幸せな選択
「カカシ先生、何で素顔を見せてくれないのよーー」
「実は、この覆面には大きな秘密があるんだ」
「秘密?」
「そう。はたけ家の家訓で、素顔を見られたらその相手を殺すか愛するかしなければならないんだ」
言いながら、にやりと笑ったカカシをサクラは睨み付けた。
「・・・・・嘘つき」
「本当だって」
「ふーん」
サクラは全然納得していないという顔で口を尖らせている。
神社の前を横切った二人は、響いてきた独特な音色を耳にして、立ち止まった。
笙と龍笛の雅楽演奏。
おそらく、中では神前結婚式が行われている最中なのだろう。
白無垢姿の花嫁を想像したサクラは、顔を綻ばせる。
「先生、花嫁さんが見たい」
「行けば。俺は先を急ぐ」
服を袖を引っ張るサクラを振り払うと、カカシはすたすたと歩みを進めた。
頬を膨らませたサクラは、それでもカカシの後ろをついて歩く。「ケチ。用事って、本屋で立ち読みするだけでしょーー」
「そうだよ」
「私、結婚式は神前がいいの」
「そう」
「カカシ先生、私と結婚しよう」
「木ノ葉の法律じゃ、あと4年しないとサクラは結婚出来ないよ」
「じゃあ、4年後でもいいわ」
淡々と返事をするカカシに、サクラは必死に食い下がる。
街へと向かう細い道は、段々と人の数が増えてきた。
このままだと、サクラが往来で何を言い出すか分からない。「あのな、サクラ。俺はお子さまの遊びに付き合ってる暇は・・・」
「カカシ先生、髪にごみが付いてる」
カカシの愚痴を無視したサクラは、彼の頭を指差しながら言う。
「そこじゃないわよ。ちょっと屈んで」
言われるままに腰を屈めたカカシは、あっという間もなくサクラに覆面を下ろされた。
久々に外気にさらされた肌に、カカシは思わず口元を押さえたが、もう遅い。
呆気にとられるカカシを見上げて、サクラはにっこりと微笑んだ。
「どうする?」
悪戯な笑みが、心底憎らしい。
殺すか愛するか。
選択肢がそれしかないならば、最初から答えは決まっている。「サクラの馬鹿ーーーーー」
「キャーーー!」
急に大声を出したカカシに体を高く持ち上げられ、サクラは悲鳴をあげた。
だけれど、サクラの声は喜びを含んでいて、この状況を楽しんでいるのは明白だ。
覆面を元に戻したものの、自分の中の感情を持てあましたカカシは、勢いで彼女を肩に担いだまま歩き出す。
人目は気になるが、サクラにすればいつもと違った視点が新鮮で、歩く必要もなく、非常にらくちんだ。
難を言えば、見えるのはカカシの背中ばかりで、その表情が分からないところだろうか。「サクラ、もうどうなっても知らないよ」
「うん」
「俺、凄い我が儘だよ」
「うん」
「凄い焼き餅焼きだよ」
「うん」
「凄い寂しがり屋だよ」
「それは知ってる」
カカシの体が180度反転し、サクラは思わず彼の肩に掴まる。
遠ざかっていく街の賑わいに、サクラは首を傾げた。「カカシ先生、こっち本屋と違うよ」
「花嫁さん、見たいんだろ」
あとがき??
ただベタベタさせたかっただけです。
ベタベタベタで幸せ幸せ。内容はなくても良いのです。
殺すか愛するかってのは、某漫画が元ネタですね。(笑)極端すぎ。
もちろんカカシ先生の話は嘘ですが、男に二言はないのです。