チャレンジャー
サクラがカカシの家に引っ越して一ヶ月が経った。
結婚を前提とした付き合いをしている二人だが、互いをよく知るという意味で、事前に共同生活をしている。
一緒に過ごす時間は格段に増え、非常に幸せな毎日だと思っていた。
サクラだけは。
「先生、お帰りなさいーv」
扉を開けて入ってきたカカシは、出迎えたサクラの格好を一目見るなり、開いた口が塞がらなくなる。
どこかの飲み屋に間違えた入ったのかと思ったが、確かに表札は自分の家で、彼女はサクラだ。
「な、な、な、何それ!?」
「何って、バニーちゃんだけれど」
きょとんとした顔のサクラが首を傾げると、頭に付けた兎の耳も同時に傾く。
バニーガール姿のサクラは、カカシがそれまで見た中で一番肌を露出させていた。「いや、それは見れば分かるけれど、どうしたの?」
「いのが貸してくれたの。絶対、先生が喜ぶからって」
「・・・・へぇ」
必死に視線を逸らすカカシは、上擦った声を搾り出した。
自慢ではないが、カカシは今までどんなに強い敵と遭遇しても、ひるんだことはない。
だが、サクラのバニーガールは確実にそれ以上の破壊力を持っていた。
サクラの尻についた兎の尻尾がビョコピョコと動いている。
ぼんやりとその後ろ姿を眺めていたカカシは、振り向いて微笑んだサクラに頬を赤くした。「えへへ、今日のビーフシチューは自信作なのよ。私が食べさせてあげるからね」
「えっ」
皿をテーブルに置いて座ったサクラは、匙ですくったシチューに息を吹きかける。
湯気の立つシチューを冷ますと、すぐ傍らのカカシの口元へと持っていった。
「はい、あーん」
「・・・・」
促されるまま口に入れたカカシに、サクラはにっこりと笑いかける。
「美味しい?」
「・・・うん」本当は味など分からない。
何しろ、目の前にはもっと美味しそうな彼女がいるのだ。
しかも、この日はバニーガールの格好までしてカカシを挑発している。
微笑む彼女をそのまま押し倒したいと思ったことは数え切れない。
だが、自由な共同生活の中で、それだけは許されないことだった。
「サクラの両親がさ、結婚するまでは清い関係でいてくれって、言うからさぁ・・・」
「分かった、分かった。その話は何度も聞いた」
愚痴りだしたカカシに、たまたま居酒屋で居合わせたアスマは仕方なく相槌を打っている。
「しかし、何だってそんな約束したんだよ」
「・・・それがサクラとの同居の唯一の条件だったの。サクラと過ごせるなら、それでも良いと最初は思ったんだ」
言い終えると、カカシは一気に杯を傾ける。
その横で、アスマは指折りサクラの年齢を数えていた。「結婚するまでって、あと最低は3年か?」
「そう、そうだよ。それまで、一緒に寝るのも風呂に入るのも何もかも自由だけれど、最後の所は手を出すなって。ひどすぎる!」
「・・・はぁ」
「サクラはそんな約束知らないから、薄着のまま平気でくっついてくるし、タオル一枚を体に巻いてうろうろ歩いているし、俺の寝床にもぐり込んでくるし」
「・・・・それは辛いな」
「蛇の生殺しだよ!!!でも、サクラのいない生活なんて、もう考えられないし」
テーブルを強く叩いたカカシは、おいおいと泣き崩れる。
周りにいた客はじろじろとカカシ達を見ていたが、気にする余裕もなかった。
「ただい・・・」
「ま」の部分を言う前に、カカシは後退った。
扉を開けてまず最初に目に飛び込んできたもの。
ハートの形をそこかしこにあしらったエプロンを付けたサクラが立っている。
それだけなら、問題はない。
肝心なのは、サクラがそのエプロン一枚しか身につけていないという点だ。「そ、それもいのちゃんの入れ知恵?」
「うん。裸でエプロン、いのの恋人にも好評だったらしいよ。後ろは・・・」
「ギャーー!!いい、やらなくていいから!」
その場で一回転して見せようとしたサクラを、カカシは何とか押し止める。
勢いでカカシに抱きしめられたサクラは、満面の笑顔でカカシを見上げた。
「先生も嬉しい?」
「・・・うん」可愛いサクラがこれほど恨めしい存在だと思えたことはない。
掌からはサクラの柔らかな肌の感触が伝わり、彼女を抱き寄せたままカカシは空を見つめる。
この拷問のような日々にいつまで耐えられるか分からないが、3年は無理なことだけは確実だった。
あとがき??
先生、頑張れ!
いのちゃんは、カカシ先生には悪魔に見えていることでしょう。(笑)
サクラはカカシ先生が素っ気ないと気づいていて、もっとラブラブになれるようアドバイスをしてもらっている様子。(裏目に出ていますけれど)
いのちゃんの恋人って、誰でしょうね。
早見優ちゃんが、昔は恋人のためにバニーになったと言っていたので、サクラにもやってもらいました。
アホな話ですみません・・・・。今はこれが精一杯。(ルパン口調)