猫になりたい


「・・・・何か、今日のサクラちゃん変じゃない?」

ぽつりと呟いたナルトに、カカシとサスケはハッとして振り返る。
ナルトの疑問を耳にして、気になっていた胸のつかえがようやく取れたような。
そんな感覚だ。
自分だけではなかった、という思いが三人の絆をより深めている。

サクラを遠巻きに眺めつつ、意気投合した三人は堰を切ったように話し出した。

 

「やっぱり、やっぱりお前らもそう思うよな!」
「誰も何も言わないから、ああいうのが巷で流行っているのかと思っていた・・・」
「それはないよー」
ひそひそ話をする彼らの視線の先にあるのは、サクラの頭部を覆い隠す唐草模様の頬被り。
朝、集合場所に来たときからサクラはそれを付けていた。
思えば口数も少なく、何か悩み事があるようにも見える。

「でもさ、本人を前にしていきなり「その頭、変じゃない?」、とか言えないよ」
「いや、あれは明らかに自分の意志で付けている。お前なら大丈夫だろう」
「何でもそうやって俺に押しつけないでくれよな!」
思わず声を荒げたナルトは二人に食ってかかる。

話し合いの最中、サクラが訝るように三人を見つめていることに気付いたカカシは、背中を叩いてナルトとサスケに合図した。
カカシに視線で促され、ナルトは渋々ながらサクラに近づく。

 

 

「サクラちゃん」
「何」
「そ、それ、何なの」
「それって、どれよ?」
サクラは小首を傾げてナルトを見つめる。

出で立ちが妙でも、その仕草はどこまでも愛らしい。
頬を染めたナルトは、何も言うことができずに踵を返した。
とぼとぼとした足取りで戻ってきたナルトの目には、うっすらと涙が浮かんでいる。

「・・・・・言えない。変だなんて」
「いくじなし!!」
「修行が足りないぞ!!!」
うなだれるナルトをカカシとサスケが二人がかりで罵倒する。

「こういうのは、全然違う話題を出して、徐々に話の流れを変えていくんだよ。みてろ」
自信ありげに言うと、カカシはくるりと体を反転させた。

 

「サクラ!」
「何」
「今日、髪型いつもと違くない?」
にこやかに訊ねるカカシに、ナルトとサスケは「「直球すぎー!!」」と心の中で突っ込みを入れた。
だが、彼らの心の内など全く知らず、サクラはきょとんとした顔で三人を見る。

「別に、いつもと同じだけど」
「・・・そう」
不思議そうなサクラに手を振ると、カカシはナルト達に向き直る。
「駄目だな」
「まだるっこしい!!」

訊きたくても訊けないこのじれったい状況に、一番最初にキレたのは短気なサスケだった。
ずかずかとサクラに歩み寄ると、サスケは戸惑う彼女から素早く手ぬぐいを奪い取る。
「こうすればいいんだろう!!!」
「キャーー!!!」
頬被りのなくなったサクラは、悲鳴を上げてその場にうずくまった。
そして、サクラの頭に現れた予想外のモノに、三人は揃って息を呑む。

 

 

頬被りで隠されたサクラの頭には、二つの突起物があった。
正確には動物の、猫の耳に近いものが。
いやにリアルな作りだが、顔の横に付いている耳はそのまま残っていて、非常に違和感がある。

「さ、サクラ、それは・・・・」
カカシが震えながら頭上の耳を指差すと、サクラはわっと泣き崩れる。
「変よね、やっぱり。よく分からないけど、朝起きたら生えてたの。抜こうとしても痛いだけだし、原因は分からないし、もうどうしたらいいか。任務を休むわけにいかないから、何とか隠してみたんだけど」
ぽろぽろと涙を流しながら話すサクラに、三人は声を無くす。

 

突然頭に耳が生えてきたなら、サクラのように困惑して当然だ。
サクラの沈んだ気持ちに呼応してか、頭の耳の力なく下を向いている。
その姿は、可哀相というよりもむしろ、可愛いらしい。
普段勝ち気なサクラがしおらしく涙を流している姿はそれだけで胸を打たれるが、今回はさらに猫耳がプラスされている。

サクラの魅力を倍増させる猫耳アイテムは、サクラを除く7班メンバーを歓喜の渦に巻き込んだことを彼女はまだ気付いていない。


あとがき??
日記に載せようと思って書いていたSSなのだけれど、意外に長くなったので駄文部屋に置くことにしました。
続く展開、どうしましょうかね。
ギャルゲー系とか、ほのぼのとか、いろいろ・・・・。
決めてもらえますでしょうか。

(追記)
投票終了しました。ご協力有難うございます。
駄文完成までは、暫しお待ちください。


駄文に戻る