桜土産
「死んじゃうわよ!!馬鹿」
「うーー・・・・」
「先生には電話で連絡しておくから。寝てなさいよ!」
母親に怒鳴られたサクラは、ゴホゴホと咳を一つして応える。熱が39度ある状態で外出しようとしていたサクラは、母親に見つかり、強制的にベッドに連行された。
サクラが無理をしてでも出かけようとしたのにはわけがある。
今日は年に一度の桜祭りの日。
任務が休みなこともあり、今年は7班の皆で祭りに参加する予定だった。
ナルトはともかく、カカシとサスケがサクラの誘いに応じることは滅多にない。「葛餅、林檎飴、綿飴・・・・」
サクラはしくしくと涙を流しながら祭りで食べる予定だった菓子を声に出す。
祭りの日を指折り数えてワクワクしていた分、サクラの悲しみは大きかった。
トントン
服用した薬の影響か、うとうととし始めていたサクラはその物音で目を覚ます。
音のした方へと顔を向けると、見覚えのある金の髪が見え隠れしていた。
その正体は、見ずとも分かる。「ナルト?」
窓を開けるとすぐに、屋根の上に立つナルトが何かを差し出した。
見ると、持ち帰り用の葛餅の容器に、小さな狐の人形。「サクラちゃん、これ好きだったよね」
「うん」
サクラがにっこりと微笑むと、ナルトの顔は熱のあるサクラ以上に赤くなる。
「有難う」
にこにこ顔のサクラは、ナルトの姿が見えなくなるのと同時に窓を閉めた。
「ナルトもたまには気が利いてるわ」
呟いたあと、再び耳に付いた物音にサクラは足を止める。
振り向いたサクラの目に飛び込んできたのは、窓から覗いた犬の面。
絶叫する寸前で、サクラは何とか声を呑み込んだ。
ずらされた面の下にあったのは、彼女の知る辺の顔だった。「カカシ先生」
「・・・悪い。起こしちゃったか」
「大丈夫よ。ちょうど目が覚めたところだから」
窓から身を乗り出したサクラに、カカシはビニール袋に入った林檎飴を見せる。「サクラ、好きだったよね」
「うん。有難う」
嬉しそうに微笑むサクラの頭に、カカシは付けていた張子の犬の面をのせた。
「これもあげる。早くよくなれよ」
「ナルトとカカシ先生が来てくれたってことは・・・・」
否が応にもサクラの期待は高まっていく。
次の瞬間、窓際に人の気配を感じたサクラは急いで窓を開け放した。
目を凝らして見回したが、そこに人影はなく、暖かな風がむなしくサクラの頬を撫でる。「・・・そうよね。サスケくんが、わざわざ来てくれるはずないわよ」
窓の桟に手を付いたまま、サクラはがっくりと肩を落とした。
暗い表情のまま窓を閉めようとすると、窓枠に引っかかった紙袋に気付く。
先ほどまでこんな物はなかったはずだ。
「何これ?」紙袋の中身は、サクラの好きな綿飴と、桜模様の入った団扇。
夕方になると、母親がサクラの様子を見に部屋にやってきた。
「サクラ、お粥できたけど、食べれる?」
「んー・・・」
寝入っていたサクラは、電灯の明かりに目を瞬かせる。「・・・いらない。お腹いっぱい」
おぼつかない声のサクラの返答に、母親は首を傾げる。
サクラは水を飲みに台所に来たが、朝から食べ物は口にしていない。
「本当に大丈夫なの」
顔を覗き込むと、サクラはすうすうと寝息を立てていた。サクラの母がふと足下のごみ箱に目をやると、朝にはなかった包み紙がいろいろと捨てられている。
机の上には、やはり見覚えのない狐の人形と犬の面と桜模様の団扇が仲良く並んでいた。
あとがき??
オチはサスサクのような気がしないでもない・・・・。(汗)いや、一応サクラ総受け。
全員、他の奴らを出し抜いたつもりなんでしょうねぇ。
サブタイトルは“サクラと貢ぎ物”だろうか。(身も蓋もない)
熱はあっても物は食べられるサクラ嬢。私がそうなのですよ。
39度あるのに、天ぷら食べてた。(アホな)消化に悪いって。良い子は真似しないように。菓子は何でも良かったのですが、個人的に好きなので葛餅。
亀戸にある船橋屋の葛餅は絶品ですよ!好き好き。デパ地下にも入っている。
亀戸天神の近くにあるのが本店。本当は夏祭りだったのだけれど、季節はずれにもほどがあるだろう、というわけで桜祭り。
中野で毎年行われています。
去年は桜の開花が予想以上に早く、桜祭りのころには青々とした葉が茂っていました。(笑)
確かに桜の木はあるが、花が一輪もない寂しい祭りだった。