正しい未来 U


「ナルト、最近様子が変じゃないか」
「あ、先生もやっぱりそう思う?」
カカシの耳打ちに、サクラも同意見だった。
元気がないというか、見るからに顔色が悪いというか。
病気なのではと思ったが、食事はちゃんと取っている。
そんなナルトを、カカシは何か大きな心配事があるのではないかと見ていた。

「何か思い当たる節はないか?」
任務の合間の休憩時間、一人もそもそとパンを食べるナルトを横目に、カカシはサクラに訊ねる。
「・・・・あるような、ないような」
サクラは曖昧に言葉を濁す。
サクラが思うに、ナルトの変調はあのカメラを持ってきた日から始まった。
しかし、それがどうしてナルトの心配事に繋がるのかが分からない。
「先生に任せておけ。任務の帰りにでも聞き出してみるから」
自信ありげに言ったカカシだったが、その方法はいやに原始的なものだった。

 

任務終了後、カカシに体術の技をかけられギブアップしたナルトは渋々ながらに全てを語った。

「・・・ベタな尋問」
一部始終を観ていたサクラは半ば呆れて呟く。
技を解くとの同時に倒れこんだナルトの傍らで、カカシは取り上げたカメラをしげしげと眺めている。
「身体に訊くのが一番でしょー。で、これが火影さまのところから盗んできたカメラか」
「違うよ。木ノ葉丸から借りたんだよ」
「一緒のことだよ」
カカシにやり込められ、ナルトは憮然とした表情で口をつぐむ。

「ははー。これは珍しいカメラだなぁ」
カカシは器用にカメラの蓋を開けて中の機器を見詰めていた。
「こ、壊さないでよ。今日木ノ葉丸に返そうと思って持ってきたんだから」
びくびくとして言うナルトに構わず、カカシは部品を詳しく調べていく。

 

たまに感心したように声をもらすカカシに、サクラは暗い顔で訊ねる。
「先生、もしかして私、死んじゃうの」
「・・・何でそう思う?」
カカシは振り向くことなく訊き返す。
「だって、未来を写すはずのカメラに姿が写らなかったなんて、それしか考えられないじゃない。ナルトもそう思ったから私から写真を隠したんでしょ」
図星を突かれ、ナルトは渋面を作った。

「んー、大丈夫だよ。サクラは将来格好良い上忍と結婚して幸せな家庭を作る運命って決まってるから。子供は3人くらいで赤い屋根の白い家で暮らすの。ペットに犬も沢山飼ってるよ」
「・・・・何、その具体的な予言は」
「えへへー。先生にも未来が見えるんだよ」
楽しげに笑うカカシに、サクラは怒りに顔を真っ赤にした。
「ちょっと先生、人が真剣に悩んでるのに、ふざけないでよ!」
がなり立てるサクラに、カカシは指で耳に栓をする。
「あー、分かった、分かった。じゃあ、種明かしするから見てよ」
カカシはカメラをナルト達に見え易いようにして指差す。

「このカメラは忍具の一つなんだよ。それで、このレンズが未来を写す源なんだけどね、それをフィルムに焼き付ける媒介はシャッターを切る人間のチャクラなの」
「へー」
「その人の負担にならない分を吸い取るから、まぁ、一人の人間が一日に一枚撮って限界って感じかな」
その言葉に、ナルトは弾かれたように顔を上げる。
「え!?それじゃあ」
「そう。ナルトのチャクラはサスケを撮った分で使い果たしてたんだよ。だから、サクラを写してもちゃんと写らなかったんだな。背景はかろうじて写ってたみたいだけど」

 

理由が分かれば、しごく単純なことだった。
「なんだー」
拍子抜けしたサクラはすぐに安堵の笑みを浮かべる。
「じゃあ、はい」
カカシは組み立て直したカメラをナルトに手渡す。
「ナルト、火影さまに黙っててやるからその前に俺のことも撮ってみてよ」
「うん。別にいいよ」
悩みが解決され、ナルトはお安い御用だとばかりにカメラを受け取る。

「ほら、サクラも一緒に」
「え、私はもういいわよ」
「そう言わずにさ」
カカシは嫌がるサクラの肩に手を回してにこにこ顔だ。
「撮るよ!!」
押し問答をする二人に、ナルトは早く済まそうとばかりに呼びかける。

 

「どんな絵が出てくるかなー」
緊張するサクラの隣で、カカシは浮かれた声を出す。
そして写真を見詰めていたナルトは瞬時に表情を曇らせた。
「え、何!!また何か変なものが写ってたの!それとも、太ってた!?」
「おい、何もったいぶってるんだよ」
写真を手に動きを止めたナルトに、サクラとカカシは同時に不満の声をあげる。
「駄目」
ナルトは最初にサクラの写真を撮ったときと全く同じ反応をした。
とっさにポケットに写真をいれようとしたが、相手は上忍だ。
いつのまにやらナルトはカカシに写真を奪われた。

「せ、先生、駄目だって!!」
必死に手を伸ばすナルトをかわし、カカシはじっくりと写真を眺める。
「・・・へぇ。なるほどね」
にやつくカカシに、どうしてかナルトはしかめ面をする。
「ちょっと、先生!私にも見せてよ!!」
懸命に腕を引くサクラに、カカシはにっこりと笑って言う。
「んー、5年くらいしたら見せてあげる」
「な、何よ、それーー!!!」
納得のいかないサクラは両手を上げてカカシの背を叩いた。

 

現実の世界では不満げなサクラと笑顔のカカシという図だった写真。
それが、未来の写真では二人は恋人同士のように仲良く手を繋いで写っていた。
カカシはあまり代わり映えしないが、数年後のサクラは綺麗な笑顔を浮かべている。

「大丈夫だよ。サクラ、凄く美人だから。これなら里の男は皆黙っていないね」
「なら何で見せないのよ!二人して本当のこと言いなさいよー!!」
「先生嬉しいなぁ。俺の予想、どうやら当たってるみたいよ」
カカシとサクラの会話はまるでかみ合っていない。
じゃれる二人を尻目に、ナルトは握り拳を作り心に固く誓った。

未来など絶対に変えてみせると。


あとがき??
すみません。わたくし、カカサク好きーなものでこんなオチに・・・。

これは、とあるサークルさんのペーパーを見て思いついた話。
そのカットがですね、7班の下忍達の未来予想図だったのですよ。
みんな、格好良く可愛くて。ラブリーvvv
こんな風に未来を写すカメラがあればいいなぁと思いまして。
発想飛躍させすぎたか・・・。

カカシ先生の「えへへー」笑いは『トリック』の奈緒子(&母)の笑い方と一緒。1の方ね。


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