姫神さまの願いごと 参


「ウグッ、エグッ、さ、サクラちゃん・・・」
「煩い!!いい加減泣きやめ!」

イラつくサスケが、泣き続けるナルトを怒鳴りつける。
内心サスケも焦っているだけに、ナルトの気弱な態度が癪に障ってしょうがない。
泣いていたって、何も解決しないのだ。

 

サクラが行方をくらませてから、すでに2日が経過している。
村人にサクラのことを伝えると、哀れみのこもった目で見られた。
サクラは他の子供達同様、戻ってこないのだと言われているようで、ナルト達は絶望的な気持ちになったものだ。
そして、状況はこの村に来た当初とまるで変わっていない。
つまり、“神隠し”の原因は全く分からない。

「そうそう、泣いてたってしょうがないぞー。気楽に行こう、気楽に」
「お前はのんびりかまえすぎなんだ!!」

サスケが投げつけた教本を、後ろ向きながらカカシはやすやすと掴む。
「乱暴だなぁ、何怒ってるんだよ。カルシウム不足なんじゃないの?」
床に転がって惰眠を貪っていたカカシは、教本をサスケに向かって放り返すと、再び眠りにつこうとする。
その様子に、サスケの中で何かがブツリと切れた音がした。

「何なんだ、あんたは!!そうやって年がら年中寝てばかりで!しかも、俺達にもここから出るなとは、どういうことなんだ!!」
サスケはカカシの前まで来ると、仁王立ちして彼を睨みつけた。
いまだ半べそのナルトは、タオルを片手に泣きはらした目を二人に向けている。
その回答は、ナルトも是非に聞きたいものだった。

サクラがいなくなったその日のうちに、カカシは森での探索を中止してしまった。
カカシがナルト達にくだした命令は、3日間村長にあてがわれた、この部屋を出ないこと。
ナルトとサスケは、寝耳に水とばかりに目を丸くしたが、その理由をカカシは話そうとしなかった。
上司であるカカシの命令は絶対だ。
すぐにでも外に探索に出ようと思っていたナルトとサスケは、行動できなくなった。

 

そうこうするうちに、2日が過ぎた。
探索中止の理由を、今こそ話してもらおうと、サスケは一歩も引く気配がない。
握りこぶしを作るサスケを視界に入れ、カカシはようやく身体を起こし、床の上に座りなおした。
「短気は損気だよ。ま、しょうがないけどね」
言いながら、カカシはパチンと指を鳴らした。

同時に、桃色をした蝶がふわりとカカシの手に舞い降りる。
ナルトとサスケはその光景に目を見張る。
今の季節は春ではない。
これは何らかの忍術だ。

「使役の術?」

サスケの口から出た言葉に、カカシが神妙に頷く。
忍が仲間に自分の意志を伝える術だ。
練ることのできるチャクラの量が増えれば、術を伝えることのできる範囲は広がる。
もし使役が敵方に捕まリ情報がもれれば、忍にとって命取りともなるが、今、この村にいる忍はカカシ達しかいない。
よって、この術は確実に彼らに向けて発せられたものだ。
「そいつが持ってきたんだ」
カカシは小さな紙切れをサスケに渡す。

 

― 3日のうちにけりをつけます。心配しないで下さい −

 

几帳面なサクラの文字。
カカシが動かなかった理由はこれだ。
使役を出せるということは、それなりに余裕のある状況なのだろう。
サスケの中の張り詰めていたものが、ようやく緩む。

「手がかりもなしにやみくもに動いても、体力消耗するだけだろ。サクラの方は何か掴んだみたいだしさ。今度の件はサクラに任せようと思って」
それは、カカシがサクラに全てを任せるほど、力量を信用しているということ。
そのこと自体は良い。
だが、サスケはまだ納得できないことがある。
サスケは片眉をあげてカカシを見た。

「・・・・何でこれを俺達に伝えなかったんだ」
「んー」
カカシはバリバリと頭をかき、考えるように目線を上げる。
そして二人に向き直ると、にこっと笑って言った。

「お前達の反応が面白かったから」

ナルトの手からタオルがはらりと落ちる。
次の瞬間、床板のぬけるような大きな音が、村長の家中に響いた。

 

 

ざわざわと風が木々を揺らす。
サクラは振り向いて頭上を見上げた。

「サクラ」

不安げに名を呼ばれ、振り返る。
幼い少女が、サクラを見詰めて首を傾けている。

「どうかした?」
「ううん。誰かが呼んだような気がしたから」
サクラは遠巻きに自分を眺めていた少女に歩み寄ると、手を差し出した。
少女は嬉しそうにサクラの手を握る。

夕暮れが二人の頬を照らしている。
森では日が傾いたと思ったら、すぐに夜だ。
サクラは住処となっている場所へ向かって足早に歩き始める。
忍としてのサクラの足取りは普通の村人に比べてかなりの速さだったが、手を繋いだ少女は難なくそのスピードについて歩いていた。
優美な作りのその顔は、無理をしているわけでもなく、涼しげな表情が浮かんでいる。

 

約束の期限は迫っている。
サクラがカカシに使役を送ると、すぐに返事がきた。
その内容は、こうだった。

 

― 3日は待つ −

 

断定的な物言い。
サクラはすぐにカカシの言葉を理解する。
3日が経過した後は、カカシが何らかの動きを見せると警告している。
信頼していないのではなく、カカシも自分を心配しているのだろう。
残された短い時間で、ことを解決しなければならない。

サクラは傍らの少女を見詰めて、心の中でため息をついた。


あとがき??
うーん。なかなか進まない。全然予定のところまでいかなかった。次はまた2ヶ月くらい先、か?(汗)
たいした話じゃないので、早く終わらせたいです。(本当に)
カップリングのない話は、どうもだらけてしまって駄目ね。


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