ゲーム
「お前、サクラちゃんと寝たことある?」
その瞬間、サスケは飲んでいた紙パックの苺牛乳を口から噴き出した。
「寝るっていうのはただ一緒に寝るんじゃなくて、お互い服を脱いで体を・・・」
「分かった、お前の言いたいことは分かった!」
神妙な顔で話を続けるナルトをサスケは必死に押し止める。
「一体何の話だ、それは」
「・・・・俺、見ちゃったんだよね」
急に肩を落としたナルトは、俯き加減に声を絞り出す。昨日の深夜、小腹の減ったナルトは近くのコンビニへと向かった。
菓子パンとプリンを買って帰る途中、ナルトは向かいの通りに知った顔を見つける。
フードを目深に被った少女、サクラだ。
いつもならば、すぐに声をかけていただろうが、このときの彼女の様子はどうも変だった。
きょろきょろと辺りを見回し、いやに警戒している。
気になったナルトは密かにあとをつけ、彼女が24時間営業のドラッグストアに入っていくのを見届けた。
問題は、サクラがそこで人目を忍んで購入していた物だ。
「妊娠検査薬だったんだ」
ナルトの一言に、サスケの手から苺牛乳の紙パックが落ちる。
中身が地面に広がっていくが、そのようなことに気を取られている場合ではない。
「サクラちゃん、年中俺達と一緒に行動しているわけだし、それらしい男の影とかなかったからさぁ。相手はてっきりお前かと」
「お、俺じゃない!やってない」
思わず声が上ずってしまったが、真実だ。
そして、ナルトから話を聞いたときに、サスケもある出来事を思い出していた。
「・・・・そういえば、2、3ヶ月前に俺も見た」
「え、何を?」
「サクラが夜に歩いていたのを」ある夜、サスケは暑さをしのぐために窓を開け、何気なく外を見やった。
そして、すぐ下の道を行く二人連れに目を留める。
外灯の下で見えた桃色の髪の少女は間違いなくサクラ、そして一緒にいる男にも見覚えがあった。
彼らの担任であるカカシだ。
次の日の二人は全く普段どおりでサスケもそのことをすっかり忘れていたのだが、今考えるとどうも怪しく思えてくる。
「白状してもらおうか」
昼食を終え、寝転がっていたところにナルトとサスケの強襲を受けたカカシは、目を白黒させて彼らを見上げた。
体は二人に押さえ込まれ、喉元にはクナイを当てられている。
上忍と下忍、逃げようと思えば出来るが、どうして彼らがこのような行動を取るのか知りたい。
「何のこと?」
「お前が赤ん坊の父親なんだろう。調べはついているんだ」
「・・・・え」
サスケの言葉を聞き、カカシの顔に明らかに動揺の色が浮かんだ。
ナルトのクナイをどけて半身を起こしたカカシは、逃げる気がないことをアピールしつつ考え込む。「二丁目のアケミちゃんのこと?それともルイちゃん?」
「・・・どこの女だそれは」
「サクラちゃんだっての!!」
ナルトの口から出た名前に、カカシはぽかんとした顔つきで彼らを見た。
「サクラにはまだ手を出してないよ」
「まだって何だ!まだって」
がなりたてるサスケの隣りで、ナルトは訝しげに問いかける。
「でも、サクラちゃんと二人で歩いていたんでしょう。夜中に」
「えーと・・・・・ああ、そういえば、任務から帰るとき道でサクラと一緒になったことがあったな。確か、いのちゃんの家から帰る途中だって言ってた。近所とはいえ、あんな遅くに出歩いちゃ駄目だって言った記憶があるよ」
頷きながら答えるカカシに、ナルトとサスケはさらに怪訝な表情になった。「じゃあ、一体誰が相手なんだ・・・・」
「何なのよ、さっきから。何の話なの?」
蚊帳の外のカカシは不思議そうに首を傾げている。
「あのさ、サクラちゃんが」
「馬鹿、言うな!」
サスケは慌ててナルトを止めたが、ときはすでに遅かった。
「サクラーーー!!!」
「ぎゃーー!!」
カカシに思い切り抱きしめられ、サクラは絶叫する。
「な、な、何」
「サクラ、相手の男はすぐ始末する。だから俺と結婚して一緒に子供を育てよう!」
「え、ええーー!?」
目の幅涙を流すカカシに見つめられ、サクラの頭は大混乱だ。
任務の休憩時間が終わるというのに他のメンバーの姿が見えず、サクラは彼らを探して公園をうろついている最中だった。
そしてカカシが突然現れたと思えば、この告白だ。
「大丈夫。予定より3年ばかり早まったけど、絶対に幸せにするから」
「何なの、ちょっと放してよ!」
自分に頬を擦り寄らせるカカシの束縛から逃れようとするが、非力なサクラの力では到底かなわない。「あー、ごめんねサクラちゃん」
あとからやってきたナルトはサクラに向かって申し訳なさそうに頭をさげる。
「どういうことよ、これは!」
「あのさ、俺、見ちゃったんだよね、昨日。サクラちゃんが薬屋に入っていくの」
「え」
「で、何を買ったのかも見ていて、それを知ったカカシ先生がこんなことになっちゃったわけ」
ナルトが話す間に、サクラの顔はみるみる赤くなる。
羞恥のため瞳に涙が滲んだが、カカシに押さえられていてはそれも拭えない。「あれは・・・違うのよ。私が使うんじゃないの」
俯いたサクラの顔は耳まで真っ赤だった。
「罰ゲームなの。いのの家にみんなで集まったときにトランプゲームをやって私がビリだったのよ。罰は買い物だったんだけど、物を「水虫の薬」「痔の薬」「妊娠検査薬」の中から選ばされて、私が引いたくじに書いてあったのがその薬だったの」
気が抜けたカカシが手を放すと、サクラはその場に蹲る。
「見られてたなんて、恥ずかしいーーー」
照れのために暫く立ち上がれたなかったサクラだったが、ホッと胸をなでおろした7班一同だった。
あとがき??
・・・つまらないオチで申し訳ない。冒頭が書きたかっただけです。苺牛乳を飲むサスケがお気に入り。
サクラ、随分遅くまでいのちゃんの家に入り浸っているのですね。
カカシ先生がいろいろと問題発言をしていますが、気にしないで下さい。