結婚式の夜


「サクラちゃん、綺麗だったな・・・」
「そうだな」
しんみりと呟くナルトに、サスケが相槌を打つ。
今日は彼らと同じ班だった仲間の結婚式があった。
披露宴と二次会に出席した後、帰路につく二人の足取りはどことなく重い。

「でもさぁ、カカシ先生の燕尾服、すっげー似合ってなかったよな」
「本当にな」
「先生は派手な挙式を嫌がったらしいけど、サクラちゃんに泣かれて折れたらしいよ」
その光景を想像したのか、ナルトは苦笑して話を続ける。
「もう尻に敷かれてる感じだよなぁ」

 

カカシには災難だったが、式と披露宴はサクラが泣いて訴えただけ価値はあった。
純白のドレスを着た初々しい花嫁。
その眩いばかりの笑顔は、参列者の記憶に鮮明に残った。

良かったと思う反面、長年彼女に思いを寄せていたナルトは複雑な気持ちだ。
ナルトはこの日、もやもやとしたものをずっと胸の内に抱えていたが、傍らのサスケは式の間も平然としていた。
他人事ながら、感極まって涙したナルトとは対照的だ。

 

「お前さ、本当はサクラちゃんのこと好きだったんだろ」
「ああ」
思いがけずあっさりと肯定したサスケに、ナルトは目を丸くする。

自分を凝視するナルトに気付き、サスケは不機嫌そうな顔になった。
「なんだよ」
「いや。何だか、素直だなぁと思って」
「もう意地を張ったって仕方がないだろ」
ふいと顔を背けたサスケに、ナルトは小さくため息をつく。
「・・・・まぁね」

 

 

何となく無言で歩みを進めていた二人だが、先に口を開いたのは、やはりよく喋るナルトだ。
自分の中にある嫌な感情を、誰にでも良いから吐露したい気持ちだった。

「お前は、こう、何か嫌な気持ちとかないの?」
胸に手を置きながらジェスチャー付きで話すナルトに、サスケは首を傾げる。
「何で」
「だって、サクラちゃんは他の男と結婚しちゃったんだよ。ほら、サクラちゃん昔はお前を好きだったんだし・・・」
段々と口籠もるナルトに、サスケは少しだけ俯く。
何か思い詰めているような表情をしたサスケに、ナルトは少しだけ心配になったが、それは杞憂だった。

 

「別に、サクラが誰と一緒になろうと構わない。サクラが笑うことのできる環境にいるなら、俺は・・・」
サスケの言葉はそこで途切れ、歩調も緩やかになる。
脳裏を過ぎったのは、カカシの傍らに立つドレス姿のサクラ。
喜びの涙が目尻に溜り、世界中の幸福が彼女に訪れたような顔をしていた。
「俺は、それでいいと思っている」

まるで澱みのない声に、ナルトは目の覚めるような気持ちになった。
今日のサクラは、心から幸せそうで、何の不安も感じさせない。
サクラのことを本当に想うのなら、それ以上に望むことはないはずだ。

「・・・何か、お前大人だなぁ」
「お前が子供すぎるんだ」
そっけない物言いに、ナルトは頬を膨らませる。
そうした動作が子供っぽいと言われる所以なのだが、本人は気付いていない。

 

 

「よーし、今夜は飲み明かそうぜ!!」
「嫌だ」
勢い込んだナルトは、サスケの即答に転びそうになる。
「な、何でだよ!」
「お前、酒飲むとすぐに寝るだろ。酔っ払いを家まで抱えて帰るのはごめんだ」
「そう固いこと言うなよ」
「ひっぱるな!!」

そのまま二人はもめながら歩いていたが、大通りに差し掛かったときにナルトの持っていた紙袋が突然破け、中身が飛び出した。
「ああーー!」
ケーキなどのお菓子類はともかく、皿等は確実に割れた音がした。
泣きそうな顔で散らばった物を拾うナルトに、サスケは深々と嘆息する。
周りを歩く人の目もあり、しょうがなくナルトと共にしゃがみ込んだサスケは、引き出物とは関係ない大きな封筒を見付けた。

「何だ、これ?」
「ああ、カカシ先生がくれたんだよ。よく分からないけど、もう使わないからって。これがサスケの分」
ナルトは二つあった封筒の片方をサスケに渡す。
のり付けしていないそれは簡単に開封でき、中身を覗いた二人は同時に固まった。
一陣の風が吹き、足下の枯れ葉がカサカサと音を立てて舞う。

 

「・・・・やっぱり、あの馬鹿を一発ぶん殴るか」
サスケの提案に、ナルトはゆっくりと首を縦に動かす。
封筒の中には、カカシの愛読書である18禁本がぎっしりと詰め込まれていた。


あとがき??
カカシ先生とサクラを登場させず、ナルトとサスケの会話だけで二人の存在を匂わせたかったのですが、どうでしょう。(笑)
サスケ、格好良いよ。この話は、何となくサスケを書きたくて出来た。
思いを貫くのも愛だけれど、一歩引いて見守るのも、また愛。
最後のアレはカカシ先生の嫌がらせ(ゴホゴホ)・・・・いえ、思いやりです。
アレの重みで、紙袋が破れた。

普通に終わらせた方が良かったかなぁ。
どうしてもオチを付けたくなる性分。笑いの神様(?)が私に微笑む。(詩人)
二人が未成年ということは忘れてください。(たぶん18禁本も見ちゃ駄目な年齢)
私、ナルトとサスケしか登場しない話って初めて書いたのですが、なかなか面白かった。意外!
また書きたいかも。(←サスナル発言?)

続き、というか「そのときカカシ先生とサクラは!?」って話も書きたいなぁ。(笑)
やっぱりお笑い方向で。


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