温泉へ行こう! 弐


7班が逗留している宿には、いくつかの内湯があった。
だが、サスケはその場所ではなく、わざわざ旅館の外に設けられた浴場へと向かう。
あのまま一人部屋で読書を続ける気にはなれず、されとてすることもなかったサスケは結局温泉に入る以外に道はなかった。
内湯を避けたのは、カカシやナルトに対する抵抗だ。

矢印の案内に従って進むと、10分ほどしてようやく露天風呂と藁葺き屋根の脱衣所が見え始める。
旅館内の内湯と比べ古びた感はあるが、それはそれで趣があった。
見ると、岩と湯気に遮られているが、浴場はなかなか広い。
衣類入れの籠の数から先客が一人いるようだったが、サスケの視界に入る場所にはいないようだ。

丁度良い温度の湯に、サスケは周りの風景を楽しみながら奥に進む。

 

「サスケくん!」

 

瞬間、サスケの身体の一切の動きが停止した。
聞き間違い、のはずだ。
そんなわけがないと言い聞かせながらも、サスケはゆっくりと声のした方角へ顔を向ける。

「こっちに来てたんだー」
ざばざばと湯をかき分け、嬉しそうにやってくるのは、間違いなくサクラだ。
「嬉しいーー」
「うわーーー!!」
サクラに抱きつかれ、ようやくサスケの頭が正常に動き出す。

「は、離れろ!」
無理に引きはがすと、サクラはあからさまに不満顔になる。
「どうして?」
「お前は女だろ!もっとたしなみってものをだな」
「別に。二人しかいないんだし」
うるさく言うサスケに、サクラはあっけらかんと返す。
あまりにサクラが平然としているものだから、サスケも二の句が告げない。

「私は大丈夫だよ」
サクラはにっと笑って言った。
こっちが大丈夫じゃないんだ、とは言えずに、サスケは黙り込む。
眼前には髪をまとめてアップにし、湯に浸かっていたことでほんのりと色づいた肌のサクラ。
サクラが身を離したのはいいが、うっかり目線を下げるとまずいことになる。
薄手のタオルで身体を隠しているとはいえ、サスケは目のやり場に困る情況だ。

「あっちの方に、打たせ湯があるのよ」
サスケの言葉は耳に入っていなかったようで、サクラはサスケの腕を引いて歩き出そうとする。
「分かった。行く。行くから手を離せ。それから俺の半径1m以内に近づくな」
「え、何で!?」
珍しく切羽詰ったような声を出すサスケに、サクラは驚いた声で訊ねる。
サスケはごく真面目な顔で返事をした。

「大変なことになるからだ」

 

 

その露天風呂は、旅館から距離があるせいかなかなか人が訪れない場所らしかった。
来たとしても、湯治客ではなく、地元の人間。
おかげでサスケ達は並んで湯に浸かり、悠々とバスタイムを楽しむことが出来た。

「内湯の方が混雑してたから、こっちに来たの。混浴だって聞いたけど、人は少ないらしいから」
サクラは先ほどから一人で話している。
思いがけないハプニングを楽しめるほど、サスケの方には余裕がなかった。
サスケがさりげなく距離を取ろうとしても、サクラは同じだけ付いてくるから変わらない。
普段は烏の行水であるサスケだが、すっかり湯からあがるタイミングを逃していた。
「カカシ先生が温泉に行くって言ったときはどうしようかと思ったけど、良かったかもね。温泉気持ちいいし」
サスケの気も知らず、サクラはのんびりとくつろいだ様子だ。

サクラはくるりとサスケに向き直る。
「またみんなで来たいね」
「・・・あいつらと行くのは止めた方がいいぞ」
「どうして?」
「どうしてもだ」
断定的に言われ、サクラは暫し考え込む。
サスケが額の汗をぬぐっていると、妙案が浮かんだらしく、サクラはぽんと手を叩いた。
「じゃあ、二人で来ようか」

にこにこ顔のサクラに対し、赤面するサスケ。
サスケの顔が耳まで赤かったのは、のぼせたせいだけではなかった。

 

 

「いいな。絶対にすぐに帰ってくるなよ。時間をあけろ」
「分かった」
真意は不明だが、サクラはサスケの言葉に素直に頷く。
サクラを旅館の自販機の前に残し、サスケは元いた部屋へと帰っていった。

「あ、戻ってきた」
扉を開けると、暇そうにTVを眺めていたナルトが振り返る。
「風呂に入ってきたのか」
「・・・ああ」
サスケの浴衣姿を見て訊ねたカカシに、サスケは素っ気なく返事をする。

「女湯の方は老人会の温泉ツアー客で一杯だったんだよ。サクラ、どこ行ったんだろうなぁ」
カカシはため息をつきながら頭をかく。
「お前、見なかったか?」
「知らない」
飄々とした顔で答えると、サスケは先ほど座っていた場所で読書を再開した。


あとがき??
川端康成の『伊豆の踊子』を思い出した・・・。(何故?)

同じような文章を昔書いた気がしますが、大目に見てください。(平伏)
サクラちゃんが妙にアバウトなのは、パパと年中一緒に風呂に入っているから、という裏設定があるのですが、ここで書いていてはあまり意味ない。
やっぱりサスサク(サクサス)は苦手だ。自分的にかなりのダメージ。ゲフッ。(吐血)
私はとことんカカサク人間。
もー、当分サスサクは書かないですわ。
というか、うちってサスサク好きーさん来てるんですかね??

サクラの肢体を見て踏みとどまれるとは、うちのサスケは克己心の強い奴らしいです。
でも、大変なことって・・・・。
サクラの問いに、サスケはなんて答えたんでしょうねぇ。(二人のみが知る)


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