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結婚します


「夏に結婚することになったの」

青天の霹靂というのは、こういうことだろうかとカカシは思った。
おかげで、飲みかけの茶は胃ではなく別の場所に行ってしまった気がする。
サクラは強張った表情のカカシを気にせず、白い封筒を差し出した。
「これ、招待状。披露宴は料理が美味しいって評判のところでやるから、是非来てね!」
「・・・これを渡すためにわざわざうちに来たの?」
「うん。先生には絶対来てもらいたいって彼も言っていたから」

にっこりと笑ったサクラはカカシの用意した茶をすすった。
サクラがカカシの家を訪れたことは数え切れないほどあるが、恋愛話が出たことは皆無だ。
「誰なの?」
彼女の結婚相手となる幸運な男は、思い当たる人物が多すぎて、分からない。
鈍いサクラはまるで気づいていなかったが、くの一の中で彼女の人気はTOP10に入る。
それでも、一番サクラの身近にいるのは自分だと考えていたカカシだが、その自信は今日木っ端微塵に砕け散った。

「四つ年上の私の従兄よ。先生も一度顔を合わせたことがあるよね」
「ああ・・・・」
カカシは以前サクラと外を歩いていたときに出くわした彼のことを思い出す。
サクラの幼馴染という彼は、サクラのことを何でもよく知っているようだった。
何となく面白くない気持ちで会話をした覚えがあるが、彼が相手というなら納得できる気もする。

「良かったな」
「うん」
重苦しい感情を表に出さす、笑って見せたカカシにサクラも微笑を返した。 

 

 

 

「それで、何でうちに来て死人になってるのさ・・・・・」
ナルトは自分の家の居間でごろごろと寝転がるカカシを横目に険のある声を出した。
事情は数日かけて聞き出したが、せっかくの休日に非常に邪魔だ。
サクラが結婚すると分かってから、カカシは仕事に身が入らず自宅待機を命じられている。
しかし、一人になるとよけいに辛い現実がカカシを苛み、無理やりナルトの家に入り浸っている状況だった。

「カカシ先生がさっさと好きだって言わないから鳶に油揚げをさらわれるんだよ!!」
ナルトがクッションを取り上げると、カカシは床に投げ出される。
それでも、カカシは無抵抗だ。
「難しいんだよー。教師と生徒の恋愛って」
「もうサクラちゃんはカカシ先生の生徒じゃないじゃん」
「そうだけどさー、年が離れているから周りの目もあるし、世間体とかいろいろ」
「周りの意見をいちいち聞いていたら恋愛なんて出来ないだろ」
「お前は単純すぎなんだよ」
ぶつくさ不満を言いながら、カカシはようやく立ち上がる。

「お前のところに招待状はいってないのか?」
「うん、まだ来てない。持ってきてくれたんでしょ。見せてよ」
カカシはナルトに言われた通り持参した白い封筒を投げてよこす。
忌々しい招待状はサクラとの絶縁状のようだ。

 

「・・・・それで、カカシ先生はどうするつもり」
招待状の文字を目で追いながらナルトはおもむろに問いかける。
「どうするって」
「いいことを教えてあげる。サクラちゃんは今日仕事が休みで家にいるよ。土曜日は掃除と洗濯の日って決めているみたい」
「何でそんなこと知ってるんだよ」
「秘密―。それより、こんなところでくだを巻いてないでちゃんと気持ちを伝えた方がいいよ」
顔をあげ、笑顔で忠告するナルトからカカシは目線を逸らす。

「・・・今更、迷惑だろ」
「へー、じゃあ、先生はいいんだ。サクラちゃんが結婚しちゃっても、他の男とラブラブで今後一切カカシ先生のことを思い出さなくても。結婚式でウェディングドレスのサクラちゃんを暖かく見守ってあげるんだ」
ナルトの言葉に式での様子を想像してしまったカカシは、思わず顔をしかめた。
今ならばわずかでも可能性はあるが、籍を入れてからでは全てが遅い。
カカシは面白そうに笑うナルトを半眼で見やる。
「お前はどうなんだよ。サクラのこと好きだっただろ」
「俺はサクラちゃんの幸せを願う応援団だから。彼女が幸せなら従兄でもカカシ先生でもかまわないよ」

少し意地悪な口調だったが、ナルトの言うことは正しい。
ふられるとしても、伝えなかった想いを一生後悔して生きるよりはましだ。
「いのの花屋で薔薇でも買って行くといいよ」
さりげなく演出の助言をすると、ナルトは玄関へと向かうカカシに手を振る。
扉の閉まる音を確認すると、ナルトはカカシが置いていった招待状にもう一度目を落とした。
「上忍のくせに、カカシ先生って肝心なところがぬけてるよねぇ・・・・」

 

 

それは確かにサクラの従兄の結婚式の招待状。
だが、新婦の欄に書かれた名前はサクラとは全く別人だった。
サクラは純粋に、従兄の結婚式に彼と面識のあるカカシを招待しただけなのだろう。
これならば、その従兄の顔を知らないナルトのところに招待状が来なかったのも分かる。
勘違いしたカカシはろくろく封筒の中身に目を通さなかったようだ。

「先生が薔薇の花束を持ってやってきて突然愛の告白なんてしたら、サクラちゃんどんな顔するんだろう」
少々気になるところだったが、覗きに行ってもすぐばれるからやめる。
苦笑したナルトは招待状を眺めつつテーブルに頬杖をついた。


あとがき??
サクラがもったいぶった言い方をしたのは、天然なのか、故意なのか。(^_^;)
ナルト&サクラは16歳設定ですよ。一人暮らしをしています。
ナルトがカカシ先生を後押ししたのは、サクラの気持ちを知っていたからですね。


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