猫になりたい 2


最初は抵抗していたサクラも、カカシの必死の説得によって身体を医者に診せることを了承した。
親にも相談していない謎の奇病。
なるべく人に知られたくなかったが、命にかかわるかもしれないと脅されては仕方が無い。
診てくれる医者はカカシの知人で、病の原因は採取した血液等を検査しないとはっきり判断できないとのことだった。

 

 

「家に、帰りたくない・・・・」
診察室から出てきたサクラは、沈んだ表情で呟く。
待合室に待っていた7班の面々は、驚きに目を見開いた。
「え!?」
「朝は何とか誤魔化したけれど、絶対ばれちゃうもの。ねぇ、ナルトの家に泊めてくれない」
「ななな、何で!!!!」
「だって、ナルトだったら家族がいないし」
詰め寄るカカシに、サクラはさらりと答える。

「俺は別にいいってば・・・グゥッ!!」
カカシに横腹を叩かれたナルトは、うめき声をあげてうずくまる。
「サクラ、ナルトの家なんて掃除はしてないし、散らかってるし、不衛生だぞ!うちにしろ、うちに」
「・・・そうねぇ」
「俺も家族はいないし、空き部屋は沢山ある」
さり気なく口を挟んだサスケをカカシは睨みつける。

「サクラ、うちは三食昼寝つきで小遣いも出すぞ!!」
「カカシ先生の家にするーー」
瞳を輝かせたサクラは当初の目的も忘れてカカシに抱きついた。
このとき、ナルトとサスケの頭には「大人は汚い!」という言葉が深々と刻み込まれたという。

 

 

 

 

「先生―、変じゃない?」
「うん、うん。可愛いぞv」
風呂上りのサクラはカカシの古着のシャツを着ていたが、袖は三回まくってもまだ長い。
見えかかった肩と鎖骨、ほんのりと色づいた肌が普段のサクラとはまた違った雰囲気を作り出している。
猫耳オプションをつけたその姿は、見ているだけで顔が綻ぶ可愛らしさだ。

「サクラ、冷たいお茶飲むか?ジュースもあるけど」
「お茶がいい」
「はい」
カカシは冷蔵庫から出した茶をコップに注ぎ、サクラに手渡す。
すっかりほのぼのムードのカカシだったが、サクラは家に入ってからずっと浮かない表情だった。
コップを握り締めたサクラの目からは、やがて涙が滲み出してくる。

「サ、サクラ?」
「先生、私、ずっとこのままだったら、どうしよう。もしかしらたら、このまま悪化して完全に猫になっちゃうかも・・・・」
言葉にしてしまうと、サクラの不安はさらにあおられた。
サクラの涙は、止まらなくなる。

サクラの持つコップを取ると、カカシは彼女の頭にそっと手を置いた。
「そのままでも、いいじゃないか」
俯いていたサクラは、その言葉にハッと顔をあげる。
「サクラがよければ、ずっとここにいればいいよ」
「・・・気味悪くないの?」
「何で」
問いかけるサクラに、カカシは笑顔を返す。
「どんな姿になってもサクラは俺の大事な生徒だよ。たとえ猫になっても、何も変わらない」
「カカシ先生・・・・」

カカシの声と笑顔は、悲しみで一杯だったサクラの胸に重く響いた。
感極まって飛びついてきたサクラを、カカシは優しく抱きしめる。
そして、互いの唇までの距離が縮まったそのときに、邪魔者の来訪を告げるドアベルがけたたましく鳴った。

「先生」
無視して続行しようとしたカカシを、サクラは眉をひそめて促す。

 

 

 

「あ、カカシさん」
「お前か」
渋々向かった玄関先に立っていたのは、カカシの知り合いの病院で助手をしている若者だった。
「サクラさんの病は『猫耳病』でした」
「やっぱり・・・・。何かの本で見たことあったけど、本当にあったんだ」
神妙な顔で告げる助手に、カカシは納得気味にうなずいた。

『猫耳病』は特殊な菌を持つ猫に噛まれることによって、まれに人に感染する病だ。
症状としては、猫のような耳、尻尾が体に生えてくる。
放っておいても一週間程度で治るが、薬を飲めばすぐにも完治する病だった。

 

「それと、これ、頼まれていたものです」
「有難う」
紙袋を受け取り、にんまりと笑ったカカシの顔を助手は訝しげに見つめた。
「あのー、カカシさん。それ、『猫耳病』を長引かせる薬と、猫を酔わせるマタタビなんですけど、本当にいいんですか??」
「うん、ばっちり。これで暫く楽しめそうだよv」


あとがき??
投票で皆様に『猫になりたい』の続きを選んで頂きました。
一位は「カカサクで微エロ」。(笑)
ちなみに、次点は「乱入したイタチ兄にサクラをさらわれる」でした。
イタチ兄の人気にびっくり。
余裕があったらそちらも書いてみたいです。というか、書きます。鮫さんも出して。
イタサク、イタサク、イタサクサス?

サクラちゃん、アニメで「お金にはがめつい」と自分で言っていたので、カカシ先生の「お小遣い」発言に釣られてしまったのですね。(笑)
あと、『カルバニア物語』のリカルド王とタニアの会話が元ネタ。
前半は『魁!!クロマティ高校』の高橋先輩が元ネタだけど。
しかし・・・・カカシ先生はやっぱり悪だな。
その後サクラがどうなるかは、皆様のご想像にお任せします!(逃)


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