ひまわり家族


「傘、用意しておいてくれる?」
「はい」
書類に目を通す四代目に頼まれた特別上忍は、急いで折り畳みの傘を持ってくる。
四代目の勤務時間はあと10分ほどだが、窓の外を見ると雲行きがあやしい。
丁度、彼が帰宅するあたりに降り出しそうだった。

「新しい奥さんはどんな感じですか」
書類整理を終えた四代目に、彼と懇意にしている上忍がさり気なく訊ねる。
四代目が顔をあげると、執務室にいる忍び全員が彼を見つめていた。
彼の新妻がまだ10代で、二人に親子ほどの年齢差があることを皆知っている。
その生活ぶりを聞きたくとも、相手は火影だ。
おいそれとプライベートな質問は出来ない。

「楽しいよ。子供が二人になったみたいで」
鞄に必要な書類を詰め込みながら、四代目はにっこりと笑う。
「秋には本当に二人目が生まれるんだけどね」

 

 

「お帰りなさいー」
チャイムの音が聞こえるなり、タオルを持ったサクラが駆けつけてくる。
予想通り、帰路についた四代目は降り出した雨にびしょぬれになっていた。
傘を持っていても、意味がないほどの豪雨だ。
「お風呂沸いてるわよ。早く体をあっためて」
「ああ」
「雨宿りしてから帰ってくれば良かったのに」
廊下を歩く四代目に付いてきたサクラは、心配そうに言う。
風邪を引いても、おいそれと仕事を休めないことを承知しているからだ。

「でも、雨は今夜中降り続くだろう。昨夜は向こうに泊まり込んでいたし、サクラの顔が見たかったから・・・」
脱衣所の扉の前まで来た四代目は後ろを振り返る。
「サクラも一緒に入る?」
「うん」
にこにこと笑うサクラを抱きしめると、四代目は廊下の先で自分達を見ているナルトへと顔を向けた。
「ナルトも入るか?」
「ばーか」
言い捨てたナルトはくるりと背を向けて自分の部屋へと入っていく。
「ちょっとナルト、父親に向かって何てこと言うのよ!!」
「まぁまぁ」
ナルトを叱るよりもまず、顔を真っ赤にして怒るサクラを必死でなだめる四代目だった。

 

 

 

「ナルトってば、私に反発してばかりなのよ。いやになっちゃう」
身支度を整え、寝室で横になったサクラは悲しげな表情で四代目に訴える。
「やっぱり同じ年だし、私なんかをお母さんとして見てくれないのかな」
「ナルトはちゃんとサクラのこと好きだから、大丈夫だよ。今は少し戸惑ってるだけだ」
「うん・・・・」
サクラを何とか励まそうとする四代目だが、彼女はしょんぼりとしたままだ。

サクラが、親子としてナルトと上手くやっていきたい気持ちはよく分かる。
だが、ナルトの方がまだ気持ちの整理をつけられない。
サクラはナルトの初恋の相手だ。
母親として見ろと言われても、急には無理な話だった。

「親子っていったら、やっぱりあれかなぁ・・・」
「え?」
思い立つなり、四代目はベッドから半身を起こす。
「ナルトの部屋に行こうか」

 

 

窓の外では風が吹き荒れ、嵐になっている。
雷鳴も轟いていたが、ナルトはそれを怖がるような年齢でもなかった。
眠れないのは、今頃睦まじく床に就いているであろう親を思ったからだ。

「手は出さないって言ったくせに・・・」
ベッドの中で丸まったナルトは独り言を繰り返す。
サクラとの結婚話を切り出されたときの衝撃はけして忘れられない。
予感はあった。
ナルトの目から見て、父親は完璧な人間だ。
頭が良く、顔が良く、性格まで良い。
その彼がサクラを見そめたならば、いくら彼女を思っていても、ナルトには到底勝ち目はなかった。
分かっていても、納得することがどうしても出来ない。
サクラへの思慕の強さを、ナルトは改めて感じていた。

 

 

「ナルト、まだ起きてるかー」
ベッドで悶々と考える中、ナルトの部屋の扉が唐突に開かれる。
そこに立っていたのは、お揃いのパジャマを着た四代目とサクラの二人だ。
「え、何?」
「三人で一緒に寝ようと思って。ナルトも雷の音、怖いでしょ」
「・・・・・ええ!!?」
「はい、詰めて、詰めて」
仰天するナルトをよそに、四代目とサクラは彼のベッドに入り込もうとしている。

「ちょ、ちょっと、何考えてるんだよ!出てけっての」
「親子三人、川の字で寝るのが父さんの長い間の夢だったんだ」
「親睦を深めていきましょうよ」
「ひーーーー」
ベッドの両側を固められたナルトは思わず悲鳴を上げる。
一人で寝るには大きめなベッドなだけに、無理をすれば三人で寝れないこともない。
だが、サクラが良い匂いのする体を背中に密着させている状態で、どうやって熟睡しろというのか。

この夜以来、親子の溝がさらに深まったのは言うまでもなかった。

 

 

 

「最近、息子が反抗期で・・・・」
執務室の机に頬杖をついた四代目は、不発に終わったナルトとの関係修復を思い、深々とため息をつく。
「え、息子ってナルトくんですよね」
「他に息子はいないよー、今のところ」
うなだれた四代目はそのまま机に突っ伏した。
室内にいる忍び達は怪訝な表情で顔を見合わせる。
いつでも自信たっぷりの四代目が、これほど気弱になっているのを見たことがない。

「そういえば、ナルトくん年々四代目に似てきますよね」
「そう。女性の好みも同じみたいで、ちょっと困っているんだ」


あとがき??
四代目、好きだ!!!!!
私を動かすのはその一念のみである。(続く・・・)

『声』の続編で四代目とサクラは唐突に夫婦になっています。
子供が出来たから結婚したのですが、サクラの腹はまだあまり膨らんでいない様子。
つわりでご飯が少ししか食べられないので、四代目は心配で彼女の顔を見に一生懸命時間を作って家に帰っているようです。
畑で野菜だけでなく子供まで作るとは、四代目、やり手だな。青○か・・・。
ちなみに生まれてくるのはナルト(四代目)そっくりの男の子です。そこまで書かないけど。
ああーー、スレナルは可愛いなぁ。
続きはどうしようか。


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