ひまわり家族 2


「本当にいいんですか?」
「うん。君には随分と世話になったし、たまには役に立ちたいよ」
躊躇いがちに自分を見る彼女に、四代目は明るい笑顔で応える。
彼女は火影の秘書を十年も勤めたくノ一で、四代目が一番信頼している部下だ。
四代目にとって、息子のナルトと同様に家族のような存在だった。
その彼女が困っているというのだから、何としても力を貸してあげたいと思ってしまう。
「でも、火影様にもいらっしゃるんでしょう」
「え?」
「好きな人」

何か、確信があって言ったわけではない。
ただ、このままやもめ暮らしをするには彼は若く、容姿も人並み以上だ。
それらしいことは話さないが、当然誰かいい人はいるのだと秘書は常々思っていた。
「えーと・・・・」
案の定、珍しく戸惑った表情で俯いた四代目を見て彼女はくすくすと笑う。
「その人には、ちゃんと事情を説明しておいた方がいいですよ」

 

 

 

『四代目火影が再婚!!?お相手は美人秘書』

 

翌朝の木ノ葉隠れの里の新聞はどれも「四代目、再婚」のニュースを大きく扱っていた。
もちろん、そのニュースは他の里にも届き、早々と使者がやってきている。
皆のアイドル的存在である四代目の明るい話題に、里の住人はおおむね祝福ムードだ。
熱狂的ファンの間ではがっかりとする女性もいたが、秘書の顔写真を見ると納得するしかない。
顔は女優のように整った顔立ちをしていて、四代目と同じ金髪碧眼、スタイルも申し分ないのだからこれほど並んで映えるカップルは他にいないように思える。
当然、サクラも喜ばしいことだと思っていた。
彼の顔を、実際に見るまでは。

 

「おはよう」
「・・・・・」
家庭菜園へと続く小道で、彼女を待ち構えるように立つ四代目を見つけたサクラは、思わず彼から視線をそらしていた。
何故だか、無性に泣きたい気持ちだ。
滲んでくる涙を誤魔化すように、サクラは顔を背けたまま彼の隣りを素通りする。
「おめでとうございます」と言わなければならないと、分かっていた。
頭で理解していても、その通り実行できない自分は何て未熟者だろうかと思う。

「サクラ」
後ろから腕を引かれたサクラは、その瞬間、持っていたシャベルや軍手を取り落とした。
振り向きざまにキスをされたら、誰でも驚いてこうなる。
何が起きたか分からず呆然とするサクラを、彼はそのまま抱き寄せた。
「キスしていい?」
「・・・・それは、する前に聞くものなんじゃないですか」
「ちょっと順番間違えた」

 

その声音から、四代目が苦笑しているのだと分かる。
背中に手を回されたサクラは、彼の声を間近に聞きながら、どうしたものかと考えていた。
嫌ならば、四代目を押しのけてはっきり拒絶すればいい。
でも、この状況を少しでも嬉しいと思ってしまっている場合は何と言うべきなのか。
困ったサクラは、とりあえず頭に浮かんだことをそのまま口に出していった。

「私、奥さんのいる人には興味がありません」
「僕も浮気をするつもりは無いよ」
「嘘をつく人も嫌いです」
棘のある声で言われ、少し腕の力を緩めた四代目はサクラの瞳を真顔で見つめる。
「・・・ごめん。俺が再婚するってことが、嘘なんだ」

 

 

本当は、里のごく一部で流した噂話だったのだ。
それが、こうして外の国にまで広まってしまうことは予想外だった。
発端は四代目の秘書が、長い間付き合っている恋人がなかなかプロポーズをしてくれないと、彼に相談したこと。
他の男と結婚すると聞けば、さすがにその恋人も慌てるはずだ。
もし無反応なら、今度こそ秘書は彼と別れると言っていた。
彼らの件が上手く片付けば、四代目は直々に噂話を否定する声明を出すつもりでいる。

 

 

「どうして、私のそんな話をするの?」
「・・・秘書に言われたから」
その返答にサクラは首を傾げ、四代目は優しい微笑みと共に彼女の頭を撫でる。
秘書に「好きな人」と言われたとき、とっさに頭を掠めたのがサクラの顔だった。
つまり、そういうことだろう。
ナルトにどう言い訳しようと思いながら、彼女の手を離すことは考えられない。

「キスしていい?」
今度は実行する前に聞いてみる。
真っ赤な顔のサクラは恥ずかしそうに俯いたが、四代目は肯定の意味だと思うことにした。


あとがき??
八犬さんの「四サク好き」とのお言葉を聞いて書きたくなりました。
3があるとしたら、2の続き。二人が結婚するまでの課程ですね。
可愛くて格好よくて強くて性格も良い四代目はうちのサイトの最強キャラです。トランプで言うとジョーカー(切り札)。
普段はナルトが一番強いのですが、父の四代目はその上。
あー、カカシ先生が、「うちのサクラに手を出さないでー!」と泣きつく場面も書きたかった。


駄文に戻る