やっぱり猫が好き


「近頃、家に猫が住み着いて困ってるの」
机に頬杖を付いた紅は、綺麗に整った眉を寄せて嘆息した。
コーヒーを片手に上忍専用控え室でくつろいでいたカカシは、紅のいる方へ身を乗り出す。

「お前、猫嫌いだっけ?」
「普通よ。この前、その猫がうちの前をうろうろしていたから、ちょっと家にあげてお菓子をあげちゃったのよ。そうしたら、もう毎日来るようになっちゃって」
「ふんふん」
「可愛い猫だったし、何となくそのままにしておいたら居着いちゃったの」
「別にいいじゃん。可愛いなら」
「それが、うちのマンションって動物飼うの禁止なのよ。見つかったら管理人さんに大目玉だわ」
腕を組んだ紅は、さも震え上がっているというようなジェスチャーをする。
カカシはその管理人のことは知らないが、住人の生活についていろいろ口出しをしてくるような人物なのかもしれない。

「ずっと一緒にいたから情が湧いちゃうし、今さら出ていけなんて言えない感じだし」
困惑気味に言うと、紅は再び大きなため息をつく。
「どうしよう・・・・」

 

 

 

その日の夜、カカシが買い物を終えて帰宅すると、自分の家の窓から灯りが漏れていた。
それまでだったら身構えていたかもしれないが、今は状況が変わっている。
中にいるのは、カカシがよく見知った人間に違いなかった。

『家に猫が住み着いた』

「おかえりなさーいv」
「ただいまー・・・・って、こら。違うだろう」
扉を開けるなり飛び出してきたサクラに、カカシは突っ込みを入れる。
「勝手に入り込むなって言っただろ。合い鍵、早く返せ」
「何よー。最初に「うちで茶でもしてくか?」って言ったの、カカシ先生でしょ」
「・・・・それから毎日来るようになるとは、思わなかったからね」
少々ふてくされたような顔で靴を脱いだカカシの後ろを、サクラは気にせずくっついて歩く。
「腕によりを掛けて夕飯作ったのよ。ご飯よそっておくから、早く着替えてきてね」

『きっかけを作ったのは自分だった』

 

サクラの証言通り、テーブルの上にのった料理はどれも力の入ったものだった
サクラが横文字の料理名をいろいろと説明していたが、カカシは半分も聞いていない。
漬け物と白い飯さえあれば十分だと思っていることは、口が裂けてもいえなかった。

「・・・そういえば、親には何て言ってるわけ。ここに来ること」
「何が?カカシ先生の家に行くって、ちゃんと言ってるわよ。今日は泊まるから帰らないし」
瞬間、カカシはサクラの作ったビーフストロガノフを口から吹き出す。
「ギャー!!汚い!何やってるのよ」
慌てて流しに走ったサクラは、台布巾を持って戻ってくる。

「サ、サクラの両親ってどういう人達!?」
「放任主義。私が下忍になるって言っても反対しなかったし、先生のところに泊まるって言ったら今夜は二人で温泉に行くって言ってた」
「・・・・・」
忙しくテーブルを拭くサクラの隣りで、カカシは考え込む。
サクラの両親は特殊な人達のようだが、特定の生徒を家に入れて親しくしていると分かれば、火影にどやされるのは必至だ。

『見つかったら怒られる』

 

 

「・・・サクラ、重いんだけど」
夕食の後、リビングの床に座り、バラエティー番組を見ていたカカシはサクラに対して抗議の声をあげる。
カカシの真ん前を陣取るサクラは彼の体を思い切り背もたれ代わりに利用していた。
後ろに重心をかけ、丁度カカシの胸のあたりにサクラの頭がのっている状態だ。
「私はらくちんよ」
顔を僅かに後ろに向けるとサクラはにっこりと微笑む。
至近距離にある緑の瞳に、カカシはもう何も言えなくなった。

『可愛いから無下に出来ない』

「それで、寝ちゃうんだからなぁ・・・・」
カカシの注意を引くことが目的で、もともと番組に興味の無かったサクラはすぐ寝息を立て始めた。
腕の中のサクラを抱き寄せると、彼女は無意識に頬をすり寄らせてくる。
番組は佳境に入ったらしく、司会者が何やら喚いていたが、どうも内容は頭に入ってこない。

『どうしよう』

 

 

紅と自分の共通点ばかりが頭に浮かび、カカシは途方に暮れる。
彼女の気持ちがよく分かり、とても他人事とは思えなかった。

「どうしよう、かねぇ・・・・」
取り敢えず、寝ぼけて体が斜めになっているサクラを抱え直す。
えさ代に困っていないのと、本当の飼い主の了承を得ていることだけは救いだろうか。


あとがき??
あ、甘い・・・・・。
ただカカシ先生とサクラがラブラブ体育座りをしているのを書きたかっただけなのに。
しょうもない駄文ですみません。
紅先生の台詞は全部カカシ先生の気持ちを代弁していると思ってください。


戻る