てでぃ 2


晴天の休日、サクラの家を訪れたカカシは、通された和室で父親の来るのを待っていた。
緊張のあまり喉がからからだ。
紅によけいなことを聞いたおかげで、変に身構えてしまう。
実際に結婚の申し込みをしに来たわけではなく、硬くなる必要はないのだとカカシは自分に言い聞かせていた。
「お父さん・・・」
呟かれたサクラの声に、カカシはハッと顔をあげる。

大魔神、登場。

襖を開けて入ってきたサクラの父は、そう思わずにいられない風貌だった。
サクラに、彼の血が半分も入っていることが信じられない。
彼なら素手で熊でも猪でもゴリラでも一ひねりで倒すことが出来るだろう。
怖いのは顔だけで、心根は優しいことをカカシは期待した。

 

 

「娘との結婚は許さん」

取り付く島もなかった。
テーブルを挟み、向かい側で自分を睨んでいるサクラの父にカカシは唾を飲み込む。
「あ、あの・・・」
「お父さんひどい!カカシ先生がどんな人か知らないくせに」
カカシの声にかぶさるようにして、サクラは目に涙を滲ませながら訴えた。
何かのドラマの一場面のようだと思ったカカシだが、自分が当事者なのだから傍観しているわけにもいかない。
変に話が拗くれる前にと、カカシは隣りにいるサクラを肘で突いた。

「サクラ、もう正直に話そう」
結婚などというのは、出任せ。
ただ、門限に不満があったために思い付いた嘘だということを。
「・・・そうね」
カカシに賛同したサクラは神妙な顔で頷く。
一方、こそこそと話す二人を見とがめたサクラの父はさらに表情を険しくしていた。

「何だ、何を隠してるんだ」
「お父さん」
父の瞳をひたと見据えたサクラは、ゆっくりと言葉を発する。
「実は、私のお腹の中にはもう先生の子供が・・・」

 

仰天したのはサクラの父以上に、いつの間にか父親にされたカカシだ。
絶句したカカシの目の前で、サクラの父の体がぐらりと傾く。
失神したサクラの父の介抱でその日は話し合いどころではなくなり、カカシは頭を混乱させたまま自宅へ戻ることになってしまった。

 

 

 

「サクラ、子供って」
「嘘に決まってるでしょー、先生ってば手も握ってくれないんだから」
お気に入りのクッションの上で横になるサクラは笑顔で答える。
予想していたこととはいえ、まるで悪びれた様子のないサクラにカカシは頭を抱えた。
晴れて婚約者となったサクラは、公然と夜中までカカシの家に入り浸っている。

「どうするんだよ、これ」
リビングの隅には、気の早いサクラの両親から贈られたベビー用品が大量に並んでいた。
子供が出来たのならば、認めるしかないというのが先方の考えのようだ。
カカシの周りでは教え子に手を出したという大変不名誉な噂が立ち、もう後戻り出来ないところまできている。
「大丈夫よ。これから励んで本当のことにすればいいし」
「・・・・」
明るく笑い飛ばすサクラに、意味を分かって言っているのかどうか心配になるカカシだった。


あとがき??
web拍手用にしようと思っていたので、短めです。
タイトルはテディベアから。父が熊を倒したので。ダディも入ってるのか。
随分前に書いた話なので、当時何を思って書き出したかすっかり忘れました。
続きがあった気もするけど。あれ?


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