天然優良児


「カカシ先生〜」
甘い呼び掛けと共に、サクラはカカシにべったりとくっつく。
「あれ、サクラ。今日はサービスいいね」
「うふふーvv」
カカシの腕に手を絡ませたまま、サクラは彼の顔を覗き込む。

「カカシ先生、7班の下忍の中で一番可愛いのは誰だと思う?」
「えー」
「正直に答えてよ」
「いやー、俺も上忍で7班のリーダーなわけだし、部下を差別するような発言はしちゃいけないのよ」
「何よ、それー」
困ったように言うカカシに、サクラは可愛らしく頬を膨らませる。

「もういいわ。先生なんて、知らない!」
「あ、ちょ、ちょっと」
態度を豹変させたサクラが踵を返すと、カカシは思わずその体を掴まえる。
「嘘、嘘。サクラが可愛い。一番可愛いって」
「本当?」
「うん」
カカシの答えを確認してから振り向いたサクラは、満面の笑みを浮かべてカカシに飛び付く。
「先生、大好きv」
やに下がった顔でサクラを抱きしめるカカシは、腕の中の彼女が舌を出していることに全く気づいていなかった。

 

 

「カカシ先生なんて、ちょろいわよね」

カカシに新しい靴を買ってもらう約束を取り付けたサクラは、メモ帳のカカシの名前に×印を付けながら歩いていた。
それはサクラがアカデミーにいた頃からつけている、落とした男を記録するメモ帳だ。
くの一クラスでの授業には、色仕掛けでターゲットに取り入る方法を習う授業というものがある。
体術や幻術だけでなく、日々、そうした技を磨くこともくの一として当然の務めでもあった。

そして勉強熱心なサクラは身の回りにいる異性を落とすことにほぼ成功していたが、ただ一人、サクラがどのように攻めてもぐらつかない男がいた。
最初はなめてかかっていたサクラも、近頃では毎週彼の家に通い詰めるほど本気になっている。
「今日こそは!」
幸先良くカカシを籠絡したサクラは、決意も新たに目的の人物の家へと向かった。

 

 

 

「イルカ先生、教え子の中で誰が一番可愛いと思う?」
「ははは。生徒はみんな可愛いよ」

桜の花の印が入ったマグカップをテーブルに置きながら、イルカは先週と全く同じ返事を返した。
サクラがいくらふてくされて見せても駄目だ。
「サクラが一番」の言葉が欲しいというのに、イルカはそれを絶対に口にしない。
マグカップを持ったサクラは、最後の手段とばかりに上目遣いにイルカを見つめた。

「イルカ先生、私のこと好き?」
「ああ」
「どれくらい?」
「んー・・・・、ナルト達と同じくらい、かな」
明るく微笑んだイルカは、サクラの熱い眼差しなど全く気にせず答える。
サクラは舌打ちしたいところを何とか堪え、にっこりと微笑んでみせるのが精一杯だった。

 

「もう帰るわ」
気勢のそがれたサクラは出直しとばかりに席を立つ。
マグカップの茶が半分も減っていないのを見たイルカは、不思議そうに首を傾げた。
「もう帰るのか?サクラの好きな肉まん冷蔵庫にあるぞ。いつも見てる番組もそろそろ始まるし、それ見てからにすれば」
「・・・・うーん」
サクラが口籠もっている間に、戸口付近にある黒電話の音がけたたましく響いた。
「あ、ごめん」
いそいそと電話に向かうイルカの後ろ姿に思い切りあかんべえをしたサクラだったが、もちろんイルカには見えていない。

 

 

「はい、もしもし?」
「イルカ先生――!!!」
イルカが受話器を取るなり、元気の良い声が耳に届く。
電話の相手はナルトで、用件は夕食を一楽で食べようという誘いだった。

「ああ、今日は駄目なんだ。悪いな」
TVのスイッチを入れて椅子に座り直すサクラを横目に、イルカは申し訳なさそうに言う。
「・・・イルカ先生さ、毎週毎週金曜だけは絶対俺に付き合ってくれないよね。何か他に優先することがあるの?」
「内緒」
電話越しに伝わる不満げなナルトの声に、イルカは苦笑いをして答えた。


あとがき??
とっくに籠絡されているのですが、それを表に出さないのもまた忍びの心得なのです。(笑)
サクラがどんな言葉を望んでいるかは知っていますが、それを言ったら彼女がもう家に来なくなるのを知っているのですね。
イルカ宅には、すでにサクラ専用マグカップもあるようですし。
それにしても、うちのカカシ先生って・・・・・。(涙)

ちなみに、サクラのモデルはさんまの『スーパーからくりTV』の美颯ちゃん。
・・・・カカシ先生、昌平くん!!?イルカ先生が力くん!?
ペコリーノさんのためのイルサクでした。


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