Seventh Heaven
アカデミーの教室の一つが懺悔室として使われていることはあまり知られていない。
日々、苦労の多い忍びの仕事。
悩みを内に抱え病になってしまう者もいる。
救済のために作られた部屋では、神に仕えるシスターが、今日も苦しむ人々の相談相手となっていた。
「迷える子羊よ。入りなさい」
おずおずと扉の陰から顔を出したのは、昨年行われた試験で中忍になったばかりの青年だ。
略式とはいえ、異教の神を祀った祭壇は厳かな雰囲気を醸し出している。
おどおどと周りを目回す青年に対し、純白の尼僧服を着たシスターは柔らかく微笑んだ。
「どうしました?」
聖母マリアを彷彿とさせる、慈愛に満ちたその笑顔に彼は惚けたように立ちすくむ。大きな悔恨の念を抱きながらこの場所に来たはずだ。
だが、彼女の顔を見ただけで、全ての罪が浄化されるような。
彼の目の前にいるシスターは、そんな不思議な空気を纏った人だった。
「づ、づがれだ・・・・」
人の気配がなくなると同時に、尼僧服の少女はがっくりと椅子に座り込む。
頭につけた白いキャップを取ると、彼女のピンク色の髪の毛があらわになった。
バイトのため、臨時シスターとなったサクラは、もちろん改宗したわけではない。
「うう。高額バイト料につられてシスターなんか引き受けた私が馬鹿だったわ。閑古鳥が鳴いているから誰も来ないなんて、嘘ばっかりじゃない」
言いながら、サクラは頬をつねり皮膚を上下に伸ばす。
長時間、無理に笑顔を作っていたせいで、他の表情を忘れてしまいそうだった。懺悔室に訪れる人がまばらだったことは本当だ。
数日前からの大盛況は、新たに配属された可愛いシスターが原因だったのだが、そうした事実をサクラは知らない。
「あの、シスター・・・」
「はいはい」
扉を叩く音に気づいたサクラは慌ててキャップを付け、髪を隠した。
顔を2、3度撫でてから、笑顔を貼り付ける。
「どうぞ。お入り下さい」
「こんにちはーーー」
元気良く入ってきた男は、悩みなど一切ないと思われる満面の笑みでサクラに挨拶をした。
思わぬ人物の登場に、サクラはあやうく叫び声をあげそうになる。
知人などという言葉は生やさしい。
彼はそれまで毎日顔を合わせていた、サクラの担任のカカシだ。
里に属する忍びはバイト禁止、という条例を思い出しつつ、サクラは冷や汗をかきながらカカシに向かい合う。「神の前では皆平等です。悔いを改めれば幸せへの扉が必ず開かれます。さぁ、胸の内をお聞かせください」
「・・・・シスター、俺の知り合いに顔がよく似てるんですけど」
「気のせいです」
サクラはそれまで通り、鏡の前で練習した完璧な作り笑顔で答える。
このままそっくりさんで押し通せるならば、良し。
ばれれば、最悪、下忍の資格が剥奪されるという事態になってしまう。
「あのー、好きな女の子がいるんですけど、その子が全然ふりむいてくれないんですよ。どうしたらいいでしょう」
「あきらめましょう」
カカシが言い終える前にサクラは即答する。
「でも、本当に本当に好きなんです。結婚を前提にお付き合いもしたいと思っています」
「相手にその気がなかったら、しょうがないです。嫌われる前に身を引きましょう」
「それが出来たら、苦労しないんですよね。シスター」
意味ありげに笑うカカシは、馴れ馴れしくシスターの肩へと腕を回して話しを続ける。
「この間なんて、せっかく家に招待したのに逃げるように帰っちゃったんですよ。それ以来任務を放棄してバイトを始めたらしくて。とんだ不良なんです、彼女」
「先生が無理矢理家に連れ込んで変なことしようとしたからでしょ!!」
堪忍袋の緒が切れたサクラは、金切り声と共にカカシの手を振り払った。「気づいているならさっさと帰ってよ!!」
「えー、ちょっと話が違うんじゃないの。ここに来れば優しいシスターが悩み事を解決してくれるって聞いたのに」
「相談にのるだけです」
「でも、俺の悩み事はシスターにしか解決できないんだけどなぁ・・・・」
その視線と言葉の端々に不穏な空気を感じたサクラは出入り口の扉へと猛ダッシュをする。
前回のように突然押し倒されてはたまったものではない。何とかカカシよりも早く扉の前まで駆けつけたサクラだったが、その引き戸はどんなに力を加えてもびくともしなかった。
「あ、開かない!!?何で!!」
「逃げても無駄だよー」
背後のカカシに両肩を掴まれたサクラは甲高い悲鳴をあげる。
「白って汚しがいがあって良い色だよねぇ・・・・サクラみたい」
振り向いた先にいるのは、悪魔の微笑を浮かべるカカシだ。
サクラの純白の尼僧服を舐めるように見たあと、カカシはさも楽しげに笑ってみせた。
「捕まえたv」
「あの、中から助けを求める人の声が聞こえたような・・・・」
間髪入れず、何か壊れるような音が室内から響いてくる。
怪訝な表情で顔を見合わせる忍び達に、ナルトは明るい笑顔で手を振った。
「あー、気にしない、気にしない。ちょっと取り込み中だから」
懺悔室の扉にはナルトによって外から南京錠が付けられている。
全てはカカシの命令だ。
廊下には美少女シスターを一目見ようとやってきた忍者が大勢いたが、見張り役のナルトがうまく順番待ちの列を整備していた。「あ・・・・、静かになった?」
「はい、皆さん。本日はこれにて懺悔室をお開きとさせて頂きますー」
「ええーーー!?」
「また次の機会にお願いします」
すっかり進行役となったナルトが頭を下げると、待機していた忍者達は仕方なく帰路につく。
だが、不平を言いたい気持ちはナルトにしても同じだった。「俺だってサクラちゃんの尼僧姿、見たかったのにさー。先生ばっかり、ずるいってば」
ぶつぶつと不満をもらしながら、ナルトは扉に「面会謝絶」の札をくっつける。
中がどんなことになっているか興味はあるが、上忍相手に覗きがばれない自信はない。
それでも、名残惜しげに扉を見やるナルトは小さな声で呟いた。
「・・・・明日もやってるのかな」
あとがき??
え、エロ!!
元ネタは『魁!クロマティ高校』。メカ沢くん(?)が懺悔室の神父をやっていました。
ここまで内容いじったら元ネタもなにもない気がしますが。あれ。
コスプレサクラを書きたかっただけなのですよ。尼僧姿のサクラの外見はエステルだと思ってください。
私のシスターサクラに会いたい・・・・。