温泉へ行こう! 壱


「はい。任務終了」

カカシのかけ声に、下忍達は皆一様にホッとした顔になる。
その日は珍しくも里の外に出ての任務だった。
早朝からの任務ということで、皆の顔には疲労の色が濃く出ている。
早く帰って休みたいという思いから、夕暮れの山道を歩く足取りも自然と速くなっていた。

「そっちじゃないよ。こっち」
「え?」
分かれ道を右に行こうとした下忍達を、カカシは引き留める。
「だって、里に帰るにはこっちの道よ」
サクラは怪訝な顔で右を指さす。
「里に帰るにはね」
カカシは意味深に笑って言った。

 

 

「いいのかしら」
眼前に並んだ会席料理を前に、サクラは困惑気味に呟く。
「いーの、いーの。ナルトが急に腹痛起こして帰れなくなったことにするから。な、ナルト」
「おーー」
躊躇するサクラとは反対に、ナルトはすでに豪華な料理に舌鼓を打っている。
腹痛が聞いて呆れる。
サクラはようやく諦め、箸に手を付けた。

7班が今いるのは高湯の里の玉ノ湯。
高湯の里は巷で広く知られる、温泉地だ。
任務的にはどう考えても日帰りできる距離なのだが、「せっかく温泉の近くに来たのだからちょっと羽を伸ばそう」というのがカカシの提案だった。
もちろん、料金は任務上での必要経費として捻出する。
そのあたりが生真面目なサクラが引っかかりを感じるところだ。
だが、賛成2(カカシ&ナルト)、反対1(サクラ)、どちらでもいい(サスケ)ということで、カカシの案は可決されてしまった。
サクラが譲らす質素な宿を選んだのだが、料理にこうも高価な食材が並んでは、あまり意味がないように思える。
サクラはため息をつきながら料理を口に運んだ。

 

「じゃあ、ちょっと行って来るわね」
サクラは洗面要具を手に、カカシ達に声をかける。
何といっても温泉地。
気持ちを切り替え、サクラは夕食後にさっそく湯へと向かうことにした。
「はいはい。いってらっしゃい」
返事をしたものの、カカシはTVから目を離さない。
サスケは黙って持参の本を読み、ナルトは満腹のために腹を上にして横になっている。

扉を閉めると同時に、サクラは鼻歌交じりに廊下を歩き出した。

「・・・さてと。じゃあ、行くか」
「おう!」
カカシの声に、それまで眠っているとばかり思っていたナルトが跳ね起きる。
そして二人は示し合わせたように、まっすぐに扉へと向かった。
「何だ。お前達も風呂に入るのか?」
サスケは本から目を離し、二人に訊ねる。
その割に、二人共タオルの一つも持っていないことにサスケは不審なものを感じた。

「いや。風呂場には行くけど、風呂には入らないよ」
振り返ったカカシは当然、というように言う。
意味が分からず、サスケは眉間に皺を寄せて二人を見た。
「温泉っていったら、ほら、あれだよ、あれ・・・」
「女湯を覗きに行くってばよ!」
遠回しな物言いをするカカシに続き、ナルトがあっさりと言った。

 

サクラが入っている女湯。
それを、二人は覗きに行くと言っている。

思わず立ち上がったサスケに、カカシはさも意外だという顔をする。
「あれ、お前も来るの?」
カカシはサスケを指差したまま訊ねる。
「サクラが気になるんだ」
「アホか!俺は行かん」

売り言葉に買い言葉。
ハッとなったサスケだが、カカシとナルトはにんまりと笑った。
「そうか、残念だなぁ。じゃあ、留守番しててね」
「まっ・・・」
「待て!」、と続くサスケの言葉を聞くことなく、二人は跡形もなく姿を消す。

 

二人を止めたとしても、サクラを意識してのことだと思われるのは癪に障る。
だが、現にサクラが入っていなければ、別段彼らの行動に口を挟まなかっただろう。
何とも面白くない気分でサスケはその場に佇んでいた。


あとがき??
温泉行きたい・・・。
という気持ちだけで書きました。
なんだかカカシ先生とナルト、親子みたいな。
どうしてサスサクになったんだろう。あれ?


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