お子さま天下


仕事内容は、とある一軒家の留守番。
掃除や洗濯、その他片づけも含まれる。
カカシは別件の任務へと向かい、簡単な仕事ということで、代わりの上忍も付かなかい。
だから、7班の下忍達は大いに困惑していた。

 

「どーするんだよ、これー」
「さあな」
「子供がいるってのは聞いてたけど、一緒に出かけるって話じゃなかったのか」
「俺に言うな」
ぶつぶつと不平をもらすナルトに、サスケは怒鳴り声を返す。
二人の視線の先にいるのは、サクラの腕に抱かれる2、3歳の男の子だ。
家主が車で出かけたあと、子供部屋からひょっこりと顔を出した彼を、下忍達は持てあましている。
何しろ、手の掛かる子供だった。

「ジュースが飲みたい」と大泣きし、「車の玩具がない」と怒り出し、「おなかが痛い」と暴れ出す。
手の着けようがない。
洗濯の合間、唯一サクラがなだめたときだけ、大人しくなった。
サクラにだっこをされてご満悦な彼に、ナルトは鋭い眼差しを向けている。

「・・・・サクラちゃんにくっつきすぎだっての」
「子供に焼いてどうする」
「子供でも何でも駄目なの!!」
サスケの目には、両手を振り上げて癇癪を起こすナルトの方がよほど子供じみて見えていた。

 

 

 

「サクラちゃん、よく平気だよねぇ・・・」
背中にくっついてくる子供をあやしながら洗濯を畳むサクラに、叩きを持って掃除中のナルトは訝しげに訊ねる。
何かとサクラの作業を邪魔してくる子供に、彼女は嫌な顔一つしていない。
ナルトを見上げたサクラは、にっこりと笑って答えた。
「だって、何だか顔が先生に似てるし、可愛いから許せちゃうわよ」
「え・・・」
言われて初めて、ナルトは子供の顔をまじまじと見る。
白い髪に青い目、もちろん額当てとマスクはしていないが、確かに同じ系統の顔立ちだ。

「げー、本当だー」
思わず柔らかな頬を引っ張ったナルトに、子供は思いきり噛み付いた。
「イッテーー!!!」
「ちょっとナルト、乱暴しないでよね!」
自分の方が絶対に痛い思いをしたというのに、子供をかばうサクラにナルトは頬を膨らませる。
そして、べそをかく子供が手足を振り回したせいで、持っていたジュースの中身がそこかしこにこぼれてしまっていた。

「あーあ、また洗濯のし直しかしら」
汚れてベタベタになった子供の髪や手足、服を見ながら呟くと、彼はサクラに掴まりながら何度も繰り返した。
「お風呂、入ろ。お風呂」
「え」
自分に抱きついてねだる子供に、サクラは思わずナルトと顔を見合わせる。
「一人・・・・じゃ無理よね」
「駄目!!絶対駄目!サクラちゃんは俺以外の男と風呂入っちゃ駄目なの!」
「うるさい」
自分の肩を掴んで熱く主張するナルトを、サクラは面倒くさそうに押し止める。
所詮、忍びの者は依頼主には逆らう権限はないのだ。
しかも子供が相手ならば、サクラに異存があるはずがなかった。

 

 

「サクラはどうした?」
しくしくと涙を流して項垂れるナルトに、廊下で拭き掃除をしていたサスケが声を掛ける。
「風呂に入ってる・・・」
「風呂?」
「あの子供と一緒に入って、ついでに汚れた服も中で洗ってくるって」
「・・・・・」
ナルトの返答を聞き、サスケは思わず黙り込んだ。
複雑な表情で考え込むサスケを見上げ、ナルトは首を傾げる。

「何だよ」
「この家に二人目の子供はいない」
「え?」
「家主から電話が掛かってきたから、聞いてみた。この家に子供は一人で、その子は今、一緒に車に乗っているということだ」
淡々と語るサスケにナルトは思考が付いていかず、ぽかんとした顔つきになった。
「・・・どういうこと?」
「あの子供、誰かに似ていたよな」

 

 

 

「もうお嫁に行けないーーーー!!!」
床に顔を伏せて号泣するサクラの隣りで、変化の術を解いたカカシは濡れた髪をタオルで拭いている。
「えへへー、じっくりたっぷりしっかり全部見ちゃったー」
追い討ちをかけるカカシの言葉に、サクラの泣き声のトーンはさらに上がった。
「どういうことだ」
サスケが怒りに震える声で問い掛けても、カカシは全く動じない。
ナルトは悲しむサクラに釣られて一緒に泣いている。

「担任がいないときにもさぼらないで任務を遂行しているか、子供に化けて抜き打ち調査。他の班でもちょくちょくやってるよ」
「・・・やりすぎじゃないのか」
おいおいと声をあげて泣くサクラを横目にサスケはさらに詰問する。
「えー、風呂からあがるまで変化を解かなかった自制心を褒めて欲しいのにな。どうなっていたか、分からないよ。それに、いずれは俺のものになる体なんだし、ちょっとくらい見てもねぇ」
笑顔で答えるカカシには全く反省の色が見られず、額を押さえたサスケは大きなため息をつく。

以後サクラ達の訴えが通り、カカシは行きすぎた調査の罪で火影に罰せられることになるのだが、それはまた別の話だった。


あとがき??
きっと見るだけでなく、いろいろ触っていると思います。無邪気さを装ってチューをしたり・・・・。羨ましい。
ちなみにお気に入りは、釣られて一緒に泣く可愛いナルトでした。


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