を突きつける。

「いいか!お前がまっったく気付いていないようだから言うが、ポストの右側にいる男と、あそこで電話してる赤いシャツの男と、白い花が飾ってある席にいるカフェテラスの男は、随分前から確実にお前のことを見てるぞ!人に四の五の言う前に、お前が先に太ってみせろ!!」

矢継ぎ早に言われたサクラは、驚きに目を瞬かせる。
よく理解できなかったが、険しい表情のサスケに質問できる雰囲気でもない。
取り敢えず、一番近くにあるポストの方を見ると、サクラと同じ年頃と思われる少年が佇んでいた。
サクラと目が合うなり、彼は頬を染めてすぐに目線をそらす。
そうした行動の意味も、サクラにはよく分からなかった。

 

「・・・・ええと」
「深いこと考えるな、馬鹿!」

混乱するサクラの手を引き、サスケは足早に歩き出した。
あまりに強い力に、サクラは半ば引きずられている状態だ。
おかげで、サクラは電話中の男もカフェテラスの男も確認することが出来なかった。
窺うように隣りを見ると、そこには無表情の綺麗な横顔がある。

「じゃあ、サスケくんは私がものすごーく太っちゃったりしても、大丈夫なの?」
「俺の体重を超えなければな」


あとがき??
最初の頃のサクラは、やはりアイドルに憧れる感じでサスケのことを好きだったと思うので、今は違うんだよーってのを表したかったんだけれど。うーん。
不安なのはサスケくんも一緒なのよ、ということで。
ちなみに、6.8kgってのはサスケの体重(42.2kg)−サクラの体重(35.4kg)です。
15、6歳なので、実際もっと差がありますが。
何故年齢上げたかというと、サスケくんがシャイだから。3、4年もすれば素直になるかと思って。(^_^;)

せっかく両思い設定にしたのに、全然甘くならないのはどうしてなんだ。(泣)
何か、私、やはり、サスサク向いていない気が・・・・。


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