Happy Family


「あ、怪我してる」
サスケの人差し指に擦り傷を見つけたサクラはポーチから傷薬を取り出した。
だが、サスケは首を振って治療しようとする彼女を拒む。
「こんなかすり傷、なめておけば治る」
「そっか」
頷いたサクラは、掴んだサスケの掌を自分の口元へと持っていく。
指先を這う柔らかな舌の感触に仰天したサスケは慌ててサクラを振り払った。
「じ、自分でやる」
「ごめんなさい。つい」
えへへっと笑うサクラと頬を赤くしたサスケを、カカシとナルトが厳しい顔つきで睨んでいる。

「サクラちゃんってば、ずるい!!俺がさっき怪我したときは、こんな包帯ぐるぐる巻きにしたのに」
「え、それの何が不満なのよ」
「俺だってサクラちゃんになめて治してもらいたかったってば」
「・・・・血、だらだら流れてたじゃない。そんなのいちいちなめていられないわよ」
「そうだ。ばーーか」
サクラに追随するサスケの言葉に、ナルトは頭に血を上らせた。
「何だと、こら!」
「馬鹿だから馬鹿と言っただけだ」

 

喧々囂々と言い合う二人は、サクラの「やめて!」の声はまるで耳に入っていない。
「もう!どうして喧嘩ばかりするのかしら」
「本当にねー。サクラ、ちょっといい?」
「え」
カカシに肩を叩かれたサクラは、振り向きざまに唇を奪われる。
目を見開くサクラの傍らで、ナルト達の言い争いはぴたりと静まっていた。
突然のことに唖然としていたナルトだったが、我に返るなり二人の間に体を割り込ませる。

「な、な、何してるんだよ!」
「消毒。ほら、むやみに他人の血をなめたりすると病気が移ったりして駄目なのよ」
「お前とキスする方が変な病気を移されるだろう」
心外だとばかりに言い返すサスケを見下ろし、カカシは笑いながら口元の布を戻した。
「だいじょーぶ。俺、虫歯ないしv」
「そういう問題じゃない」

諍いはカカシにも伝染し、三人は先ほどよりも熱く激論を交わしている。
サクラが止めたところで、耳を貸したためしはないのだ。
額を押さえたサクラは目の前の見慣れた光景にため息をつくしかなかった。

 

 

 

「カカシ先生、許せないってばよ!」
「ナルトがキスされたわけじゃないでしょ」
任務が終了し、帰路についてもまだ怒っているナルトにサクラは首を傾げる。
「うっ、で、でも、自分にされるよりショックだってば。サクラちゃんは平気なの?」
「先生のセクハラは今に始まったことじゃないしねぇ。今日はましな方よ」
腕組みをしたサクラは考えるようにして呟く。
少なからずナルトに衝撃を与えた一言だったが、他にどのようなことをされているのかは、恐ろしくてとても訊けない。

「ナルト、カカシ先生のこと大好きだったじゃない。抱きついたりして。このごろ突っかかっていくことが多いのはどうして?」
「・・・・」
不思議そうに訊ねるサクラに、ナルトは暫し無言になる。
ナルトにとって、サクラに興味を持って近づく男は全員敵だ。
そういう意味で近頃サクラにちょっかいを出すカカシを敵視しているナルトだったが、彼女は微塵も気づいていない。
こうした鈍感なところも彼女の魅力とはいえ、ナルトは複雑な心境だった。

 

「私はね、7班のみんなを家族みたいに思っているの」
「・・・家族?」
「そうよ。お母さんが私。お父さんが・・・・」
「俺」
「ブーー、はずれ」
サクラは口元に手を当ててくすくすと笑う。
「お父さんがいなくて、騒がしい子供が3人。ぴったりでしょー」
笑顔のサクラを横目に、ナルトは口を尖らせた。

「俺は旦那役にしてくれないの」
「3人の中でナルトは一番子供じゃないの。もうちょっと勉強頑張って成長してくれないとね」
「ちぇー」
ぶつぶつと文句を言うナルトの頭を、サクラは優しく叩く。
「手間のかかる子が一番可愛いものなのよ」

 

 

少々間の抜けた上忍カカシとクールなサスケ、お馬鹿なナルト。
サクラにとって、みんな家族同然の大事な仲間だ。
仲良くして欲しいのだが、何故か班内の雰囲気は日に日に悪くなっているような気がしてならない。
彼らの喧嘩の原因が主に自分にあるとは、思いもしないサクラだった。


あとがき??
サクラが一番幸せという話。
元ネタはそのまま『ハッピー・ファミリー』です。
イメージ的には、うづし夫=カカシ、まゆら=サクラ、なると=ナルト、岡内=サスケ。
なるとと岡内はもっと仲良しさんですが。
元ネタのせいか、7班サクラ受け話のはずが何故かナルサクっぽい。
何気にカカシ先生を贔屓している気もしますが。(笑)大目に見てください。


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