お見合い結婚 2


「カエデちゃんからこれが来たの」
カカシと共に炬燵でぬくまりながら、サクラは一枚の葉書を手渡す。
その葉書には『結婚しました』のメッセージと幸せそうな一組のカップルの写真がプリントされていた。
花嫁の方は薄紅色の髪に緑の瞳と、サクラとよく似た面立ちだ。
あのサクラお見合い事件から半年が経ち、モミジは16歳になっている。

「お見合いの前に彼氏と駆け落ちして、両親に勘当されてたんじゃないの」
「子供が出来たんだって。孫の顔が見たいらしくて、親が折れたみたい」
「へぇー。それはめでたい」
炬燵のテーブルで蜜柑の皮を剥いていたカカシは、その一房をサクラの方へと向けてよこす。
サクラが大きく口を開けると、カカシはタイミング良く蜜柑を放り込んだ。

「式は両親と兄弟だけ呼んだけど、披露宴は大々的にやるみたいよ。お腹がだいぶ大きいから、子供が生まれたあとに」
もぐもぐと口を動かすと、サクラは再び写真に目を落とす。
衣装とメイクの力もあるが、幸せそうに微笑む花嫁はサクラの目に特別輝いて見えた。
そして、サクラが持つもう一枚の写真にも、なかなか似合いのカップルが写っている。
「これが、モミジちゃんと大名家の御曹司?」
「うん」
「結構、利口そうな顔した坊ちゃんだよね」
「そうね。相手は財閥だから、てっきり鼻持ちならない我が侭息子を想像していたけど」
「それは庶民の偏見ってものでしょ」
カカシは食べかけのアンパンをちぎり、彼女の口元に持っていく。
目の前のパンを、サクラは大人しく口に入れた。

 

「いいなぁ、私も早く結婚したいよー。結婚、結婚――」
花嫁姿のカエデの葉書を眺めながらサクラは繰り返して言う。
「木ノ葉の法律じゃ、結婚は16歳からでしょ。それに、サクラはウェディングドレスが着たいだけみたいだけど」
「・・・違うもん」
テーブルに突っ伏したサクラは頬を不満げに膨らませた。
アンパンの最後のひとかけらを食べ終えると、次にカカシは煎餅の袋に手を伸ばす。
丸い煎餅を二つに割ったカカシは、それをサクラの口まで運んでいった。

「・・・・ちょっとカカシ先生。黙っていれば、何でさっきから食べかけのものばかり私にくれるのよ」
「え」
パリパリと音を立てて煎餅を噛んだカカシは、驚いたようにサクラを見た。
「ああ、何となく。美味しかったから、サクラとはんぶんこしたくて」
言いながら、カカシはにっこりと微笑みを浮かべる。
「サクラは何でも美味しそうに食べるから、可愛いよね」

明け透けなその言葉と笑みに、サクラは思わず頬を赤らめた。
そして、顔を背けたまま声を出す。
「そういえば、パパとママがまたうちに遊びに来ないかって言ってたわよ」
「本当?」
「うん。それよりカカシ先生、いつの間にうちの両親と仲良くなってたのよ。この間、一緒に買い物に行ったんだって?」
「そうそう。電話をしたらサクラがいのちゃんと遊びに行って留守だったからさ」
「変なのー。私だけのけ者にして」
サクラの抗議に、カカシは苦笑をもらす。
「だって、これから長い付き合いになるんだし、ご両親とも仲良くしておいた方がいいでしょ」

 

 

サクラが帰ったあと、茶器の片づけをしていたカカシはキッチンで見慣れぬ封筒を見付けた。
暫くの間封筒の表面を眺めていたカカシは、数分後にようやく何であるか思い出す。
だが、受け取ったまますっかり忘れていた品物が、どうしてここにあるのか。
中を開けたカカシはすぐにその意味を察する。
「何て言って返せばいいんだよ、これ・・・・」
額に手をやったカカシは、そのまま忍び笑いをもらした。

封筒の中には、いくつかの写真が入っている。
妙齢の女性が皆一様に着飾って映っているその写真は、見合い用の写真だ。
カカシに全くその気はないのだが、いつまでも一人でいると周りがうるさい。
押しに負けたカカシが貰ってきたのがその写真だったが、当然、後から返すつもりでした。

「本人達が見たら、怒るだろうなぁ」
カカシは黒のマジックで眼鏡や髭を描かれた着物姿の女性の写真を見ながら呟く。
現在この家に出入り出来るのはカカシと彼女しかおらず、犯人は言わずもがなだ。
結婚、結婚と騒いでいたのも、この写真を見て焦っていたからかもしれない。
落書きされた見合い写真のことは困っていたが、子供らしい悪戯にカカシの顔は笑ったままだ。

「本当に可愛いよなぁ、サクラって」


あとがき??
お見合い結婚は3年近く前に書いた駄文なので、ほぼ内容忘れておりました。
続きといってもあまり繋がっていなくてすみません。
カカシ先生はサクラの両親とうまくいっているようです。末永くお幸せに!

147470HIT、染子さま、リクエスト有難うございました。


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