メジルシの記憶 6


再会を約束した桜の木の下。
気づくと、その場所に来ている。
彼が来ないことを知っていても、止められない。
帰ってきたら、この場所で伝えたいことがあると言っていた。

 

「もう、桜の花、散っちゃったよ。先生」
幹に寄りかかりながら座るサクラはぽつりともらす。
だが、聞いてくれる人は誰もいない。
「駄目だわ、こんなんじゃ・・・・」
眦に滲んできた涙を拭うと、サクラは瞼を閉じる。
誰に何を言われても、彼が生きていることを信じていた。
そして、それは事実だったのだ。
彼が元気な姿を見せてくれたことだけで満足なはずだったのに、心の寂しさはどうしても消せない。

そばに、いて欲しいと願ってしまう。
抱きしめて、あのぬくもりをもう一度感じたいと思ってしまう。
名前を、呼んで欲しい。
優しい笑顔をもう一度見たい。
時が経てば経つほど、彼への想いの深さを思い知る。
泣かないと決めた。
彼のことを思い出すだけで、その決意はあっさりと崩れてしまうのだ。

 

 

 

「先生・・・・」
「はーーい」
その声を聞いたサクラは、弾かれるように顔をあげる。
目の前に、カカシがいた。
いなくなった当時の、そのままの服装で。
一体いつからその場所にいたのか、サクラに全く気配を感じさせることなく、立っている。
記憶喪失のカイには絶対に出来ない芸当だった。

「ただいま」
にっこり笑ったカカシは、時のブランクを全く感じさせない。
昨日今日別れたような口振りだった。
「立てる?」
手を差し出されたサクラは、促されるままに立ち上がる。
それでもまだ、信じられない。
何度も夢に見たカカシの帰郷。
話しかければ、またいつものように消えてしまうのではないかと不安になる。

 

「また遅刻しちゃったねぇ」
葉の茂る桜の木の枝を見たカカシは、苦笑して言う。
その声、しぐさの一つ一つがサクラの心に染み入るようだった。
これが現実なのだと、ゆっくりと呑み込んでいく。
「そうそう。サクラにお土産買ってきたんだ。はい」
カカシが懐から出したのは、ケースに入ったダイヤの指輪だ。
任務に向かう前、事前に買っておいたそれは、片付けられることなくカカシの家に保管してあった。
その指輪が意味することは、もちろん決まっている。

「結婚しよう」
「嫌」
言われた瞬間、口を付いて出ていた。
喜んで抱きついてくることは予想していても、拒絶されると思っていなかったカカシは目を丸くしている。
「私、もうこんな思いをするのは嫌なの。先生が帰るのを、胸がつぶれそうな気持ちでずっと待っているのなんて嫌」
カカシから目をそらしたサクラは掌を握り締めた。
残された人間の気持ちを知らない彼が憎らしくてたまらない。
だが、それ以上に彼のことがいとおしいのだから、仕様がなかった。

 

「もう、私を置いてどこにも行かないって約束してくれるなら、結婚する」
彼の答えを聞く間もなく、サクラは彼の腕の中に飛び込む。
「おかえりなさい、先生」


あとがき??
長々と気になっていた作品が終わってホッとしました。
たぶん1年前だったら完成できなかった。
有難う。『冬のソナタ』。この作品のおかげだ。
カカシがチュンサンなら、カイはミニョン、サクラはユジンかー。あれ、サンヒョクは??
ナルトかサスケにサンヒョク役をやらせても良かったですね。
そうしたら、また話が長々しくややこしくなっていたと思いますが。(^_^;)
キム次長は誰だ。

ちなみにサスケが「馬鹿」と言った相手はカカシ先生です。
あーんな可愛い彼女がそこまで思ってくれているのに、気づかないのは馬鹿だなぁと。


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