メジルシの記憶 4


「なーんでこっち見てくれないのさ」
「・・・・」
すっかりへそを曲げてしまった彼女は、彼の方を全く振り返らない。
名の通った忍者である彼は、常に多忙。
久しぶりのデートだというのに、彼が告げたのは再び任地に赴くという、全く嬉しくない話だった。
茶店から出た彼女は、宥め賺そうとする彼を無視してずっと俯いたままだ。

「半年なんて、すぐだよ。桜が咲く頃には、帰ってくるから。そうしたら、もうどこにも行かないよ」
「・・・本当に」
傍らにいる彼女は、顔を上げずに声を出す。
表情は窺えないが、涙の混じる声は、十分にその心情を彼に伝えていた。
「絶対、絶対、帰ってくる?」

 

 

何にも代え難い、大切な人。
この任務さえ終えれば、危険な任務の少ない部署に移れる。
長期の任務のたびに彼女を泣かせることなく、ずっと、一緒にいられるはずだ。
桜の花の下でプロポーズをしたら、彼女はどんな顔をするだろうか。

「俺にはここより他に、帰る場所なんてないよ。サクラ」

 

 

 

夢に出てきたのは、今より少し髪の短い彼女と忍びの服装をした自分。
寝ぼけ眼で半身を起こしたカイは、高いびきを書く同室の友を起こさないよう、宿の廊下に出る。
嫌にリアルな夢だった。
今でも、彼女をいとおしく思う気持ちが鮮明に残っている。

流しで顔を洗ったカイは、備え付けの鏡を凝視した。
眼帯に隠されていた左目。
禍々しい赤い瞳は不吉なことの前触れだと思っていた。
これを見せていたら、あの老人と彼女は、何と言っただろうか。

 

 

 

 

「あれは、カカシだろ」

単刀直入に切り出したサスケに、ナルトは思わず苦笑いをする。
二人が今いるのは、木ノ葉の忍びの多くが行き付けにしている、24時間営業の食堂だ。
その日の任務が終わったあと、彼らは連絡を取りこの場所で落ち合った。
カイという男が里を離れる前に、互いに話しておきたいことがあったからだ。

二日前、カイの面通しはカカシとごく親しかった者に召集が掛けられて行われた。
里を留守にしていたナルトとサスケがカイと会ったのは、サクラのすぐ後だ。
ナルト達を見てもカイは不機嫌そうに視線を逸らしただけだったが、どうしてか、二人にはすぐに分かった。

「何となくそうかなって思ったけど、サクラちゃんを見たら確信したよ」
ナルトは深いため息と共に呟く。
カイを見詰めるサクラの瞳。
あれは以前、サクラがカカシに向けていたのと同じ眼差しだ。
火影以下、多くの忍び達が戸惑う中でサクラはカイとカカシが同一人物であることを強く否定した。

 

 

「サクラは何で、カカシじゃないと火影に言ったんだ」
「それだけ先生のことが大事だって、ことじゃない?」
首を傾げるサスケに、ナルトは分かったような口振りで答える。

ナルトの目に、カカシの隣りにいるときのサクラは幸せそうだけれど、時折、酷く辛そうに見えた。
忍びであるかぎり、付きまとう死の陰。
優秀な忍びであればあるほど、死の確率の高い任務が舞い込む。
そんな生活から、サクラはカカシを解放したかったのかもしれない。
たとえ、もう二度と会うことがなくても。

 

「黙っているつもりか」
「だって、サクラちゃんの一世一代の嘘、つきとおさせてあげたいじゃん」
笑顔で語るナルトを、サスケは鼻で笑った。
「馬鹿だな」
つまらなそう言うとサスケは運ばれてきた膳のものを食べ始める。
困ったように笑ったナルトは、その言葉を否定することなく、茶碗を手に取った。


あとがき??
結末、考えてなかったり・・・。
今年中に完成させます。(気が長い)
これ書いている途中でサスサク祭りが始まってしまったため、執筆が止まっていた。
こんなカカサクでイッちゃってる駄文、骨の髄までカカサクモードに入っていないと完成させられません。
ちなみにサスケが「馬鹿」って言ったのは、サクラのことだけじゃないですよ。
というか、サクラのことじゃないかもしれない。
元ネタは『はいからさんが通る』のような気がしてきました。

(追記)
『冬のソナタ』を見ていたらこの作品のことを思い出して、手直し&アップしてみた次第です。
5のサブタイトルはきっと「誰も知らないラストシーンが待っている・・・・」です。(←『タッチ』劇場版?)
書いている本人ですら続きどうなるか知らないので。あれ。
当時、サスサク祭りなんかやっていたんだなぁと目を細めてみたり。
・・・・これ本当に私が書いていたんだろうか。サ、サスサク祭り?!考えられない。
5は手直しではなくいちから書かなければならないので、もう暫くお待ち下さい。


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