理由


夕食のための買い物をしているときに、カカシは雑踏の中で桃色の髪を見付けた。
思わず声をかけようとして躊躇ったのは、彼女が一人ではなかったからだ。
サクラは幾らか年上の少年と仲良く手を繋いで歩いていた。
ひどく親しげな様子で。
その瞬間に生じたもやもやとした感情はどう表現したらいいか分からない。
サクラはよほど会話に熱中しているのか、カカシに全く気付かず彼と二人でカフェに入っていった。

追いかけて名前を呼んだら、サクラはどんな反応をしただろうか。
家に帰ってからも、カカシはサクラのことを考え続けている。
何故こんなにも気になるか、その結論はすでに出ていた。
もし、自分に妹がいて、知らない男と楽しげに歩いていたら気になる。
娘がいたとしても、同じだ。
つまり、そういうことだろう。
妙に納得して頷くカカシだったが、理由を付けてまで悩む自分の内面にまでは頭が働いていなかった。

 

 

 

「先生、私の顔に何か付いている?」
「・・・別に」
不思議そうに訊ねるサクラに、カカシは気のない返事をする。
翌日の任務でサクラと顔を合わせたカカシだが、目撃した少年のことをなかなか訊けずにいた。
自然とサクラの方へ目がいってしまうのだが、疑問は喉で止まってしまう。
だが気まずい思いをしているのはカカシだけのようで、サクラは正午の休憩中もカカシの隣りで平然と座り込んでいた。
そして、弁当と共に鞄から出した林檎を一つ彼に差し出す。

「そうそう。これ、お裾分け。ナルト達には朝渡したから先生にも」
「どうしたの、これ」
「菜の国に留学している従兄が一時帰国のお土産に持ってきたの。私より3つ年上で、優秀なんだから」
笑いながら説明するサクラに、カカシはすかさず口を挟む。
「じゃあ、昨日一緒に歩いていたのは・・・・」
「先生、見ていたの?」
サクラが首を傾げると、カカシはわざとらしく咳き込んだ。

「声をかけてくれれば、紹介したのに」
「う、うん・・・・」
「大好きなお兄ちゃんなの」
はにかんだ笑顔を浮かべるサクラに少なからず衝撃を受けたカカシだったが、彼女の言葉には続きがあった。
「カカシ先生に少し感じが似ているから」

 

 

にこにこ顔のサクラが弁当の包みを開ける中、カカシは小さく呟きをもらす。
「・・・・似てる?俺があの従兄と」
「うん。笑った雰囲気とかそっくり。だから好き」
デザート用の入れ物を開けたサクラは、兎の形に剥いてある林檎を串に刺してカカシの方へと向けた。
促されるまま受け取ったカカシは、無意識のうちにそれを口に含む。
まだ頭が混乱していた。
分かったのは、あの従兄よりは自分の方がサクラに好かれているという点だろうか。

「・・・サクラ、紅が美味しいあんみつのお店教えてくれたんだけれど、今度一緒に行く?」
「うん!」
元気な声で即答したサクラに、カカシはようやく表情を和らげる。
いつも以上に輝いて見えるサクラの笑顔。
それはあんみつに対する期待のためか、それとも自分が初めて誘ったからなのか、またしても考えることが出来てしまったカカシだった。


あとがき??
カカサクと見せかけてサクカカ。
どうも、うちの駄文はカカシ先生が可愛くなる傾向があるので困ります。
むしろサクラ以上に乙女です。(^_^;)


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