追いかけっこ


サスケくんの後ろ姿。
アカデミーのころから、見飽きるほど見てる。
髪の毛のはね具合も、覚えちゃった。
雑踏の中でも、後ろ姿だけでサスケくんを見分ける自信はある。
好きな人って、人ごみに紛れてても、どうしてすぐに分かっちゃうんだろう。

 

「サスケくん、待って」

呼びかけるのは、いつも私の方。
サスケくんは早足に歩くから、私はなかなか追いつけない。
私が小走りでついて歩いていることを、サスケくんは知らない。
見慣れた後ろ姿は、振り向いてくれることは滅多にないから。

ほんのちょっとだけ。
振り向いて。
優しい言葉をかけてくれたら、それだけで幸せになれるのに。

 

そう思った瞬間に。
魔が差した。
永遠に続くかと思われる、追いかけっこ。

このまま私が追いかけなかったら、どうなる?

 

 

 

少しずつ広がっていく距離。

その後ろ姿を心細い気持ちで、眺める。
サスケくんは私が後ろを歩いていないことに、すぐ気づいたようだった。

怪訝な顔で振り向いたサスケくんを、私は無言のまま見詰める。
何か、言ってくれるかと思って。

 

互いの気持ちを探るような視線が交差したあと、サスケくんは無造作に片手を差し出した。
目の前にある掌の上には、とくに何も乗っていない。
何かの手品だろうかとその手を凝視していると、舌打ちと共に、手を掴まれた。
そのまま、私は手を繋ぐというより、引っぱられている状態でサスケくんの傍らを歩き始める。

「お前の歩く速度に付き合っていたら、いつまで経っても目的地に着かない」

不満げな声。

普通なら、怒っているのかと思ってしまうところだけど、長い付き合いのおかげか、すぐに分かった。
すました横顔が、照れている。
思わず吹き出した私に、サスケくんはあからさまに不機嫌になる。
だけれど、笑いは止まらない。

優しい言葉をかけられたわけではないのに。
十分幸せな気持ちになれてしまった。
あと10年は、彼を追いかけられるくらい。

 

 

時々は、振り返ってね。
ずっとここに、いるから。


あとがき??
押して駄目なら、引いてみろ、ということで。(?)
サスケくんの素直じゃないところもサクラは好きなのですね。
二人は一応、付き合っているのですよ。


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