喫茶店へ行こう!
「俺、客商売は苦手だってばよ」
「・・・・誰にためにやると思ってるのよ」
サクラは怒りを滲ませた声でナルトを睨み付ける。
その日の7班の仕事は、喫茶店の運営。
一つの店を7班の彼らだけで切り盛りしなければならない。
一週間限定喫茶店「7班」の、今日は初日だ。
これは火影を通しての正式な依頼ではなく、アルバイトのようなもの。
彼らがそのような副業をしなければならなくなった理由は、ナルトにあった。「あんたが依頼主の家で高価な壺を割ったりしなければ、私たちが尻ぬぐいしなくてもすんだのよ!!」
「同じ班のメンバーは、一蓮托生だってばよ」
「お馬鹿なくせに、難しい言葉使ってるんじゃないわよ!!!」
サクラはカカシやサスケの目があることも忘れて、ナルトの頭をぽかぽかと叩いている。「おーい。早く制服着て始めるぞー」
カカシは用具が入ったダンボールを開きながらナルト達に声をかけた。
「・・・・・これ、着るの」
「そー。先生が発注したんだ。可愛いだろーーvv」
「冗談じゃないわよ!!!」
サクラはひらひらレースの飾りが付いたウェイトレス衣装をカカシに投げつける。
「私は露出狂じゃないのよ!」下着が見えるか見えないかというギリギリのスカートに、胸元が大きく開いて布地の部分が少ない、きわめて目のやり場に困る衣装。
それが、喫茶「7班」の女子用制服だ。
「サクラ、似合うと思うけど」
「何だか、もう・・・」
頭を抱えると、サクラは脱力して床に座り込む。
朝から怒鳴り声をあげすぎて、開店前からサクラは疲労困憊だった。
「先生、どうどうー?」
「おー、ナルト、なかなかいいぞv」
「え!」
サクラが振り返ると、変化の術で女子の姿になったナルトがウェイトレスの衣装を着てクルリと一回転している。
髪をツインテールにしたスタイル抜群の女子ナルトには、衣装がよく似合っていた。
「あ、サスケもこれ着てね」
「・・・・・」
サスケは今にも死にそうな顔をしてレースの衣装を睨んでいる。「命令だから」
にっこり笑ったカカシの言葉に、逆らえる下忍はいない。
サクラの妥協案はただ一つ。
制服の上に何か羽織ることだった。
「い、いらっしゃいませ」
扉を開けるなり、目の覚めるような美女に迎えられた男性客二人組は、ぽかんとした顔で立ち止まった。
黒髪のウェイトレスは、楚々とした気品を持つ和風美人だ。
多少顔が引きつっているような気がするが、傾国の美貌を前にそんなことは全然気にならない。
座席に案内されたあとも、彼らは大きく口を開けて彼女を目で追う。「平常心・・・平常心・・・・・。先祖に顔向けが・・・・・」
客のいないところでぶつぶつと独り言を繰り返すサスケに、サクラは思わず目頭を押さえた。
彼が並々ならぬプライドの持ち主であることを知っているサクラには、今の彼の姿は不憫でならない。
あのサスケが、美女に変化し、できわどい服装をして客にこびを売っている。
彼の精神はずたずたに傷ついていることだろう。対して。
「いらっしゃいませ、3名様ですか〜〜vv」
客商売が苦手だと言ったことをすっかり忘れ、ナルトは嬉々とした表情で客の相手をしている。
「ご指名、ありますか〜」
「・・・え?」
「あ、間違えた。お煙草お吸いになりますか〜」
注文を受けたナルトは水を得た魚のようにすいすいと店内を動き回っている。
男性客の評判も上々らしく、天職のようだ。
しかし、ナルトが男だと知らずに浮かれている客達に、サクラはやはり哀れなものを感じる。
キッチンにいるカカシは、一人調理役として腕をふるっていた。
彼の料理の腕が思いのほか良かったのは、サクラには意外なことだ。
レジ打ちと閉店後の売上計算はサクラが一手に引き受け、喫茶「7班」はなかなか評判のいい店だった。
わざわざ彼らのことを知る者がいない隣町まで来て店を出したかいがある。
そんなこんなで、壺の弁償代金以上の売り上げをたたき出した喫茶「7班」は、人々に惜しまれながらも定められた期限どおりに閉店することになった。
顔色の冴えないサスケを見詰め、サクラは彼の精神が崩壊する前に終わったことに、心から安堵する。
「もうちょっと続けても良かったってばよ〜」
という、ナルトの声は聞こえないことにした。
どうやら女子ナルトのファンにいろいろと差し入れをもらい、味をしめたらしい。
これが火影を目指す少年かと思うと、サクラはほとほと情けなくなる。
何にせよ、今日でこの馬鹿げた仕事が終わるのかと思うと、せいせいしたという心持ちだった。
