桜ん坊 ⅰ
早朝の公園。
そこが今日の７班の集合場所だったが、例のごとくカカシの姿は見えず、ナルトもまだ到着していない。「暑いわね・・・」
朝方からすでに強い日差しが照りつけ、日中の高温を予測させる太陽がギラギラと輝いている。
日焼け止めクリームを塗ってきたサクラだが、一度では足りないかもしれない。
木陰のベンチにいるとはいえ、サクラは肌を気にして不機嫌な顔つきだ。「・・・・来たみたいだぞ」
ふいに首を回らせたサスケはサクラに一声かける。
続いて聞こえてきた、元気のよい声。
「サクラちゃーん、おはよーーー」
サクラが振り向くのと同時に、駆けてきたナルトが目の前ですっころんだ。
その拍子にナルトが持っていたコップが手からすり抜け、ベンチに座っていたサクラが中身を頭からかぶる結果となってしまった。
一瞬にして濡れ鼠になったサクラは唖然としてしまって声も出ない。
「・・・・あ、ご、ごめん」
慌てて起きあがったナルトは震える声で謝罪する。鞄から取り出したタオルでナルトは急いでサクラの頭を拭き始めた。
「・・・・・ナルト、あんたこのタオルいつ洗濯した」
サクラのどすの利いた声に、ナルトはぎくりと動きを止める。
「・・・・に、二週間前」
ナルトが答えるのと同時に、サクラはナルトを突き飛ばした。
「大馬鹿――――！！！！」
その剣幕に、様子を傍観していたサスケは驚きに目を見張り、ナルトは思わず頭を抱えてうずくまっていた。
「・・・で、中身は何だったのよ」
いまだ怒りさめやらぬ様子でサクラは訊ねる。
水飲み場で髪を簡単に洗ったとはいえ、まだべたべたとしているような気がする。
おまけに少し口に入ってしまった。
酸味の利いた口当たりはジュース等の飲料水では有り得ない。「えーと、よく分からないけどカカシ先生が今日の任務で使うから持っていけって」
「カカシ先生が？」
サクラは首を傾げる。
「あんた、どこで先生に会ったのよ」
「この先の道。すぐに行くから集合場所で待ってろって・・・・・、サクラちゃん！？」
言葉の途中で、ナルトはサクラの異変に気付いた。
それまで平然としてサクラが、真っ青な顔で俯いている。
「・・・気持ち悪い」「サクラ」
傍らにいたサスケが心配そうに呼びかけたが、サクラは返事を返さない。
口元に手を当てていたサクラは、立っていることも出来ずに座り込んだ。
「ナルト、医療班を呼べ！」
おろおろとしていたナルトはサスケの一喝に我に返る。
先ほどまでぴんぴんとしていたサクラの突然の変調は、あの液体に何か劇物が入っていたとしか思えない。サスケの指示通り駆け出そうとしたナルトだが、その足を止めたのはサスケの叫び声だ。
「え、な、何！？」
驚いて振り向いたナルトだが、その瞬間に目が点になる。
サスケが驚愕の表情で固まっていたが、ナルトは自分も似たような顔をしているのだという自覚はあった。
「おまたせーーー」
カカシがようやく公園に到着したのは、１時間ほど後のこと。
見るとナルトとサスケが仲良く並んでベンチに腰掛けている。
珍しいこともあるものだとカカシは思った。
それに、サクラの姿がカカシの視界に入る範囲ではいない。「サクラは？」
カカシの問い掛けに、ナルトは無言で隣りを指差す。
サスケの膝の上に、見慣れない子供がちょこんと座っている。
年齢は３，４歳だろうか。
カカシを見上げてにこにこと笑う少女に、カカシも自然と笑顔を返した。「可愛い子だなぁ。で、サクラはどこだよ」
「だから、ここだって言ってるじゃないか！！！」
ナルトはいきり立った様子でベンチから立ち上がる。
「え？」
「この子供がサクラちゃんなんだって！先生に渡された妙な液体を頭からかぶったら、ああなっちゃたんだよ。どうにかしてよ！」
理解できないカカシに、ナルトは逆ギレをして状況を説明する。
もとはと言えば自分がそれをサクラにかけた張本人なのだが、ナルトはそのことをすっかり忘れているようだ。
「あー、あれ。それで縮んじゃったのかー。狐になったり小さくなったり、忙しい子だね」
「カカシ先生、サクラちゃん元に戻るの？」
「何でサクラはサスケの膝の上にいるんだ」
カカシはナルトをすっかり無視して、サクラと視線を合わすようにしゃがみ込む。
「・・・・・離れないんだ」
サスケはサクラを見詰め、困惑気味な顔をして答える。
対照的に、サクラはサスケの手を握ってご満悦な様子だ。
「小さくなっても、好みの男のタイプは変わらないのね・・・・」
カカシは多少ガッカリとした声音で呟いた。
あとがき？？
１月に行った投票の結果駄文を今ごろアップだなんて・・・。本当にすみません。（汗）
これ終わったら、また投票ランキング設置したいですね。『狐の怪』の続きなんだけれども、続きっぽくないです。
一応、同じサクラ変身シリーズ（？）なんですけど。
ナルサクというより、７班の話になりそうな。
・・・・あれ、サスサクっぽい？（不本意）サクラの服は身体がちっちゃくなったのでぶかぶか状態です。ハハ。記憶も子供時代にさかのぼってる。
続きの展開、全然考えてないわ。（困）
何とかナルサクに、ナルサクに、ナルサクに・・・・。（呪文）