二番目の人
「カカシ!」
立ち上る煙に気づいた先生はすぐに駆けつけてきた。
その必死な顔を見ると、本当に可愛い人だと思える。
年上なのに、可愛い。
こんな風に感じられる大人はそう何人もいないに違いない。「駄目だろ!!どこで買ったんだ」
「二丁目の雑貨屋」
「全く!子供相手に、何やってるんだか」
自分から煙草を取り上げた先生は、ひどい剣幕でその箱を握りしめた。
おそらく、先生はこの日のうちに二丁目の雑貨屋に注意しに行く。
そうなると、次は四丁目の煙草屋だろうかと考えた。本当は煙草でも薬でも何でもいいのだ。
この人の気を引くためならば。
「先生、俺のこと心配?」
「ああ」
「俺のこと好き?」
「自分の生徒だし、当然だろ」
「じゃあ、俺のこと一番に好きになってくれる?」
顔を覗き込むと、先生は難しい表情で自分を見つめる。
俺の問い掛けはいつもそこで引っかかるんだ。「一番は他にいるから、無理だ」
申し訳なさそうに言う先生に、無性に悲しい気持ちになる。
子供の言葉なんて適当に相槌を打っておけばいいのに、この人にはそれが出来ない。先生には片思いの彼女がいるらしい。
何てもったいないことをする女だろうと、自分はため息を付く。
先生ほどの良い男は、この地上どこを探してもいないだろうに。
二親はとっくに死んだ。
かまってくれる親戚縁者もいない。
自分のことを親身に考えてくれる大人は、先生だけだった。優秀な先生はどんどん出世していき、自分もすぐに中忍試験に合格。
先生に褒めてもらいたかったから。
どんなことでも頑張ってやった。
嬉しそうに笑って頭を撫でてくれるあの人が大好きだった。
それが初恋だったと知ったのは、彼が死んだ後のこと。
そして自分は12年振りに煙草を吸い始める。
「カカシ先生!!!」
任務の休憩中、椅子に腰掛けて煙草を吸う自分にサクラが目くじらを立てている。
「煙草は体に悪いって言ったでしょ!やめてって言ってるのに」
有無を言わさず煙草を奪い取り、サクラは携帯用の吸い殻入れにそれを押し入れた。
自分が何度注意してもやめないために、それを持ち歩くようにしたようだ。「サクラは怒った顔が一番可愛いかもね」
「何馬鹿なこと言ってるのよ!!」
にっこりと微笑む自分に、サクラは金切り声をあげる。
だとしたら、年中怒った顔ばかり見ている自分はかなりの幸せものだ。
似ているのは、生真面目で、面倒見の良い優しい性格だけ。
ニコニコでサラサラな先生で対し、サクラはガリガリでツヤツヤ。
それでも、14も年下の少女に自分は二度目の恋をしている。「サクラ、俺のこと好き?」
「・・・・担任だし、嫌いじゃないわよ」
「変な答えー」
つっけんどんな態度だけれど、サクラは自分の隣りに大人しく座ってる。
そばにいて、疎ましいとは思われていないようだ。
「じゃあさ、俺のこと一番に好きになってよ」
「無理!私の一番はサスケくんだもの」
初恋は実らないものだと聞いた。
だけど、彼女は二番目の人だから。
もう自分は諦めるわけにいかないんだな。
あとがき??
元ネタは三原ミツカズ先生、『死化粧師』の「嘘つき」(ラスト部分)。
これを読むとカカサクやらサスサクやらネタの宝庫で、どんどん駄文を書きたくなります。
しかし、この話はケイ太さんに頂いた限定本の影響も出ている気が・・・・。
カカシ先生が甘えられるのは四代目とサクラ、という部分が。
しかしこの四代目のイメージはイルカ先生ね。