その日一日で閉店ということもあり、客足はそれまでの2倍に増えた。
ランチタイムになると、店はいよいよ混雑の極みになる。「有難うございました〜」
レジにいるサクラは、愛想良くおつりの金を客に手渡す。
そのまま手を引こうとすると、サクラは客の少年によって手首を掴まれた。
突然のことに、サクラは目を丸くして客を見る。
「あの?」
「あっちの二人の女の子もいいけど、君も可愛いよね」
「・・・・はぁ」にやにやと笑う客に、サクラは不快な気持ちで眉を寄せた。
早く手を離して欲しかったのだが、相手にその意思は感じられない。
「そーそー。俺も前から見てたんだ。この店終わったら時間ある?」
サクラの姿を盗み見していた何人かの少年が集まり、サクラの困惑は深まるばかりだった。
今までナルトかサスケがサクラに近づく客をさり気なく牽制していたのだが、最終日の今日になって気のゆるみがでたらしい。
サクラの危機に二人はまだ気付いていない。「どっか遊びに行こうよ。今からでもいいや」
「ちょ、ちょっと。困ります!」
レジの場所から引っ張り出されたサクラは、彼らをはり倒したい気持ちを何とか抑えていた。
最終日ということもあり、ここまできてもめ事を起こしたくない。
さらに、どんなにいけ好かない相手でも、彼らは大事なお客様なのだ。「そう固いこと言わないでさ」
なんとか穏便にことをすまそうと思っていたサクラだが、少年の一人に尻を撫でられ、堪忍袋の緒がぶち切れる。
サクラに触った少年は、次の瞬間には店の外へと叩き出されていた。
だが、やったのはサクラではない。
そのような豪快な真似ができるのは、7班で唯一の大人である上忍。「困りますね、お客さん。うちはお触り禁止なんですよ。そーゆーことは、別の店でしてください」
カカシはサクラの肩を抱いて啖呵を切った。
白いエプロン姿で片手に包丁を持つカカシは、今まさに調理の途中、といった様相だ。
その包丁をちらつかせてすごむカカシに、サクラにちょっかいを出していた客達はちりぢりになる。
ただ一人残ったのは、腰を抜かして動けないでいる、サクラの尻を撫でた少年だ。「これは俺専用の尻なんだよ」
一瞥すると、カカシは捨て台詞と共に乱暴に扉を閉めた。
「カ、カカシ先生、どうして?」
店に戻ると、サクラは戸惑いながらカカシに訊ねる。
距離的にカカシは一番サクラと離れたところにいた。
さらに、レジはキッチンからは全く目の届かない場所にある。
「ああ、あれだよ」
カカシはレジの後ろにある植木の鉢を指し示した。
そこには注意して見ないと分からない小型カメラが設置してあり、サクラも言われるまで全く気付かなかった。「これでね、キッチンにいてもサクラが何してるかすぐ分かるようになってたんだ」
「・・・・女子更衣室とかには、カメラ置いてないわよね」
「・・・・・ないよ」
用心深く訊ねたサクラに、カカシは目線をそらしながら答えた。
その微妙な間が、サクラは非常に気になる。
「カカシ先生。何か、キッチンの方から煙りが出てるんだけど」
サクラが不審げにカカシを見つめていると、ナルトが大慌てで知らせに来た。
カカシは腕組みをしつつ暫く考える。
「・・・・あー、そうか」
カカシがのんびり呟くのと、キッチンで爆発音がしたのは、全く同時だった。
「ガス台の火、付けたままだった」
「ううっ。どうしてこんなことに・・・」
「まぁまぁ。7班の仲間は一蓮托生ってことで」
「元凶がしゃあしゃあと、何言ってるのよ!!!」
サクラは瞳に涙をためたままカカシを怒鳴りつける。借りていた店舗の修理費のため、7班は再びアルバイトをすることになった。
しかも、今度は長期の1ヶ月。
通常の任務をこなしつつの、副業だ。
「次は何しようかー」
「・・・・ウェイトレス以外なら、何でもいい」
結構楽しんでいる風のナルトに、サスケはげんなりとした声で言った。
あとがき??
私も行きたいです!!!喫茶「7班」!!
下忍達のキュートなひらひら衣装が見たい!!
カカシ先生に脅されようとも、サクラをデートに誘います!(笑)
そして、カカシ先生専用(らしい)尻にも触りたいです。
何よりも、美女サスケを見たい。前から書きたかったネタなんですが・・・・何だか書くうちに予定と全く違う展開になった。
元ネタは・・・『神様がいっぴき』かな。
6万打記念お持ち帰り駄文・・・・。
7班総出演がいいと思って書いたのですが、珍品になってしまって、すみません。(涙)