ずるい大人 1


「カカシ先生、ずるいーーー!!」
任務の休憩時間、サクラは椅子に座って愛読書を読むカカシを強く揺さぶった。
無視を続けようにも、この状況では到底無理だ。
「な、何、何の話?」
「この間、ナルトが先生の家に行ったんですってね!しらばっくれても無駄よ」
「・・・そういえば、そんなこともあったね」
サクラの詰問に屈したカカシは、首を縦に動かす。

「せっかく野菜をやったのに、調理方法が分からなくて腐らせたっていうから任務の帰りにうちに寄らせたんだ。簡単に出来る野菜料理を二つ三つ教えておいた」
「え、カカシ先生、料理出来るの!?」
「一人暮らしだから、一通りのことは全部出来ます」
「彼女とかにやらせてるのかと思った」
「上忍ともなると仕事の量が半端じゃないからねぇ。顔を合わせる時間もなくなって、すぐふられちゃうの。今はフリーよ」
「ふーん・・・・」
頷いて話を聞いていたサクラは、ハッと我に返る。

「そんな話はどうでもいいのよ!サスケくんだって何度もお邪魔したらしいし、私だけどんな家か知らないなんてずるいわ!!私も行く」
「別にいいよ」
本を閉じたカカシは驚くほどあっさりと了承した。
思わず「やったーv」と歓声をあげたサクラは、カカシが意味ありげに笑ったところを見ていない。
この先に待ち受けている事態を知っていれば、サクラは決して喜んだりしないはずだった。

 

 

 

「わー、結構綺麗にしてるのねーー」
報告書を提出したカカシを待ち伏せしたサクラは、さっそく彼の住まいに上がり込んだ。
毎朝遅刻をすることから、いい加減な生活振りを想像していたサクラだったが、部屋は存外片づいている。
事前に連絡無しの突然の訪問でこうならば、かなりの合格点だ。

「あ、先生、ちゃんと枕元に私達の写真飾ってるんだ。私も同じ場所に写真立て置いてるのよー」
にこにこ顔で振り向いたサクラは、その姿勢のまま凍り付いた。
鼻歌を歌うカカシはジャケットやシャツを脱ぎ捨て、さらに下に履いているものを脱ぎに掛かっている。
「・・・・先生、何で服、脱いでるの」
「何でって」
がくがくと膝を震わせているサクラに、カカシは優しい微笑で答えた。
「サクラとエッチなことするからに決まってるじゃん」
「ギャー!!やっぱりーーーー!」
ベッドに押し倒されたサクラは絶叫したが、カカシは構わずに彼女の服のファスナーを下げている。
どこをどうされたのか、慣れた手つきのカカシにかかればサクラはあっという間に下着姿だ。

 

「ナ、ナルトやサスケくんとも、こういうことしてたわけ!?」
「するはずないだろー。でもサクラは女の子だから、特別サービスv」
「何それーー!!ちょ、変なところ触らないでよ!」
「女の子が一人暮らしの男の家に来るってのは、全て
OKってことなの。これ、大人の世界のルール」
「私は子供だもの!!!そんなの関係ないわ!」
懸命に操を守ろうとするサクラはなりふり構わず大声を張り上げる。
それが功を奏したのか、ぴたりと動きを止めたカカシはしげしげとサクラの体を見つめた。

「・・・そうだったね」
自分の平らな胸を眺めながらの呟きに、非常に傷ついたサクラだが、背に腹はかえられない。
「じゃ、じゃあ・・・」
「俺が大人の女にしてあげるv」
「ギャーーーー!!!」
サクラの悲鳴にも動じず、頬、首筋、そして胸元へカカシの唇が触れる。
肌を這う湿った舌の感覚にサクラは鳥肌が立った。
「大丈夫大丈夫、痛くしないから」
「そういう問題じゃないっての!先生、言ってること無茶苦茶よーー!!誰かーー!!!」

 

確かに力では上忍に敵わないが、サクラは声量だけはカカシに勝つ自信がある。
ほぼ毎日、いのとカラオケに行って喉を鍛えているのだ。
誰かが助けに来ることに望みをかけるしかない。
騒ぎ続けるサクラを見下ろしたカカシは、困ったように眉を寄せた。

「サクラ、近所の人が驚くと悪いから“声がれの術”を使うよ。2時間もすれば元に戻ると思うけど」
サクラのすぐ目の前で片手の印を組んだカカシは、彼女の額をトンと叩いた。
術に掛かったサクラは、いくら声を絞り出そうとしてもぱくぱくと口を動かすことしか出来ない。
こうしてまな板の上の鯉となったサクラは、カカシに対抗できる最後の手段を無くしてしまった。

 

 

 

「おはよー」
カーテンを開けて朝の日差しを部屋に入れたカカシは、輝くような笑顔でサクラに声をかける。
心なし、肌もつやつやに光っているように見えた。
対してサクラといえば、寝不足のやつれ顔で掛け布団にくるまっている。

「気持ちのいい朝だねぇ。快晴の空だよ」
「・・・・」
「サクラのお母さんには、急に泊まり込みの任務が入ったって連絡しておいたから」
「・・・・」
「朝食はご飯とパンとどっちがいいかなぁ」
「・・・・」
「・・・・・何か、怒ってる?」
「怒ってるわよ!!!」
がばりと起きあがったサクラは、鬼のような形相でカカシを睨み付ける。

 

「痛くしないって言ったじゃない、嘘つき!!死ぬかと思ったわよ!」
「だってサクラ体小さいし、無理しないと入らなかったんだもん。それにサクラがめちゃくちゃ締め上げるから、こっちだって大変だったんだよー」
明け透けな物言いをするカカシにサクラの顔は瞬時に真っ赤になる。
「先生の馬鹿!!」
「次からはもっと楽になるから大丈夫だって。・・・・たぶん」
カカシに頭を撫でられたサクラは、その言葉にカッと目を見開く。
反応したのは、随分と躊躇して発せられた「たぶん」ではなく、「次」という部分だ。

「次ってなによ、次って!もう絶対先生となんて嫌だからね」
「今度サクラの家に家庭訪問に行くから、よろしくねー。あ、事前にご両親が留守の日を教えておいてくれないと駄目だから。夜でも昼間でも良いよ」
にこにこ顔のカカシを横目に、サクラは額に青筋を立てる。
「親がいないと家庭訪問の意味がないでしょ!!ちょっとは人の話を聞きなさいよ、馬鹿ーーーーー!!!!」
「ハハハ、サクラは本当に可愛いなぁ〜v」
軽やかに笑うカカシは、サクラの頭をぽんぽんと叩く。
その耳に、サクラの訴えが届いていないのは明白だった。


あとがき??
大人というか、先生がずるいのです。
サクラを家に入れるなりさっそく行動に出るところが、本能のまま生きている感じ。
いや、原作の先生の家、あまり広くなさそうだったし。(うろ覚え)


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