図書館にて


「それで、この方程式をここに使って」
「ふんふん」
「最後に二乗すると答えが出るのよ」
「なるほどー。サクラの説明は分かりやすいなぁ」

「って、ちょっと待て!!」
机を叩いたサスケに、サクラとカカシは同時に顔をあげる。
「何でお前がここにいるんだ」

最初に木ノ葉図書館で勉強をしようと言い出したのは、サクラだった。
珍しくそれに応じたサスケだったが、今、閲覧室で彼の向かいの席にいるのはサクラと、彼女に寄り添って座るカカシだ。
おまけに、サスケが訊ねた問題について答えるサクラに、カカシは勝手に相槌を打っている。
目障りなこと、この上ない。

 

「えー、だって、俺とサクラは一心同体だしー」
「お前もお前だ!何で何も言わないんだ」
「えーと、何だかもう、慣れちゃって」
カカシを指差し目くじらを立てるサスケに、サクラは乾いた笑いで応える。
その間、カカシは頷きながらサクラの肩に手を置き、サスケの怒りのボルテージはさらに上昇する。

「ほら、背後霊とかと一緒よ。サスケくんもここにいるのは空気だと思って・・・・」
「空気が喋るかーー!!!」
サスケは机をひっくり返しそうな勢いで叫んだ。

「そこの背後霊!今すぐここから退散しないなら、俺にも考えがある」
「・・・・へぇ」
椅子から立ち上がったサスケを、カカシは面白そうに見詰める。
一見、楽しげな笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
「どんな考え?」

散々騒いだせいか、閲覧室の中で彼らは思い切り目立っている。
周囲の視線を痛いほど感じつつ、サクラは図書館司書にいつ叱られるかと一人びくびくしていた。

 

 

 

こうして始まった、二人の闘い。

制限時間は30分。
この図書館内で自由に本を選び、よりサクラが気に入る一冊を持ってきた者が勝者だ。
勝負に負けた方は、もちろんこの場から立ち去る。

器物破損で訴えられる前にとサクラが提案した勝負方法だが、意外にすんなりと二人は納得した。
互いに、サクラの好みを十分承知している自信があったからかもしれない。

 

 

「俺のは、これね」
サクラのいる席へと戻ってきたカカシは、意気揚々とその本を手渡した

『詳解電磁気学演習』。

普通の少女なら顔をしかめてしまうようなタイトルだが、サクラは瞳を輝かせる。
「凄い!先生、これ大人気でいつも貸し出し状態の本なのに。ずっと読みたかったのよ」
どんな小狡い手を使ったのかと横目で睨むサスケに、カカシは余裕の表情だ。
「サスケくんは?」
カカシの渡した本をしっかりと抱えたまま、サクラはサスケへと顔を向ける。

サスケが差し出した本を見るなり、サクラは目を丸くした。
それはカカシの持ってきた本の、半分以下の厚みしかなく、ページごとに可愛らしいイラストが入っている。
長い時代読み継がれている、子供用の絵本だった。

 

 

 

「ようやく静かになった」
「そうね」
くすくす笑いのサクラは、サスケの選んだ絵本を嬉しげに見詰める。

『手袋を買いに』。

幼い頃からの、サクラのお気に入りの絵本だ。

 

「サスケくん、私がこの話好きなの知ってて選んだの?」
「いいや」
参考書に目を走らせるサスケは、サクラを見ずに声を出す。
「それが俺の一番のお気に入りだからだ」


あとがき??
リクエストは、カカシVSサスケ。
勝者は私に任せるとあったので、本当に好きにしてしまいました。
今、サスサクフィーバー中なので、サスケの勝ち。
カカシ先生希望でしたら、すみません!

自分が好きだからサクラも好きだろうと考えるサスケは、随分としょってますね。(笑)
サスケが絵本好きだったら、可愛いかなぁと思いまして。
あとは、サクラの「慣れてる」発言が見所(?)だろうか。

長らくお待たせして申し訳ございませんでした。
78578HIT、夜町ちとせ様、有難うございました!


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