サクラスキー
「お前が教え子のくの一に粉かけてるっていう、みょーーーーーな噂を聞いたんだけれどね」
「事実ですよ」
任務の報告書を提出した帰り道、火影の執務室に呼び出されたカカシは、綱手の言葉をあっさりと認める。
「自分好みの可愛い子が近くにいるのに、くどかなければ男がすたるでしょう」
「だーーー!!あんた達は教師と生徒で上司と部下なの!オフィスラブ禁止!!」
「そんなの理不尽ですー」
カカシは不満げに口を尖らせて反論した。
机の前で足を組み、額を押さえた綱手は大きな大きなため息をつく。「あんた、アレなの?」
「はぁ」
「今まで浮いた話がなかったそうだけど、同じ年頃の女性より、あーゆーちっこい子が好きなわけ」
「あーー・・・・」
頬に手を当てたカカシは、真剣な表情で考え出す。
確かにサクラは好みのタイプだ。
だけれど、それは彼女の年齢が低いからなのかと尋ねられると、よく分からない。
ただ、何となく彼女のそばにいたいと思うだけだ。綱手としては、カカシが肯定するようならば、彼から教師の資格を剥奪するつもりでいた。
これから先、受け持つ生徒が変わるたび、くの一に手を出されては先方の親からも苦情がくる。
今はまだサクラはカカシを歯牙にもかけていないようだが、もし彼女がカカシに興味を持てば、それこそ不幸だ。
十二の少女のうちは良いとしても、成長し女らしい体つきになれば、いずれカカシに捨てられるときがきてしまう。
カカシの様子を眺める綱手は、悩み続ける彼に痺れをきらし、戸口に控える特別上忍に目で合図をした。
「じゃあさ、分かりやすいようにしてあげる」
「え?」
「彼女達をこの部屋に入れて」
特別上忍に促され、入ってきた者達を見たカカシはこれ以上ないほど目を見開いた。
サクラだ。
正確には、サクラとよく似た顔をした二人の人間。
二十歳ほどの女性は長い髪を背中にたらし、サクラが成長すれば必ずそうなると思われる容姿をしている。
もう一人は、頭に赤いリボンを巻いた五、六歳の少女。
特別上忍と手を繋ぎ、はにかんだ笑顔を見せているのが愛らしい。「大人と子供、どっちのサクラに魅力を感じるか言ってごらん」
「か、彼女達は・・・」
「未来と過去の世界からサクラを連れてきたんだよ。まぁ、方法は火影だけが知ってる企業秘密ってやつでね。長くはもたない術なんだけど」
綱手がくどくどと説明している間、カカシはずっと二人のサクラを凝視していた。
「凄い、どっちも本物のサクラだ。この匂い、髪の手触り、肌の感触」
「って、こらこら。無断で彼女達に触らないように」
交互にサクラ達の頭や手に触っているカカシを見咎め、綱手は厳しく注意する。
だが、満面の笑みを浮かべたカカシの耳には綱手の声などまるで届いていなかった。「やったーーーー!!!今夜は4Pだーー!!」
「え・・・・」
「サクラ天国!!火影様、有難うーーーー!!」
大人サクラと幼児サクラを素早く両脇に抱えたカカシは、歓喜の声を残して外に飛び出していく。
思いがけない事態に呆然とした綱手は、恐る恐る傍らの特別上忍を見上げた。
「・・・何だか、非常にまずいこと言っていなかった?」
「手遅れにならないうちに、早く追いましょう。おそらく十二歳のサクラのところです」
春野家に向かったカカシは、綱手の命を受けた上忍達によって首尾よく捕らえられた。
拘置所に入れられたあとも、往生際が悪く「サクラー!」と叫んでいる。
その声は悲痛なものだったが、これでカカシの幼児愛好家疑惑に終止符が打たれたようだ。
上忍はたけカカシは、ただのサクラ馬鹿。
大きくても小さくても、“春野サクラ”という生き物に過剰に反応するらしいということ。「サクラにとっては、こっちの事実の方が不幸じゃないかねぇ」
執務室の椅子に腰掛ける綱手は腕組みをしながら呟く。
「彼女達は、もといた世界にちゃんと帰したかい?」
「ええ。五歳児のサクラには記憶操作をしたので、今回のことは覚えていないはずですよ」
「そう・・・・」
「それで、二十歳のサクラから伝言なんですが「馬鹿な亭主が迷惑をかけてすみません」とのことです」
「・・・・亭主?」
特別上忍を見た綱手は不思議そうに首を傾げる。「ええ。彼女は未来のはたけ夫人ですから」
「えー、何だ、結局カカシに捕まっちゃうわけ!?」
「でも幸せそうでしたよ。お子さんもいらっしゃいましたし」
「へぇー」
意外な気がしたが、他人にあれほど好かれるというのも滅多にないことかもしれない。
しかも、普段はおよそ頼りないカカシだが、里では指折りの上忍なのだ。
「でも、十二歳の女の子にカカシの相手は早すぎるわよね。あと三、四年は守ってあげないと」
真顔で語る綱手に、傍らに控える特別上忍もしっかりと頷いていた。
あとがき??
4Pって、カカシ先生・・・・・。いや、サクラが相手なら楽しそうだけどさ。先生、大変よ。
いいなぁ、新旧サクラ。
下品な話題で申し訳ございませんでした。