風呂からあがったサスケが飲み物を求めて階下へやってくると、サクラが机に突っ伏して居眠りをしていた。
机には、数冊の本が散らばっている。
おそらく、これを読んでいる途中で睡魔に襲われたのだろう。

今回、7班が任務で訪れたのは木ノ葉隠れの里を出て東に3日ほど歩くとたどり着く彩の国。
里から彩の国に引っ越すことになった一家の護衛兼荷物運びだが、任務は滞りなく済んだ。
夜が明ければ、逗留している旅館を出発して木ノ葉隠れの里に帰ることになっている。

 

「起きろ、サクラ」
目覚める気配のないサクラに、サスケは肩を揺すって呼び掛ける。
このままサクラがこの場所で寝入っていたら、風邪をひくことは確実だ。
そうなると、明日出発という予定も頓挫する。
「サクラ」
サスケは語調を少しだけ強めた。
だが、旅の疲れが出たのかサクラはまるで反応を示さない。

短気なサスケが怒鳴ろうと口を開きかけたそのとき、サクラが何事か呟いたのが聞こえた。

 

「サスケくん・・・」

 

苦しげなその声に、サスケはぴたりと動きを止める。
その間も、サクラのうめき声は続く。
「あぶな・・い・・・」

顔を見下ろすと、サクラの眦にはうっすらと涙が浮かんでいる。
何か、困難な任務の夢を見ているのかもしれない。
夢とはいえ、自分を心配しているサクラに、サスケは怒る気持ちも失せてしまった。

 

水の入った器を片手に、サスケはサクラの向かいの席に腰掛ける。
何気なく、机にのった本を広げると、そこには難解な文書と数式が並んでいた。
アカデミーでは常に上位の成績だったサスケにしても、ちんぷんかんぷんだ。
付箋付きでいろいろと書き込みのある本は、サクラの苦労のあとを偲ばせる。
毎夜、サクラは皆が寝静まった後にこうして勉強を続けていたのだろう。

ふいに、サクラを「ナルト以下だ」と罵ったことが思い出されて、サスケは何となく後ろめたい気持ちになった。
視線を本からサクラへと移すと、彼女はまだ眉根にしわを寄せて小さく唸り声を発している。

 

「・・・悪かったな」

ぼそぼそとした声で言うと、サスケはサクラの頭に静かに手を置く。
幼い頃、自分が不安になったときは、両親がこうして頭を撫でてくれた。
それを、思い出しながら。

 

 

 

 

翌朝、カーテンから漏れた日差しにサスケが目を開けると、眼前に人の顔があった。
桜色の髪が目に入った瞬間に、サスケは跳ね起きる。
無防備に眠るサクラと同じ布団で横になっていた事実に、混乱状態の頭は上手く働かない。

「・・・ん、サスケ、もう起きたのー?」
寝ぼけ眼で呟いたのは、サクラではなく、サクラの背後で寝ていた人物だ。
サスケが目覚めた当初は、カカシが掛け布団を頭からかぶっていたせいで位置的に見えなかった。

 

「ここここ、これは、どどど」
「どうしてみんな一緒に寝てるか知りたいの?」
どもるサスケに、カカシは彼の言いたいことを翻訳する。
「何か一階におりてったら、サスケとサクラが仲良く机で寝てたから、ここまで運んであげたんだよ。感謝してよね」
「サ、サクラは一人部屋だろ!」
サスケは胸の鼓動の速さを感じながら、何とか声を絞り出す。

部屋割りとしては、上忍のカカシと女子のサクラは個室で、サスケとナルトは相部屋だった。
サスケの必死の主張にも、カカシは面倒くさそうに頭をかく。

「いーじゃん、かたいこと言わないでさぁ〜」
アクビを一つすると、カカシは再びコテンと横になる。
「・・・もう一眠りさせて」
カカシは抱き枕のようにして睡眠中のサクラを腕に抱えて再び眠りにつく。
全く自然なその動作に、サスケの額に青筋が立った。

 

 

「おい、分かったからもうちょっと離れろ」
「えー、何―」
「この手をどけろって言ってるんだ、この手を」
カカシとサスケは枕辺で言い合いを始める。
真ん中で眠っていたサクラは、その声を耳にしてさすがに目を覚ました。

「・・・ん」
目元をこすったサクラは、半身を起こしたままカカシとサスケの顔を交互に見る。
ぼんやりとした眼が、サスケの姿を映したのと同時に、サクラはがばりとサスケに飛び付いた。
「サスケくん、良かった!!夢だったのね」
「うわっ」
反動で後ろに仰け反ったサスケは、そのままサクラに布団の上に押し倒される格好になった。
羨ましそうに自分を眺めるカカシの姿がサクラの肩越しに見え、サスケは耳まで赤くなる。

「おい、はなれ・・・」
「サスケくんが、鼻の穴にピーナッツ詰めてる夢を見たの。夢で良かったーーー!」
サクラはサスケに抱きついたまま感極まった声をあげる。

 

 

このとき、サスケは心の底から思った。
昨夜、この馬鹿を叩き起こしておくのだったと。


(おまけ)

「みんな、酷い・・・・」

ぎゃあぎゃあと騒がしいカカシの部屋に、ナイトキャップを付けたナルトが悲しげな様子でやってきた。
「俺だけのけ者にして、みんなで寝てたなんて・・・」
「不可抗力だ!」
「そーよ、サスケくんは本当は私とだけ一緒に寝たかったのよ」
「違う!!」
サスケは真っ赤な顔でサクラの言葉を否定する。

「そんな、強く言わなくても・・・・」
よよよ、と泣き崩れたサクラを、カカシは抱きしめる。
「可哀相になぁ。よしよし、今夜は先生と二人で寝ような」
「えー、俺も、俺も!!」
「っていうか、今日里に帰るんだろ!」

 

彩の国では宿に泊まった7班だが、行き帰りは野宿だ。
大所帯から離れ、4人きりの旅。

「じゃあ、俺、サクラちゃんの隣りで寝る」
ナルトはサクラにぴったりとくっついて言う。
「・・・」
「・・・」
カカシとサスケは無言で顔を向き合わせた。

 

早朝から、夜に寝袋を並べる位置についてもめ始める7班の面々だった。


あとがき??
た、楽しい・・・。すみません。自分だけ楽しんでしまって。
最初に考えたときは、サスケとサクラの位置が逆転してました。
サスケの寝顔を見たサクラが、可愛い〜vv食べちゃいたいくらい可愛い〜v(←?)、と思う話だった。
何故こんなギャグ調に?
でもサスケって、絶対ギャグ向きの性格ですよねぇ。あれ、違う??
私、サスサクよりも、サスケを好きなサクラが好きです。
彩の国って、埼玉のこと。
あーもー、ナルチョ、可愛いわーvvv(支離滅裂なまま終わる)


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