サンタにプレゼント 1


「俺、行かないってばよ」

ナルトのその返答に、サクラは大きく目を見開いた。
頭の中が白くなってしまって、すぐに言葉が出てこない。
「・・・なんですって」
確認のために、もう一度聞き直す。
「だから、俺は行かないってばよ」
けろりとした顔で、ナルトはやはり同じ言葉を吐く。
思わずカッとなったサクラはナルトの胸ぐらをつかみ、大きく怒鳴り声をあげていた。
「理由を言いなさいよ!!」

 

騒ぎの事情はこうだ。
12月24日の、クリスマスイヴ。
その日も7班に簡単に任務が入っていたが、以降は彼らに任務予定はなかった。
よほどの緊急事態がないかぎり、新年まで仕事はない。
よって、サクラは24日の任務終了後に皆で温泉旅行に行く話を持ちかけたのだ。

サクラの手元には旅行用のパンフレットがずらりと並んでいる。
あとは旅行会社に電話するだけという手筈だ。
カカシとサスケに了承を受け、残るナルトに声をかけたとたん、思いがけず拒絶の返事が返ってきたというわけだった。

 

半ばサクラに首をしめられているような状況で、ナルトはうめくように声を出す。
「さ、サン・・・」
「何!聞こえないわよ!!!」
「サンタが来るから24日の夜は家にいないと駄目だってばよ!!」
いきり立つサクラに負けじと、ナルトも大きく声を張り上げた。
とたんに、ぽかんとした表情になるサクラ、その背後に立つカカシとサスケ。

「・・・え?」
「だから、サンタがプレゼント持ってきたときに、人がいなかったらそのまま帰っちゃうだろ」
「・・・・」
拍子抜けしたサクラは、そのまま掴んでいたナルトの服を離した。
先ほどとは違った意味で言葉が出ない。
ナルトのところにサンタがくるはずがないことは、他の三人は知っている。
それとも、ナルトのそばには、気を使って夜にプレゼントを届けるような、家族同然の人間がいたのだろうか。

 

「ナルト、お前、サンタなんて信じてるの?」
カカシの無神経な問い掛けにサクラは目をむいたが、ナルトはあっさりと返事をした。
「信じてるって?皆のところには、サンタ、来るんだろ」
「・・・」
どう返答したものか、サクラ達は押し黙った。

「俺のところさ、まだ一度もサンタ来てないんだよ。たぶん、道に迷ったとか、時間を間違えたとか、そんな理由だと思うけど。でも、今年こそは来るような気がするんだ。だから、家にいてあげないと、可哀相だし」
罪の無い笑顔でナルトは嬉しそうに言った。
三人は、何となく顔を見合わせて、罰の悪そうな顔をする。
「・・・何、どうしたの?」
「な、何でもないわよ。旅行の話はなかったことにするから。じゃあね」
慌てて言うと、サクラはその場から退散した。
2つ、3つ、旅行のパンフレットを散らばしながら。

「・・・怒っちゃったのかなぁ」
サクラの後ろ姿を見詰め、申し訳なさそうに頭をかくナルトにカカシは微笑んだ。
「いや、そんなことないと思うぞ」
やわらかなその笑顔に、ナルトも安心したように笑った。

 

 

イブ当日の夜。

サクラは荷物をリュックに入れ、窓から外に抜け出そうとしていた。
両親に気付かれないよう、靴を片手に。
クリスマスという行事のせいか、町は普段より賑わっているようだが、さすがに深夜ともなると通りを歩く人影は少ない。
吐く息の白さにサクラは一瞬戸惑ったような様子だったが、意を決して窓枠に足をかける。

「サクラ」

すぐ間近で聞こえた声。
突然の呼びかけに、サクラは叫び声をあげそうになるが、何とか留めた。
視界のすみに、知った顔を見つけたからだ。
サクラの部屋の向かいにある、大樹。
その先端の枝に、全く体重を感じさせずに、彼はいた。

「・・・カカシ先生、いつからそこに」
「ついさっき。そろそろサクラが出てくるころかなぁと思って」
カカシの服装は、赤地に白い飾りをつけた、独特の格好。
サンタクロースの衣装だ。
ご丁寧に帽子もかぶっている。
「あ、サクラのも用意しておいたから」
カカシは袋の中から取り出したものを、サクラに投げてよこした。
サクラが訝しげに中身を出すと、カカシとおそろいの衣装が出てきた。
作りは同じだが、サクラ用のものはスカートにアレンジされている。

「・・・別にここまですることないと思うけど」
「駄目駄目。やっぱり格好から入らないとね」

顔は笑顔だが、カカシの声には異を唱えることを許さない厳しさが含まれている。
サクラは何となく脱力してため息をついた。

 

 

「でも、カカシ先生、何で分かったの」
「そりゃー、サクラの考えてることくらい分かるよ」
「何で?」
「愛があるから」
「・・・・」

サクラが傍らのカカシを見ると、彼は相変わらずのにこにこ顔だ。
サンタ衣装のサクラにご満悦なのか、カカシは先ほどからずっと笑顔だ。
たんにペアルックなのを喜んでいるのかもしれない。

「まず、ここから近いサスケくんの家から行くからね。そのあとにナルトのところよ」
サクラは相手にする気が無いのか、あっさりと話題を変える。
「え、あいつのところにもプレゼント持ってくの?」
「そうよ。ナルトにだけあげて、サスケくんに持っていかないわけにいかないじゃない。同じ仲間なんだから」
「まぁ、そうだけど。あいつ、喜ぶ質かねぇ」
「サンタにプレゼントもらって、嬉しくない子なんていないわよ」

断定的に言うサクラにカカシは顔を綻ばせる。
「サクラは優しい子だね」
言いながら、サクラの頭をなでた。
「旅行の話だって、ナルトのために計画たててたんだろ」
「・・・・うん」
その温かな声音に、サクラは珍しく素直に頷く。

 

クリスマスを一人で過ごすであろうナルトのために、皆で旅行に行こうと思った。
サクラの家では毎年家族で盛大にクリスマスパーティーを開くことになっている。
ナルトをその場に呼んでもいいと思ったのだが、他人の家族の中で一人、よけいに気を使うかもしれない。
その妥協案が旅行だったのだ。
両親はサクラの不在にいろいろと言ってきたが、担任のカカシに仕事だと嘘をついてもらえばすむことだと思っていた。
それが、ナルトの言葉で全部計画倒れになってしまったのだ。
そして、せめてこっそりナルトのところにプレゼントを届けに行きたいというサクラの思いを、カカシは看破していたらしい。

本音を言うと、サクラはプレゼントを渡しに行くことを、当日まで迷っていた。
夜道が怖いということもある。
サスケはともかく、ナルトにばれることなく、プレゼントを置いて去ることができるのかというのも重要な点だ。

だが、カカシがいるというだけで、サクラは出掛けに窓で躊躇したような、心細さはどこかに吹き飛んでしまった。
口には出さないが、サクラはカカシが来てくれたことを、とても嬉しく感じていた。


あとがき??
ああー、果たして、24日までに完成するのか!(ごくり)
今、22日。毎日、なにげに外出の予定入ってるし。
続き、あんまり考えてないし。
・・・が、頑張ります。
間に合わなかったら、今月中に。(駄目人間)


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