うたたうた


カカシが木陰で熟睡していた。

第一発見者は、サクラだ。
今日はさる大名家の下屋敷の庭仕事が任務内容だが、カカシは下忍達を手伝うつもりはないらしく、長い間姿を消していた。
おそらく、早朝この屋敷にやってきたときからずっとここにいたのだろう。
花を花壇へ運ぶ途中だったサクラは、カカシを起こさないよう、忍び足で近づいた。

「また夜間の任務が入ったのかしら」
花の苗の入った籠を下ろすと、サクラはカカシの隣りに腰掛ける。
気持ちよさそうに寝息を立てるカカシは、まるで起きる気配がなかった。
夜にしっかりと寝ていれば、今、こうしてサクラの気配に気づくことなく爆睡することはないはずだ。

「体、壊さなきゃいいけど・・・」
カカシの寝顔を眺めつつ、サクラは心配そうに呟く。
上忍のカカシには、7班での任務以外の仕事がたびたび入ることは分かっている。
それでも、たまには10班のように皆で遊びに行ったり、何かを食べて帰ったりということがあっていいのではないかと思った。

「もうちょっと、一緒にいてくれてもいいのにね」

 

 

「サクラちゃ・・・」

いなくなったサクラを探していたナルトは、口を大きく開けたまま動きを止めた。
視線の先に、サクラがいる。
カカシにもたれかかるように座るサクラは、どうやら居眠り中のようだった。
口元に笑みを湛えた寝顔は、ひどく幸せそうだ。
本当は起こさなければならないのだろうが、ナルトはそんな気持ちにならなかった。

「黙ってると可愛いのにな」
その場でしゃがんだナルトは、サクラの顔をしげしげと見つめる。
何かにつけ怒鳴られているナルトには、こうしてサクラの顔を間近で見る機会などそうそうない。

失敗するたびに怒られて。
何をするにしても、注意されて。
それなのに、不思議だ。
ナルトは一度もサクラを嫌いだと思ったことがない。
サクラの隣りは、どうしてか居心地がいい。

「いっつも笑ってくれてるといいんだけど」

 

 

サスケは怒っていた。
本当に腹立たしかった。
カカシに続き、花の苗を取りに行ったサクラ、サクラを捜しに行ったナルトまで姿を消した。
自分一人で働いて、まるで馬鹿のようだ。
そうして、見付けた3人はそろいもそろって涼しい木陰でいびきをかいている。
これが怒らずにいられようか。

「おい、起きろ」
サスケは一番近くにいるナルトを蹴ってみたが、びくともしなかった。
ナルトはサクラのいる方に向かって寝返りを打っただけだ。

馬鹿は感覚も鈍いのかと思いつつ、サスケはその場に腰を下ろした。
炎天下の中で働いていただけあって、喉がからからだ。
こうして日陰に来ただけで、気温が1,2度下がったような気がする。
水筒の水は冷えてはいなかったが、飲むと少し気分が落ち着いた。

時計を見ると、針はすでに正午を回っている。
サスケは膝を抱えて座ったまま、ため息をついた。

「・・・・腹、減った」

 

 

 

カカシは何か体に重みを感じて目を覚ました。
顔を向けると、自分の胸のあたりにサクラの頭が乗っている。
ぼんやりとした頭で見回すと、何故か7班の下忍達がすぐ近くに転がっていた。
体調が悪いというわけではなく、ただ寝入っているだけのようだ。

「えーと・・・・」
確か、彼らは向こうの庭園でせっせと働いていたはず。
何故このような状況になったのかが分からず、カカシは首を傾げた。
「皆、疲れてるのか?」

自分が呼び水となって下忍達が昼寝をむさぼっていることを知らず、カカシは見当違いなことを言う。
思えば、このところ休みなく面倒な任務が続いていた。
今回の任務は急ぎではなく、一週間後までに終えればいいということになっている。

「しょうがない。今日の仕事は7班での任務だけだし、かき氷でも食べに連れて行ってやるか」
カカシは胸元にあるサクラの頭を意識しつつ、小声で呟く。
とりあえず、全面的にカカシに体重を預けているサクラが目を開けるまで、身動きができそうになかった。


あとがき??
現在、本誌で7班のチームワークが乱れまくっているので、仲良さげな話を書きたかったの。
そんだけ。
先生にかき氷を食べに連れて行ってもらえば、サクラは笑顔だし、ナルトはそれが嬉しいし、サスケの腹は膨れるしで全てが丸くおさまる。
たぶん先生のおごりなので、先生の懐は寂しくなりますがね。(笑)
ナルトがサクラを好きなのは、彼女がナルトのことを思って忠告したり怒ったりしてるのが分かっているからですよ。
いじめたり、馬鹿にしてるわけじゃないから。

『旅の窓口』の広告でスナフキンがハンモックで寝ている絵を見て、書きたくなった。
木陰で7班のみんながごろごろ寝ていたら可愛いかなぁと。
カカシ先生がサクラに接近に気づかなかったのは、殺気&敵意がなかったからです。敵ならすぐ起きます。
タイトルはとくに意味はないけど、うるるとさららのCMソング。ぴちょんのCDから。


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