誕生日にプレゼント
「サクラちゃん、誕生日おめでとうー」
山の清掃任務が終わると、ナルトは軍手を外して、用意してあったプレゼントの袋をサクラに差し出した。
もちろん、サスケも同じ班の仲間として、プレゼントは持ってきている。
「有難う!」
にこにこ顔でそれらを受け取ったサクラは、ちらりとカカシの様子を窺った。
朝から見ていたが、彼はナルト達のように何か余分な荷物を持っている気配はない。「・・・・先生、まさかサクラちゃんの誕生日、忘れてたの?」
「まさかー。ちゃんと覚えていたさ」
ハハハッと笑ったカカシは、近くに来るようサクラを手招きする。
「今日はサクラに、特別に俺の素顔を見せてあげようと思って」
「嘘!!!」
7班の下忍達は揃って目を見開いた。
始終行動を共にしても、絶対に見ることが出来なかったマスクを取ったカカシの顔。
その謎のベールが、ようやく剥がれる時が来たのだ。「それじゃ、サクラだけこっちに来てね」
「ずるーい、ずるーい!」
ナルト達はいかにも不満げだったが、どうすることも出来ない。
後でサクラから情報を得ればいいわけだが、実際に目で見られる彼女が羨ましかった。
「ほ、本当にいいのね」
「うん」
手を引いて木陰に連れて行かれたサクラは、緊張の面持ちでカカシの顔を凝視する。
サクラに届くよう、中腰になったカカシのマスクを彼女はゆっくりと下げていった。
ナルトが予想したカカシの素顔は、出っ歯か、たらこ唇。
実際はそのどちらでもなかった。
口元は綺麗で、笑うと歯並びも良いことも分かる。
難しい表情になったサクラは、もしや彼は美形の部類に入るのではないかと初めて思い至った。「じゃあ、プレゼントあげるね」
「え・・・」
妙にカカシの写輪眼が間近にあると思ったときには、もう唇を奪われていた。
突然のことに呆然としたサクラは、ワンテンポ遅れてカカシの体を押しのける。
「な、な、な、何するのよーーー!!!」
「キス」
「そんなの分かってるわよ!!どういうつもりか聞いてるのよ」
「だから、プレゼントだって」
「・・・・・・」
全く悪びれていないカカシに、サクラは怒鳴る気力もなくなった。
大好きな人に捧げるため、大事に取っておいたファーストキス。
カカシは誕生日プレゼントだというが、サクラの方がプレゼントを贈ったような心境だ。「で、どう思った?」
「・・・・何が」
「素顔」
「・・・・・・格好良いわよ」
早々とマスクを元の位置に戻すカカシを横目に、サクラは思ったままを答える。
不意打ちのキスが癪に障って、自分の好みのタイプだということまでは言わなかった。
「どうだった!」
荷物を置いた場所に戻るなり、駆け寄ってきたナルトにサクラはぎょっとする。
「え、な、何が」
「何って・・・・先生の顔」
「ああ、そ、そのことね」
一瞬、キスについて訊かれたのかと思ったが、ナルトが知るはずがないのだ。
動揺を必死に押し隠しながら、サクラはナルトやその後ろにいるサスケに対して笑顔を取り繕った。
「前にナルトが言ったとおり、出っ歯でたらこ唇だったわよ」
「やっぱり!!」サクラの出鱈目を信じ込み、ナルトはしきりに頷いている。
どうして嘘を付いてしまったか、サクラにも分からない。
だが、もう暫くの間は、カカシの素顔を知っているのは自分だけが良いような気がした。
彼の顔を見た瞬間から芽生えた不思議な独占欲。
サクラがその感情の意味に気付くのは、ずっと後のことだった。
あとがき??
カカシ先生の本当のプレゼントは“恋心”だったとか、恥ずかしいことを言ってみたり・・・・。
サクラちゃん、誕生日おめでとうー!!(逃)