料理の鉄人


「だから、お前は好き嫌いが多すぎるんだって」
「・・・野菜なんて食べなくても、死なないってばよ。牛乳はちゃんと飲んでるしさ」
「馬鹿」
カカシはナルトの頭をぽかりと殴る。
「賞味期限の切れた牛乳なんて、何の役にも立たないぞ」
ナルトは瘤の出来た頭を抱えて、頬を膨らませた。

「サスケ、お前も一人暮らしだろ。普段、何食べてる?」
「サスケくんは肉も魚も野菜も、何でも食べるわよ」
何故か答えたのはサスケではなく、隣りに立つサクラだ。
カカシは訝しげに首を傾げる。

「何でサクラが知ってるんだ?」
「私が作ってるから」
サクラはにっこりと微笑んで言った。

 

 

「・・・へぇ。サクラがわざわざ料理を作りに来てるんだ」
「そうだ」
とげのあるカカシの声にも、サスケはどこか偉そうな態度で応える。
何か思惑があるわけでなく、元々の性格だ。
分かっていても、カカシとナルトはサスケに険しい視線を向けた。
ことの真意を確かめるためサスケ宅を訪れた二人だったが、サクラは彼らの緊張感に気づかずににこにこと笑っている。

「今日は二人もお客さんが増えて、腕が鳴るわぁ」
エプロン姿のサクラは弾んだ声で言うと、奥のキッチンへと消えていった。
残されたカカシ達は、どこか落ち着かない様子で椅子に腰掛ける。
サクラもサスケの家に招かれた客だというのに、どうしてか、新婚家庭に紛れ込んだような錯覚に陥っていた。

 

数十分後。
客間に次々と運ばれてくるサクラの料理を前に、カカシとナルトの顔色は見る間に悪くなる。

「あの、サクラ、これは・・・」
「ママレードの卵焼きv」
「これは」
「シナモン味の鳥のから揚げに、ウインナーのイチゴジャム煮に、コーンのおにぎりvv」
「・・・」
「沢山食べてねvv」

ためしに口に入れた料理は、想像をはるかに超えた味がした。
吐き出さずにすんだのは、奇跡といっていい。
三人の中でただ一人、平然とした顔で食べているのはサスケだ。
カカシとナルトは心底不思議そうな顔でサスケを見る。

 

 

「サスケ、『井村屋』の肉まん、どう思う?」
「美味い」
「じゃあ、『うさぎ屋』の弁当は」
「不味い」
正当な返事をするサスケに、二人は納得気味に頷く。
味覚がおかしいわけではないらしい。

「じゃあ、これは」
「美味い」
サクラの手料理の皿を持つカカシに、サスケは即答した。
カカシとナルトはそろって作り笑顔のまま凝固する。

 

「まだまだあるから、遠慮しないで食べてねー」

キッチンで何やら作業をしていたサクラは、新たな手料理を持って彼らのもとへやってきた。
黄緑色のその物体は、ナルト達にはどんな創作料理なのか見当もつかない。
また、訊くことすら恐ろしい。

「サスケくん、おかわりは?」
「ん」
もぐもぐと口を動かしているサスケは、いつのまにか空にした皿をサクラに手渡す。
嬉しそうなサクラは、青ざめた表情で自分達を見守る他の二人の姿は目に入っていなかった。


あとがき??
サブタイトルは、「愛は味覚をこえた」だろうか。
男子諸君は、彼女の料理がどんなに不味くても残したら駄目です。
ちなみに、サクラの創作料理は『ハチミツとクローバー』から。
妙な駄文ですみません・・・。


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