正義の味方


産婦人科医院の門を潜ったところで、サクラはばったりと出くわした。
ポケットに手を突っ込み、ぶらついて歩くナルトに。
なるべく知り合いに会わないようにと、わざわざ隣町までやってきたサクラにしてみれば、まさに青天の霹靂だ。

驚いたのはナルトも同様で、ナルトは目を丸くしたまま病院の外観を見やる。
「・・・体の調子、悪いの」
ナルトの問い掛けに、青い顔をしたサクラはただ呆然とナルトの顔を見詰め返した。

 

 

「へぇ、おめでとう。良かったねぇ」
サクラの懐妊を知ったナルトは、素直に祝いの言葉を口にした。
我がことのように喜ぶナルトを前に、サクラの顔色はどうも冴えない。
近くの茶店に入った二人だが、運ばれてきた紅茶にもサクラは手を付けていなかった。

「お願い。誰にも言わないで」
俯いたままのサクラは、暗い声で呟いた。
ナルトは何を言われたか分からず、ぽかんとした顔になる。

「・・・カカシ先生には、もう知らせたんだよね」
「言ってないわよ。言ってたら、こんな辺鄙な病院に来てないわよ」
サクラは怒っているのか泣いているのか分からない声で答えた。

「何で?きっと喜ぶのに」
「分からないじゃないの。結婚してるわけじゃないし、邪魔だって思うかもしれないわ。お互いに仕事もあるし」
サクラは膝の上にある手をぎゅっと握り締める。
「少しでも嫌そうな顔されたら、きっと私、死んじゃうもの」
「・・・・」
興奮気味のサクラの感情を逆撫でしないよう、ナルトは無言を通した。

カカシがサクラを大事にしているのは、見ていればすぐ分かることだ。
子供が出来て、喜びこそすれ、邪険にするはずがない。
だが、それでもサクラは不安らしい。
はたから見ているのと、当事者では違うものかとナルトは思う。

 

「あのさ、あれこれ考えるよりまず先生にうち明けなよ。大丈夫だから。俺が保証する」
「・・・・でも」
「じゃあ、言い方を変えよう」
思い詰めた顔をしているサクラに、ナルトは身を乗り出して顔を近づける。

「何があっても、俺はずっとサクラちゃんの味方だから、心配しなくて大丈夫だよ」
「・・・・味方?」
ようやく顔を上げたサクラに、ナルトはしっかりと頷く。
「里の人間全員、火影、五影。その全部が敵に回ったとしても、サクラちゃんのためなら俺は闘う。だからさ、サクラちゃんはそんな顔しなくても大丈夫なんだよ。カカシ先生が四の五の言うようだったら、俺がぶん殴ってやる」
真顔で言うと、ナルトは自分の胸を叩く。
あまりに壮大な話に、サクラは呆気にとられてなかなか声を出せない。
そもそも、ナルトの今の実力では火影どころかカカシも殴れるかどうかといったところだ。

「・・・あんた、相変わらず言うことだけは大きいわね」
「何だよ。俺は本気だよ」
子供のように頬を膨らませたナルトに、サクラは思わず苦笑をもらした。
「知ってる」

 

 

茶店を出たときのサクラは、憑き物が落ちたようにさっぱりとした顔をしていた。
店に入った当初と比べると、別人にようだ。

「何だか、気持ちが楽になった。有難うね」
「うん」
別れ際、微笑を浮かべるサクラにナルトも明るく笑う。

サクラの笑顔。
それはナルトにとって、五影を敵にまわしてもかまわないと思うほど価値のあるものだった。


あとがき??
何があっても信じられる、また、信じてくれる人がいるのは良いことだという話だったと思うのですが。
サクラが笑顔なら、ナルトは幸せなのです。

全体的に、ナルサクは壮大な片思いストーリー。
火影になるという夢を叶えることが出来ても、一番欲しいものは絶対に手に入らないナルト。
うちのナルサクは、限りなくラブに近いライクです。

もし、サクラが道を踏み外し、悪事に加担しようとしていたとする。
ナルトはサクラを全面的に信じるタイプ。
悪いことだと知っていてもサクラに協力して、どこまでも一緒に堕ちてしまう。
カカシ先生はサクラを諫めるタイプ。
嫌われると分かっていても、サクラに忠告して何とか引き上げようとする。
うちのサクラがカカシ先生を選ぶのは、そんな理由からです。あくまで原作ではなく、うちの設定。
どっちが幸せかは一概には言えないけれど。

ちなみに、タイトルは私のナルトのイメージ。
サスケが『地球の王様』なのに対し、ナルトは『正義の味方』。何となくね。
カカシ先生はなんだろうなぁ。


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