サクラ・マニア
「何だか、最近変なのよ」
「変って?」
「ずっと誰かの視線を感じるっていうか。道を歩いてると、全然知らない人に握手を求められたり・・・・」サクラは思いつめた表情でいのに悩み事を打ち明ける。
だが、そのとき花屋の店番をしていたいのは「気のせいじゃないのー」と適当な返事をしただけだった。
いのが真剣にサクラの話に耳を傾け始めたのは、その日の夕方、ヒナタに電話をもらってからだ。「サクラ、大至急うちに来て!!!」
緊急の呼び出しに、サクラは何事かといのの家に向かった。
案内されたのは、いのの父の書斎。
そこには、真新しいパソコンが置かれている。「ヒナタがパソコンおたくのシノから話を聞いたらしいんだけど。そんなことより、まずこれを見てよ!」
なにやら興奮している様子のいのは、キーボードを操り、ひとつのホームページをサクラに見せる。
『ROOM・S』
このサイト名に、サクラは見覚えがない。「これが何?」
「とにかく、入るわよ」
言いながら、いのは『enter』ボタンをクリックする。
そして現れた画像に、サクラは後方へと転倒した。何かの見間違いかとサクラは目をこすりながら画面に顔を近づけたが、TOP画像は確かにサクラ自身の写真だった。
「え、何?何なの、ちょっと」
扉を開けると同時に強引に家の中にあがりこんできたサクラといのに、カカシは戸惑いを隠せない。
だが、二人はカカシにかまうことなく、目を皿のようにして周囲を見回していた。「あったわ!!」
いのはカカシの部屋でパソコンを見つけるなり、大きく声をあげる。
振り返ったサクラは、怒りの形相でカカシを睨み付けた。
「・・・やっぱりカカシ先生だったのね」
「何のことだよ」あくまで白を切るカカシに、サクラ達はネットを繋ぎ、先ほどのホームページをカカシに見せる。
そこは、サクラの私生活を写真入りで紹介するページだった。
ちなみに最も新しい更新日時は一昨日。
明らかに隠し撮りと分かる、目線の合っていないサクラの写真の横に『今日は寝坊をしたようだ。寝癖の残る髪もまた可愛いv』とコメントも載っている。さらにあざといのは、画像の周りにちりばめられた広告スイッチだ。
クリックすると、いくらかのギャラがホームページの管理人の懐に入る。
このサイトが一日に10万HITというから、驚きだ。
“隠し部屋”と明記してあるところにどんな画像があるか、サクラは想像するだけで怖い。
「さっさと白状してよ!こんなに私の行動を細かく知ってるなんて、同じ班の人間が犯人としか考えられないじゃない!!!」
「って、何で俺だと思うのさ!!ナルトかサスケかもしれないだろ!」
「ナルトの家は貧乏だからパソコンなんてないのよ!それに、サスケくんがこんなことするはずないでしょ!!」
「そんなこと言ったって、俺がやったっていう証拠を見せろよ」カカシが反論したそばから、隣の部屋にいたいのがおずおずと二人に声をかける。
「・・・サクラ、こんなもの見つけたんだけど」
「あ、それは!!」『サクラ観察日記 Ver.3』
表題のとおり、そのアルバムはデジカメで撮影したと思われるサクラの写真でぎっしりだ。
走り書きしてあるメモも、ホームページのものと似通っている。「・・・カカシ先生」
「そ、それは自分用だ!他の人間になんて見せてないぞ」
「点火」
サクラは問答無用とばかりに手にしたライターを着火し、アルバムへと向ける。
「あああーーー!!!!」
「サスケ、お前最近羽振りがいいよなぁ・・・」
ナルトは羨ましそうにサスケの足元を見やる。
新品のスニーカーは、ナルトが三ヶ月お菓子を買わずに貯めたお金と同等の値段だ。
「まぁな。臨時収入があったんだ」
「ふーん」買い物帰りにサスケを見つけたナルトが引き止めたのだが、サスケはそわそわと落ち着かない様子だった。
ナルトは怪訝な顔でサスケを見る。
「で、何をそんなに急いでるんだよ」
「今日はホームページの更新の日なんだ」
あとがき??
『ROOM・S』の『S』はSAKURAではなく、SASUKEの『S』です。(笑)
はい、元ネタは羽海野チカ先生の『ハチミツとクローバー』の第二話。
うちのギャグって、サスケをオチに持ってくるとしっくりとする気がします。
というか、書いていて楽しい。(^_^;)サスケファンの皆様、ごめんなさい。うちの坊ちゃんはこんな人。
しかし『サクラ観察日記 Ver.3』ってことは、1と2もどこかに・・・。これが7万打お持ち帰り用駄文・・・。
6万打用の『喫茶店へ行こう!』と同じノリにしようとしたんですが、全然違ってしまった。