白雪姫の林檎 2


その昔、見目麗しい白雪姫は、美貌を妬んだ継母によって命を狙われた。
最終的に、白雪姫は毒リンゴによって命を奪われる。
ただの童話だと思われていたその話は実話で、しかもそのとき白雪姫が食べたリンゴの種でできたのが、この園内にあるリンゴの木なのだという。

 

「不思議なことに、男が食べるとめっぽう美味いと感じるリンゴなんだけど、女が食べると毒にあてられて死んじゃうんだ」
田子作はリンゴの一つを手に持ちカカシ達に説明する。
「危険な実だから、市場には出回ってないんだよ。ごく身内の者が食べるだけで・・・」
「そんなこと、もうどうだっていいよ!!」
ナルトは泣きながら田子作の言葉を遮る。

「サクラちゃん・・・」
冷たくなったサクラの手を握り、ナルトは嗚咽を漏らした。
つい先ほどまで、元気に歩いていたのが嘘のようだ。
カカシとサスケも、沈痛な面持ちで俯いている。

 

「あの・・・・」
悲しみにつつまれた空気に、田子作はひどく言いにくそうに話を切り出す。
「彼女、生き返る方法あるんだけど」
「「「・・・ええ!!?」」」
同時に声をあげた彼らに、田子作は多少びくついて後退った。

「なんです、その方法って!!」
詰め寄るカカシに、田子作はまごつきながら声を出す。
「物語の中で、白雪姫は生き返ったでしょ。その方法は何だったか、覚えてます?」
「・・・・」
腕組みをしたナルトは、次の瞬間に、パチリと指を鳴らした。
「王子様のキス」
「そのとおり」
ご名答、とばかりに、田子作はにっこりと微笑む。

 

「つまり、王子様のキスがあればサクラは目覚めると」
「そう。毒が浄化されるんだ」
「男なら誰でもいいの?」
「んー。基本的にはそうだけど、彼女を心から大切に想ってる男じゃないと駄目だよ」
「って、おい!!」
田子作の言葉を聞くなりサクラに唇を寄せたカカシを、危ういところでサスケが制する。

「何やってるんだ、お前は!」
「だって、条件に見合うのって俺くらいじゃん」
「俺、俺!!!」
サスケとカカシの会話にナルトも乱入してくる。

もめにもめた三人の討論は、なかなか結論が出ない。
その間、サクラは仮死状態のまま放っておかれている。
見かねた田子作が、ある物を彼らに差し出して言った。

「これで誰にするか決めたらどうだろうか・・・」

 

 

 

「11番」
田子作の読み上げた番号に、カカシは目を輝かせ、ナルトは肩を落とす。
「リーーーチ!!」
「くそー!」
数字の書かれた紙を手に、ナルトはしきりに悔しがっている。

これはビンゴゲームで遊んでいるわけではなく、サクラの王子様を決める正当な勝負だ。
上忍と下忍の力の隔たりも、このゲームでは関係ない。
ちなみに、普段からサクラに冷たく当たっているサスケは王子不的確とされ、最初からゲームに参加していない。
また、サスケにその意志もないようだった。

 

「やったーー!!ビンゴ!」
カカシの雄叫びと共に、ついに勝敗が決まった。
運に見離されたナルトは涙ながらに地面を叩いている。
知らぬ者が見たら、どんな金銀財宝が賭けられた勝負だったのかと思うことだろう。

「サクラ・・・・、あれ?」
嬉々とした顔で振り向いたカカシだが、リンゴの木にもたれていたサクラがいない。
もちろん彼女が一人で歩けるはずもなく、カカシはきょろきょろと辺りを見回した。
「そういえば、サスケは」
「さっきまでそこにいたけどな」
訊ねるナルトに、田子作も首を傾げて周りを見る。

 

「カカシ先生、ナルトーー」

高らかなその声に、二人はぎょっとして振り返った。
木々の間を、手を振りながら駆けてくるのは、間違いなくサクラだ。
「ごめんなさい。私が居眠りしている間に作業終わっちゃったのね」
「サクラ!?」
「サクラちゃん!?」
大きな声で呼び掛けるカカシとナルトに、サクラは驚いて目を瞬かせる。

「な、何よ」
「体、体の調子はどうだ!」
「・・・別に、普通だけど」
カカシの問い掛けに、サクラは訝しげに答える。
肌の血色も良く、先ほどまでの死相は見る影もない。
良かった、と安堵するのも束の間、カカシとナルトは顔を見合わせてからサクラを見た。

「サクラ、サスケ見なかった?」
「先に帰ったわよ。先生に伝えておいてくれって言われたんだけど」
そこまで言うと、サクラは急に表情を曇らせる。
「サスケくん顔が赤かったわ。熱でもあったのかしら・・・・」
心配そうに呟くサクラをよそに、話を聞き終えた二人はようやく全ての状況を察した。

 

「あの抜け駆け野郎!!」
「逃げやがった!」
怒りに燃えるカカシとナルトを見詰め、サクラは不思議そうに首を傾けていた。


あとがき??
王子サスケ、逃亡。(笑)私のサスケのイメージそのまんま。
彼って、最後においしいところだけ持っていくような気がしません?

サクラが目覚めた具体的な場面はパス。うち、一応カカサクサイトなので。(笑)
サスケは嫌いじゃないけど、全然私の思い通りに動いてくれないので苦手。ナルトと正反対。
どうしてサスサク気味になったのかは、私にも分かりません。
サスサクは書こうと思って書くより、自然にそうなってしまったということが多いです。

この話、カカシ先生とナルトが哀れすぎる・・・・。
勝負に夢中でサクラから目を離したのが敗因ですな。
それにしても、何故にビンゴ!!田子作さん、どこに持っていたんだ。


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